「閉店を決めたが、いつ動き出せばいいのか」。「解約を伝えてから、ゆっくり買い手を探せばいいのか」。
店舗の撤退を考え始めた方が、最初に迷うのがこの”タイミング”です。
結論から申し上げます。居抜き退去の成否は、解約予告期間から逆算し、解約通知を出す”前”に居抜きの買い手を見つけられるかで決まります。
順序を誤ると、買い手が見つからないまま明け渡し日が来て、原状回復(スケルトン返し)で数百万円を失います。
この記事では、解約予告期間の確認、動くべき順序、10〜12ヶ月前からの逆算スケジュール、造作譲渡料への影響、賃料の二重負担との損益分岐、従業員・届出のタイミングまで、ナイト・飲食のM&A仲介の視点で整理します。
結論:退去タイミングは「解約予告期間からの逆算」で決まる
退去のタイミングは、感覚ではなく賃貸借契約の解約予告期間から逆算して決めます。
事業用テナントの解約予告は、3〜6ヶ月が一般的です(契約によって異なります)。
この期間内に「買い手を見つける→譲渡契約→引き渡し」を終えられないと、原状回復をして明け渡すことになります。
つまり「いつ動くか」よりも、「解約予告期間から、いつまでに何を終えるかを逆算する」ことが肝心です。
まず賃貸借契約の「解約予告期間」を確認する
最初にやるべきは、賃貸借契約書で「解約予告期間」と「原状回復の取り決め」を確認することです。
解約予告期間と「予告賃料」
解約予告期間は事業用で3〜6ヶ月が多く、契約によっては1年の場合もあります。
注意したいのは、解約を申し出た日から予告期間分の賃料は支払う義務がある点です。たとえば予告期間が4ヶ月なら、申し出てから4ヶ月分の賃料が発生します(飲食店ドットコム)。
原状回復の範囲と「解約日≠退去日」
原状回復の範囲も契約で確認します。賃借人は、通常損耗・経年変化を除く損傷について原状回復義務を負います(民法第621条)。入居時は居抜きでも、退去時にスケルトン返しを求められる契約もあります。
なお、解約日(契約が終了する日)と退去日(実際に明け渡す日)は別物です。混同しないよう、契約書で両方を確認してください。
契約と譲渡の関係は賃貸借契約と店舗譲渡、貸主への手続きは貸主の承諾で解説しています。
【最重要】解約通知の「前」に居抜き買い手を見つける

最大の鉄則は、解約通知を出す前に居抜きの買い手を確保することです。順序を逆にすると、原状回復に転落します。
先に解約通知を出すと何が起きるか
よくある失敗が、先に解約通知を出してしまうケースです。予告期間内に買い手が見つからず、明け渡し日が来て、スケルトン工事で返却することになります。原状回復は坪10〜15万円が目安で、10坪でも100万円以上かかります。
順序を誤ったときの典型的な損失は、次の3つです。
- 買い手が見つからず、原状回復で100万円超の出費になる
- 退去日まで家賃だけを払い続ける(賃料の空払い)
- 貸主の承諾が取れず、居抜き譲渡そのものができない
正しい順序:買い手の目処→解約通知
正解は、買い手の目処をつけてから(または探しながら)解約通知を出すことです。買い手が決まれば、居抜き譲渡で原状回復を回避でき、造作譲渡料も受け取れます。なお、居抜き譲渡には貸主の承諾が必要です。買い手探しと並行して、早めに貸主へ相談しておきましょう。
【NightMA 専門家の視点】
撤退で一番もったいないのが「先に解約通知を出してしまう」順序ミスです。これをやると、買い手探しに使える時間が予告期間(3〜6ヶ月)に縛られ、足元を見られて0円譲渡か、最悪スケルトン返しになります。買い手の目処→解約通知、の順序だけは絶対に守ってください。
撤退スケジュールを逆算で組む(10〜12ヶ月前から)

