居抜きの引き継ぎ・売却 完全ガイド|何を引き継げる?造作譲渡で終えるか営業権ごと売るかの判断基準【飲食店・バー対応/2026年最新】

「店を閉めるなら、居抜きで次の人に引き継いでもらえば損をしない」。そう聞いて調べ始めた方は多いはずです。

「でも、設備・常連・スタッフ・許可——何をどこまで引き継げるのかが分からない」。このように感じている方は少なくありません。

結論から申し上げます。居抜きの引き継ぎ・売却には、「設備だけを売る造作譲渡」と「事業ごと売る事業譲渡(M&A)」の2つのレベルがあります。

どちらを選ぶかで、引き継げる範囲も手元に残るお金も大きく変わります。黒字の店を造作譲渡だけで手放すのは、営業権をタダで捨てる行為です。

この記事では、引き継げるもの・引き継げないものの全体像、許認可の承継可否、手取りの違い、売却の流れまでを、ナイトレジャーM&A仲介のnightmaが解説します。

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居抜きの「引き継ぎ・売却」とは|2つのレベルを最初に区別する

居抜きの引き継ぎ2つのレベル レベル1造作譲渡は設備だけを売る 内装厨房什器が対象で短期小規模スピード重視 レベル2事業譲渡M&Aは事業ごと売る 設備に加え屋号顧客スタッフノウハウまで対象 黒字店なら手取りが伸びる

居抜きの引き継ぎと一口に言っても、売るものの範囲は1つではありません。まず言葉を整理し、「設備だけ売る」のか「事業ごと売る」のかの2段階を区別することが、すべての出発点です。

居抜き・造作譲渡・現状引渡しの違い

居抜きとは、内装や設備が残ったままの状態を指す言葉です。物件の状態を表すだけで、取引の中身までは決まっていません。

その内装・設備を次の借主へ売買する契約が造作譲渡です。居抜き取引の中核にあたります。

退去方法として原状回復と比較したい方は、スケルトン渡しと居抜き渡しの違いで詳しく解説しています。

「引き継ぎ」には2つのレベルがある

居抜きの引き継ぎには、売る範囲の異なる2つのレベルがあります。この区別が曖昧なまま動くと、売れるはずの価値を取りこぼします。

レベル売り方引き継ぐ範囲nightmaの評価
レベル1造作譲渡のみ内装・厨房・什器などの設備小規模・スピード重視向き
レベル2事業譲渡(M&A)設備+屋号・顧客・スタッフ・ノウハウ黒字店なら手取りが伸びる
世の中の「居抜き売却」記事の大半は、レベル1の造作譲渡だけを前提に書かれています。しかし、営業が回っている店なら、レベル2まで視野に入れるべきです。
目次

【結論】造作譲渡で終えるか、営業権ごと売るか——判断基準はこれだ

先に結論を示します。「設備にしか価値がない店は造作譲渡、営業に価値がある店は事業譲渡」。これが大原則です。自店がどちらかを、この章で判定してください。

造作譲渡だけでよいケース

設備と立地が価値の中心で、営業そのものに買い手が魅力を感じない店は、造作譲渡で素早く撤退するのが正解です。

該当するのは次のような状態です。赤字が続いている、オーナー1人に売上が依存している、スタッフの残留が見込めない、買い手が業態を変える前提——。

この場合は売却額の最大化より、原状回復費の回避と撤退スピードを優先すべきです。相場感は造作譲渡の相場で解説しています。

営業権ごと売却した方が高くまとまりやすいケース

営業利益が出ていて、常連やスタッフという「仕組み」が残る店は、事業譲渡(M&A)で営業権ごと売る方が手取りが伸びます。

買い手は「初日から売上が立つ店」に対価を払います。設備は同じでも、売上・顧客・人が付いてくるなら、その分が造作価値に上乗せされるからです。

5つの質問で判定する

自店がどちらの売り方に向くかは、次の5つの質問で判定できます。3つ以上「はい」なら、造作譲渡だけで手放すのはもったいない状態です。

  • 直近1年、営業利益が黒字で安定している
  • 常連・会員・指名客が売上の柱になっている
  • 売却後もスタッフ・キャストが残留する見込みがある
  • オーナーが現場にいなくても店が回る仕組みがある
  • 買い手が同業態のまま営業を続ける可能性が高い

【NightMA 専門家の視点】
実務の現場では、「閉店=造作譲渡」と思い込み、黒字の店を設備代だけで手放してしまう売主が後を絶ちません。営業利益が出ている店の価値は設備ではなく「儲かる仕組み」にあります。売り方の選択を誤ると、数百万円単位の取りこぼしが現実に起きます。

