造作の無償譲渡(0円譲渡)とは|0円になる理由・売り手と買い手の損得・「0円でも税金がかかる」仕組みまで【飲食店・バー対応/2026年最新】

「造作を0円で譲るなんて、丸損ではないか」。あるいは「0円で出ている居抜き物件、何か裏があるのではないか」。

このように、”0円・無償の造作譲渡“は、売り手と買い手の双方が不安を抱えるテーマです。

結論から申し上げます。0円譲渡は、売り手にとっては原状回復費を回避できる合理的な選択になり得ます。買い手にとっても、”裏”さえ見抜ければ初期投資を大きく圧縮できる手段です。

ただし、見落とされがちな落とし穴が2つあります。「0円でも税金がかかるケースがある」という点と、「0円でも契約書は必須」という点です。

この記事では、造作が0円になる理由、売り手・買い手それぞれの損得、そして国税庁の一次情報に基づく”0円譲渡の税務”までを、ナイトレジャー・飲食店のM&A仲介の視点で整理します。

店舗の売却・買収・居抜き、風営法の手続きまで。ナイトビジネス専門のnightmaが無料でご相談に乗ります。LINEで相談
目次

造作の「無償譲渡(0円譲渡)」とは何か

造作の無償譲渡とは、内装・厨房設備などの造作一式を、譲渡料0円で次の借主に引き渡す取引のことです。

通常、居抜きの引き渡しには「造作譲渡料」という対価がつきます。相場の考え方は造作譲渡の相場で解説しています。

その対価がゼロになるのが「0円譲渡・無償譲渡」です。前の借主が造作を残したまま、お金のやり取りなしで引き渡します。

注意したいのが「残置物件」との違いです。厨房機器が撤去された残置物件を「居抜き」と誤って表記する例があります(飲食店ドットコム)。

つまり「0円居抜き」と書かれていても、中身が空に近いこともあります。だからこそ、0円の”中身”を見極めることが出発点になります。

造作譲渡が「0円・無償」になる7つの理由

造作が0円無償になる7つの理由 原状回復費スケルトンの回避 家賃滞納による残置 立地営業権が弱い 仲介会社が造作譲渡契約に不慣れ 残置物件を居抜きと誤表記 大家の居抜き不信感 別名目礼金企画料で費用回収

0円になるのは”価値がない”からだけではありません。売り手の合理的な判断や、物件側の事情が絡んで0円になるケースが多くあります。

主な理由は、居抜き仲介の現場で語られる次の7つです(店サポの整理を基に再構成)。

  1. 原状回復費(スケルトン工事)の回避:解体して更地に戻す費用を浮かせるため、0円でも次の借主に渡したい
  2. 家賃滞納による残置:敷金を使い果たし、工事もできずに造作が残されたまま引き渡される
  3. 立地・営業権が弱い:飲食店としての立地が弱く、権利金としての上乗せ価値がつかない
  4. 仲介会社が造作譲渡契約に不慣れ:取引を複雑にしたくない事情から0円で処理してしまう
  5. 残置物件の「居抜き」誤表記:問い合わせを増やすため、設備の薄い物件を居抜きと表記している
  6. 大家の居抜き不信感:造作譲渡を認めると別の権利が発生すると懸念し、0円を条件に許可する
  7. 別名目での費用回収:礼金・敷金償却・企画料など、造作譲渡料以外の形で費用を分散回収している
理由によって、0円が”お得”なのか”地雷”なのかは大きく変わります。ここを混同すると判断を誤ります。

【NightMA 専門家の視点】
0円の理由が「①原状回復費の回避」なら、設備が使える優良物件である可能性が高い。一方で「⑦別名目での回収」なら、トータルコストは0円ではありません。”なぜ0円なのか”を売主・仲介に必ず確認してください。