余裕を持つなら、退去希望日の10〜12ヶ月前から動き始めます。ギリギリで動くほど選択肢が狭まります。
逆算の目安は次のとおりです。
- 12〜10ヶ月前:賃貸借契約の確認・撤退方針の決定・査定
- 9〜7ヶ月前:居抜き買い手探しを開始・貸主へ相談
- 6ヶ月前:買い手の目処を見ながら解約予告を提出
- 3〜2ヶ月前:譲渡契約・引き渡し準備(引き渡しの1〜2ヶ月前には買い手を確定させるのが目安)
- 退去月:引き渡し・所有権移転・各種届出
タイミングが造作譲渡料を左右する
動くのが遅いほど、造作譲渡料は下がります。時間は交渉力そのものです。
明け渡し日が近いほど、売り手は「早く手放したい」足元を見られ、造作譲渡料が0円化しやすくなります。
逆に、時間に余裕を持って動けば、強気の造作譲渡料を狙えます。造作譲渡の基礎は造作譲渡とは、相場の考え方は造作譲渡の相場、0円になる理由は造作の無償譲渡(0円譲渡)で詳しく解説しています。
賃料の二重負担 vs 早期譲渡の損益分岐

退去タイミングの判断軸は、「賃料を払い続けて高く売る」か「早く手放して賃料を止める」かの損益分岐です。
新店舗と旧店舗の賃料を二重に負担し続けると、造作譲渡料の上振れ分を食いつぶします。
早期に居抜き譲渡できれば、賃料の二重負担と原状回復費の両方を回避できます。
| 比較項目 | 居抜き売却(早期譲渡) | スケルトン返却 | nightmaの評価 |
|---|---|---|---|
| 原状回復費 | 不要(買い手へ引き継ぎ) | 坪10〜15万円が必要 | 居抜きが有利 |
| 賃料の二重負担 | 早く止められる | 工事期間中も発生 | 居抜きが有利 |
| 受け取る対価 | 造作譲渡料が入る | なし | 居抜きが有利 |
| 成立の前提 | 買い手を期間内に見つける | 買い手不要 | 早く動くほど居抜きが実現 |
従業員・リース・届出のタイミング
退去と並行して、従業員・リース・各種届出のタイミングも逆算します。ここを忘れると、退去直前に慌てます。
従業員:解雇は30日前に予告
従業員の解雇は、少なくとも30日以上前に予告するか、30日分以上の解雇予告手当を支払う必要があります(労働基準法第20条/厚生労働省)。
リース・廃業・税務の手続き
厨房機器や空調などのリースは、残債と解約条件を確認します。譲渡対象に含めるか、残債を誰が負担するかを早めに整理してください。
廃業・税務の手続きも必要です。風営法の許可営業や深夜酒類提供飲食店営業の手続きは廃業届の手続きで、事業全体の税金は事業譲渡の税金で解説しています。
ナイト業態の退去タイミング特有の注意
ナイト・飲食業態では、許認可の手続きと繁忙期を踏まえてタイミングを組みます。
風営法の許可営業は許可証の返納、深夜酒類提供飲食店営業は廃止の届出など、業態に応じた手続きが必要です。特に深夜酒類提供飲食店営業の廃止届は、廃止の日から10日以内に管轄の警察署へ提出します(警視庁の届出様式案内)。手続きの全体像は廃業届の手続きで解説しています。
また、年末などの繁忙期に売上が立つなら、その後の閑散期に退去を合わせる手もあります。
契約更新月の直前に解約予告を出せば、更新料を回避できる場合があります。これも契約書で確認してください。
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まとめ:退去は「逆算」と「順序」が9割
居抜き退去で損しないための要点を、最後に整理します。
第一に、解約予告期間から逆算し、解約通知を出す”前”に居抜きの買い手を見つけること。順序を誤ると原状回復で数百万円を失います。
第二に、退去希望日の10〜12ヶ月前から動くこと。タイミングが造作譲渡料・賃料の二重負担・原状回復のすべてを左右します。
第三に、出口は居抜き売却・スケルトン返却・M&Aを比較すること。設備や顧客に価値があるなら、営業権ごと売るM&Aの方が手取りが大きいこともあります。
NightMAの経営提言:
撤退は「決めてから動く」と必ず時間に追われ、足元を見られます。逆に、早めに逆算して動けば、原状回復を回避し、造作譲渡料も賃料の節約も取りにいけます。nightmaは、ナイトレジャー・飲食店のM&A、居抜き(造作譲渡)、Web支援までを一気通貫で支援しています。いつ動くべきか、居抜きで売るべきかM&Aで売るべきか――退去を決める前に、一度ご相談ください。