何を引き継げて、何を引き継げないのか【資産別マトリクス】

引き継ぎ・売却の不安の正体は、「何が移って、何が移らないのか分からない」ことです。資産別に、造作譲渡のみの場合と事業譲渡の場合を一覧で整理します。

この表が、売り方を選ぶ際の地図になります。「×」の項目を引き継ぎたいなら、売り方そのものを変える必要があります。

引き継ぐ対象造作譲渡のみ事業譲渡(M&A)nightmaの評価
内装・厨房・什器◎ 主対象◎ 含められる別紙リストで1点ずつ特定
賃貸借契約× 新規契約+貸主承諾× 同左自動承継しない・承諾が生命線
食品衛生の営業許可× 原則新規○ 全部譲渡なら承継届2023年改正の恩恵はM&A型のみ
風営法許可× 承継不可× 相続・合併・分割のみ最大の地雷・新規取得前提
深夜酒類提供の届出×× 新規届出が原則廃止届+新規届出で組む
従業員・キャスト× 対象外△ 個別同意で承継自動では移らない
顧客リスト・会員情報× 当然には渡せない○ 事業承継として移転可契約明記+管理整理が前提
屋号・SNS・Googleプロフィール×△ 契約で対象化+権限移管明記しないと宙に浮く
リース品・残債× 承継/買取/返却の3択△ リース会社の個別承諾残債は最大の紛争源

賃貸借契約は「どちらの売り方でも」自動では移らない

最初に押さえるべきは、賃貸借契約はどちらの売り方でも自動承継しないことです。借主の地位を勝手に移すことは、民法第612条が禁じる無断譲渡にあたります。

新しい借主は貸主と新規に賃貸借契約を結び直すのが原則です。承諾の取り方は貸主の承諾で詳しく解説しています。

従業員は「個別同意」がなければ移らない

事業譲渡でも、従業員は自動では引き継がれません。雇用契約の譲渡には労働者本人の承諾が必要です(民法第625条)。

つまり「店ごと売ったからスタッフも付いてくる」は誤解です。キーパーソンには事前に意向確認をし、残留条件を買い手と詰めることが、売却額を守る実務になります。

顧客リストは「事業承継」なら本人同意なしで移転できる

顧客・会員情報は、個人情報保護法上の整理が必要です。事業の承継に伴う個人データの提供は「第三者提供」に該当せず、本人同意なく移転できます(個人情報保護委員会FAQ)。

ただしこれは、適法な事業譲渡契約の一部として移す場合の話です。造作譲渡しかしていないのに顧客名簿だけ渡す行為は、この例外に乗りません。

屋号・SNSアカウント・Googleビジネスプロフィールも同様です。法律上当然に移るものではなく、契約書での対象化と、管理メールアドレス・権限の移管をセットで設計する必要があります。

許認可は引き継げるか——2026年実務の最重要論点

同じ店の許可でも運命は真逆2026年実務 食品衛生法の営業許可は承継できる 2023年12月13日から制度化 事業の全部譲渡が条件 地位承継届と譲渡契約書の写し 風営法の許可は承継できない 事業譲渡でも移らない 承継は相続合併分割のみ 買い手は新規取得2〜3ヶ月

許認可は、引き継ぎ・売却の成否を分ける最重要論点です。そして2026年現在、「食品衛生法は承継できるようになったが、風営法はできない」という非対称な状態にあります。ここを誤解すると営業不能の爆弾を抱えます。

食品衛生法の営業許可は「事業譲渡なら承継できる」ようになった

2023年12月13日から、食品衛生法の営業許可・届出は、事業譲渡によって譲受人へ地位承継できるようになりました(厚生労働省の通知)。

買い手は新規の許可申請をやり直す必要がなく、「地位承継届」と譲渡契約書等の写しの提出で営業者を変更できます(東京都保健医療局)。

ただし、条件は厳格です。対象は「営業の全部」を譲渡する場合に限られ、一部だけの譲渡は対象外です。

施設の同一性が失われるような大幅な改装・営業内容の変更がある場合も、新規扱いになります。承継届で済む前提を崩さないため、譲渡前に管轄保健所へ事前相談を入れてください。