【売り手】0円で譲っても損とは限らない──原状回復費の回避

売り手が0円で譲っても損とは限らない最大の理由は、スケルトン工事(原状回復)費の回避にあります。

スケルトン工事費の回避

原状回復は坪10万円程度が目安です。10坪なら約100万円の解体費がかかります(内装工事の費用感は内装工事の相場を参照)。

0円で次の借主に渡せば、この解体費が丸ごと浮きます。つまり「0円譲渡=実質プラス」になり得るわけです。

さらに、早期に次のテナントが決まれば、退去までの家賃の二重負担も避けられます。スピードもメリットです。

ただし「0円」と「原状回復費を払ってスケルトン返却」のどちらが得かは、設備の状態と募集スピードで変わります。判断軸を下の表に整理します。

比較項目0円・無償譲渡スケルトン返却nightmaの評価
原状回復費不要(0円で回避)坪10万円目安が必要0円譲渡が有利
明け渡しスピード次の借主が決まれば早い工事期間が必要0円譲渡が有利
受け取る現金なしなし(むしろ支出)差はつきにくい
設備が優良な場合本来は譲渡料を取れる取れない安易な0円は機会損失
損益分岐の詳しい計算は造作譲渡の相場で扱っています。設備が使えるなら、0円ではなく適正な譲渡料を狙う選択もあります。

【買い手】0円・無償物件に潜む”裏”の見抜き方

0円無償物件に潜む裏 5つの落とし穴 リース残債厨房空調の所有権 原状回復義務を自分が負う契約 設備の老朽故障リスク 立地の弱さ前店の閉店理由 インフラ容量電気ガス水道

買い手にとって0円は得に見えますが、コストやリスクを買い手が肩代わりする構造になっていることがあります。

「タダより高いものはない」を避けるため、契約前に次のポイントを必ず確認してください。

  • リース残債(厨房機器・空調)が残っていないか。所有権は誰にあるか
  • 退去時の原状回復義務を、自分が全額負う契約になっていないか
  • 設備の年式・故障リスク。すぐ買い替えになる古さではないか
  • 前店の閉店理由と立地の弱さ。なぜ0円なのかの本当の理由
  • 電気・ガス・水道・空調のインフラ容量が自分の業態に足りるか
特に怖いのが「リース残債」と「原状回復義務の承継」です。0円で得たつもりが、後で数十万〜数百万円を負担する展開になりかねません。

買い手側の総合的なチェックは居抜き物件の選び方で10項目にまとめています。

【提言】
0円物件は良いものほど早く決まります。だからこそ”即決”を迫られがちですが、リース契約書と原状回復条項だけは現物で確認してから判断してください。ここを飛ばすと、0円が一番高くつきます。

【最重要】0円・無償でも税金はかかる──みなし譲渡・みなし贈与・受贈益

0円でも税金はかかる 誰に何税 個人から法人はみなし譲渡所得税と受贈益 個人から個人は原則なしとみなし贈与 法人から個人法人は時価で擬制し寄附金と受贈益贈与

ここが、ほとんどの一般記事が触れていない最重要ポイントです。「0円だから税金もゼロ」というのは誤解です。

大前提として、課税の有無は”時価”で決まります。設備が老朽・立地が弱く時価がほぼゼロなら、課税もほぼ生じません。

問題は「時価があるのに0円で動かした」場合です。この差額に対して、売り手・買い手の双方に課税され得ます。

そもそも事業用の造作(内装・厨房・器具備品など)の譲渡は、原則として総合課税の譲渡所得として扱われます(国税庁 No.3105)。

国税庁の一次情報に基づく取り扱いを、下の表に整理します。

誰から誰へ売り手にかかる税買い手にかかる税根拠
個人 → 法人みなし譲渡所得税(時価で計算)受贈益として法人税みなし譲渡
個人 → 個人原則なし(実額0円)みなし贈与で贈与税みなし贈与
法人 → 個人・法人時価で譲渡したとみなし、差額は寄附金等受贈益・贈与法人税の擬制