ここで重要なのは、この恩恵を受けられるのは「事業譲渡」だけという点です。設備だけの造作譲渡では、買い手は従来どおり新規の許可申請が必要です。

風営法許可は「事業譲渡でも」引き継げない

一方、風俗営業の許可は事業譲渡では承継できません。承継が認められるのは、相続・法人の合併・法人の分割という法定の類型だけです(警察庁の解釈運用基準)。

つまり、キャバクラ・スナック・ラウンジなどの接待飲食店を事業譲渡で買っても、買い手は風営法許可を新規に取り直す必要があります。

深夜酒類提供飲食店営業の届出も、営業者ごとの届出です。実務上は、売り手の廃止届と買い手の新規届出を前提にスケジュールを組むのが安全です。

許可が引き継げない理由と例外の詳細は、風営法の許可は引き継げないで解説しています。

同じ店の「許可」でも運命が真逆——スケジュールに落とし込む

整理すると、1つの店に紐づく許認可でも運命が分かれます。飲食店営業の許可は事業譲渡で承継でき、風営法許可は承継できない。ナイト業態は、この両方が絡みます。

買い手側の新規許可取得には、書類準備から数えて2〜3ヶ月かかるのが実務感覚です。引き渡し日と許可取得日が噛み合わないと、「店はあるのに営業できない」空白期間が生まれます。

【提言】
売り手は、買い手の許可取得期間まで含めて引き渡しスケジュールを設計してください。「設備を渡せば終わり」ではなく、「買い手が営業を始められる日」から逆算する。これが揉めない引き継ぎの鉄則です。

手取りはいくら変わる?——募集額・成約額・手取り額の3層で見る

「居抜きで売るといくらになるのか」。この問いに答えるには、募集額・成約額・手取り額の3層を区別する必要があります。ネット上の相場の多くは募集額であり、手取りとは別物です。

造作譲渡の相場は「募集額」で読む

民間ポータルの公開データでは、造作譲渡の募集額相場は渋谷区で412.80万円、新宿区で523.71万円です(2026年・飲食店ドットコムの募集データ)。

ただし、これは売主の希望を反映した募集額です。成約額は交渉で下がるのが通常で、実務では希望額の5〜9割程度に収れんするケースが大半です。

手取り額はさらに、リース残債の精算・仲介手数料・税金を差し引いた残りです。税務の扱いは造作譲渡の仕訳・減価償却で解説しています。

営業権込みの売却は「どこに」値段がつくのか

事業譲渡で上乗せされる営業権(のれん)の価格に、公的な標準倍率は存在しません。「月商の◯ヶ月分」といった断定的な相場論は、根拠を確認すべきです。

実務で価格を決めるのは、次の要素です。営業利益の水準と安定性、常連・会員の厚み、スタッフの残留可能性、オーナー不在でも回る再現性、そして許認可の取得しやすさ。

中小企業のM&A実務の標準的な進め方は、中小企業庁の中小M&Aガイドラインが公的な基準です。査定・仲介契約・手数料の妥当性も、このガイドラインに照らして確認できます。

期間の違い——造作譲渡は短期、事業譲渡は中期

造作譲渡は、論点が設備と貸主承諾に集約されるため、短期で決まりやすい取引です。

事業譲渡は、従業員の個別同意・顧客情報の整理・デューデリジェンス(資産査定)・許認可の手続きが加わるため、中期化します。手取りが伸びる分、時間がかかる。この交換条件を理解して選んでください。

時間との関係では、もう1つ重要な原則があります。解約予告期間に追われるほど交渉力は落ち、価格は下がります。退去タイミングの逆算を先に押さえてください。

引き継ぎ・売却の流れ——売却前に確認する3点セット

居抜きの引き継ぎ売却6ステップ 査定と売り方の選択 貸主への事前打診は金銭授受より先に承諾を停止条件に 買い手募集内覧対応 基本合意デューデリジェンス 契約締結 許認可手続き引き渡し精算 解約予告に追われる前に退去希望日の10〜12ヶ月前から

進め方の全体像を示します。先に「売れる状態か」を確認し、それから買い手を探す。この順序を守るだけで、トラブルの大半は予防できます。

動き出す前に確認する3点セット

買い手探しより先に、自店の契約と権利関係を確認します。ここに地雷があると、話がまとまった後に破談します。

  • 賃貸借契約書——造作譲渡や転貸の禁止条項、解約予告期間(3〜6ヶ月が多い)を確認した
  • 許認可の現状——許可証・届出の名義と内容が実態と一致しているか確認した
  • 設備の所有権——リース品・貸主所有の設備を洗い出し、残債を把握した
リース品が含まれる場合の処理はリース残債の引き継ぎ・買取・一括精算で解説しています。

買い手募集から引き渡しまでの6ステップ

実際の進行は、次の6ステップです。どの売り方でも、貸主の承諾を金銭授受より先に固めることが共通の鉄則です。

  1. 査定と売り方の選択(造作譲渡か事業譲渡か)
  2. 貸主への事前打診(承諾を停止条件にする)
  3. 買い手募集・内覧対応
  4. 基本合意・デューデリジェンス
  5. 契約締結(造作譲渡契約書または事業譲渡契約書)
  6. 許認可手続き・引き渡し・精算
契約書・付帯設備表・引渡確認書などの書類設計を誤ると揉めます。典型的な紛争パターンは居抜き・造作譲渡のトラブル事例と対策で12例に整理しています。

ナイトレジャー業態の引き継ぎ・売却——一般飲食店と違う3つの地雷

バー・スナック・キャバクラなどのナイト業態は、一般の飲食店より引き継ぎの論点が多くなります。2026年現在、特に踏んではいけない地雷が3つあります。

地雷①:風営法許可は引き継げない前提で組む

繰り返しになりますが、風営法許可は売買では移りません。買い手の新規取得期間を見込まない引き渡しスケジュールは、それ自体が欠陥です。

用途地域や保全対象施設との距離制限によっては、同じ場所でも新規許可が下りないことすらあります。買い手側の確認ポイントは居抜き物件の選び方で解説しています。

地雷②:「名義はそのまま、経営だけ交代」は名義貸し

許可の取り直しを面倒がり、売り手名義のまま買い手に経営させる——。この「実質引き継ぎ」は風営法が禁じる名義貸しです。

名義貸しは許可取消と罰則の対象であり、2025年改正以降は摘発の重点項目です。発覚すれば売り手・買い手の双方が傷を負い、店の事業価値もゼロになります。絶対に踏んではならない地雷です。

地雷③:買い手のデューデリジェンスで見られるポイントを知らない

事業譲渡で高く売るつもりなら、買い手が何を調べるかを先回りして整えるべきです。ナイト業態のDDで必ず見られるのは次の点です。

  • 警察対応・行政指導の履歴がクリーンか
  • 帳簿の売上と申告内容が一致しているか
  • キャスト・スタッフの労務(雇用か業務委託か)が整理されているか
  • 反社チェックに耐えられる取引関係か
  • 売上が特定のオーナー・キャスト個人に依存しすぎていないか

【NightMA 専門家の視点】
ナイト業態の売却で価格を壊す最大の要因は、設備の古さではなく「説明できない数字」です。現金商売ゆえに帳簿と実態がズレている店は、どれだけ繁盛していても買い手は値段をつけられません。売却の半年前から数字を整えるだけで、評価は目に見えて変わります。

買い手が見つからないとき・赤字店の出口

「募集しても買い手が付かない」。その場合も、打てる手は残っています。選択肢を撤退コストの小さい順に検討するのが定石です。

出口の選択肢は5つ

買い手不在のときの選択肢は、実務上次の5つに収れんします。上から順に検討し、期限(解約予告日)から逆算して切り替えます。

選択肢内容nightmaの評価
条件を見直して再募集価格・引き渡し時期・対象範囲を再設計まず試すべき一手
価格引き下げ募集額を相場・残期間に合わせ修正時間との交換
0円譲渡原状回復費の回避を優先損ではない撤退戦
業者買取スピード優先・価格は仲介より低下傾向期限切迫時の保険
原状回復して解約造作価値は消滅最後の手段
0円でも原状回復費(坪あたり数十万円)を回避できるなら、経済的には勝ちです。判断基準は造作の無償譲渡(0円譲渡)で解説しています。

赤字店でも売れるケースはある

赤字=無価値ではありません。買い手が買うのは過去の損益ではなく、立地・設備・許可が取れる構造という「器」だからです。

繁華街の1階、防音・換気が許可基準を満たす構造、厨房設備が揃った物件は、赤字でも買い手が付きます。諦めて解体する前に、一度査定に出すべきです。

まとめ:引き継ぎ・売却は「売り方の選択」で手取りが変わる

最後に、この記事の要点を整理します。

第一に、居抜きの引き継ぎには「造作譲渡(設備だけ)」と「事業譲渡(営業ごと)」の2レベルがあり、黒字店を造作譲渡だけで手放すのは営業権の捨て損です。

第二に、引き継げる範囲は売り方で決まります。食品衛生法の許可は事業譲渡なら承継届で移せる一方、風営法許可はどの売り方でも移りません。従業員は個別同意、顧客リストは事業承継の例外整理が必要です。

第三に、相場は募集額・成約額・手取り額の3層で読み、解約予告に追われる前に動くことが、手取りを最大化する唯一の方法です。

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NightMAの経営提言:
居抜きの引き継ぎ・売却は、「閉店処理」ではなく「最後の経営判断」です。造作譲渡で素早く撤退すべき店もあれば、営業権ごと売って数百万円を上積みすべき店もある。その分岐を見極めずに動けば、積み上げてきた価値を置き去りにします。nightmaは、ナイトレジャー・飲食店のM&A、居抜き(造作譲渡)、Web支援までを一気通貫で扱い、あなたの店に最適な出口を設計します。売り方を決める前に、一度ご相談ください。

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