個人→法人/個人→個人の課税

個人が法人へ0円譲渡した場合、売り手側は時価の2分の1未満の譲渡だと、時価で売ったものとみなして譲渡所得が計算されます(国税庁 No.3217・所得税法第59条)。0円でも時価分の所得税がかかり得ます。 個人が個人から0円で譲り受けた場合、買い手側に「みなし贈与」が生じます。時価と支払った対価(0円)との差額が、贈与で取得したものとみなされ贈与税の対象です(国税庁 No.4423・相続税法第7条)。

なお、この「著しく低い価額」の判定は、上記みなし譲渡の「2分の1未満」という基準とは別物です。混同しないでください。

法人の譲渡・消費税・登録免許税

法人が無償・低額で譲渡した場合は、税務上は時価で譲渡したものとして扱われ、時価相当が益金に算入されます。相手への経済的利益の供与部分は、原則として寄附金とされます。

ただし、退去・明け渡しのための造作の無償譲渡など、事業上の経済合理性が認められる場合は、寄附金課税ではなく帳簿価額相当を譲渡損として処理できるという実務上の見解もあります。判断は個別性が高いため、税理士に確認してください。

消費税にも注意が必要です。第三者間の純粋な無償譲渡は、対価がないため原則として課税対象外です。ただし法人が役員などへ無償・低額(時価のおおむね50%未満)で譲渡した場合は、時価を課税標準として消費税が課税されます(国税庁 No.6321)。

一方、造作は建物そのものの所有権移転ではないため、不動産取得税や登録免許税は原則としてかからないと考えられます。

ただし、税務は当事者の関係(個人か法人か、同族か第三者か)や時価評価で結論が大きく変わります。実行前に必ず税理士へ確認してください。事業全体の税務は事業譲渡の税金も参考になります。

【NightMA 専門家の視点】
「0円だから申告不要」と思い込み、後から追徴を受けるのが最悪のパターンです。特に「個人オーナーが自分の法人へ0円で造作を移す」「親族・知人間で0円譲渡する」ケースは、みなし課税の典型です。タダでも税務署は時価で見ます。

0円・無償でも「造作無償譲渡契約書」は必須

0円でも契約書は必ず作成してください。むしろ”タダ”だからこそ、範囲と責任を書面で固める必要があります。

口約束で引き渡すと、後から「これは譲渡対象だった/対象外だった」という争いが起きます。0円でもトラブルは起きるのです。

契約書に最低限入れるべきは、次の項目です。

  • 譲渡する造作の範囲(別紙リストで特定する)
  • リース品・第三者所有物の扱いと残債の負担者
  • 退去時の原状回復義務を誰が負うか
  • 契約不適合責任(故障・不具合)をどう扱うか
契約書の作り方は造作譲渡契約書で詳説しています。あわせて貸主の承諾賃貸借契約と店舗譲渡の確認も欠かせません。

ナイト業態の0円譲渡で特に注意すべき点

ナイト・飲食業態では、0円であっても「許可」と「設備の資産価値」が論点になります。

最重要なのが許可です。風営法の許可や深夜酒類提供飲食店営業の届出は、0円で造作を譲り受けても引き継げません。新規取得・新規届出が前提です。詳しくは風営法の許可は引き継げないで解説しています。

もう一点が設備の資産価値です。音響・照明・カラオケ・防音・ボトル棚などは、ナイト業態では価値が残りやすい資産です。

これらが使える状態なら、本来は0円ではもったいないケースもあります。売り手は安易に0円にする前に、譲渡料を取れないか検討すべきです。

まずはお気軽に

店舗のお悩み、nightmaに無料相談

ナイトビジネス専門のM&A仲介・居抜き・造作譲渡・Web集客支援。風営法の許可や手続きは、提携の行政書士と連携してサポートします。LINEの友だち追加でお気軽にどうぞ。

LINEで無料相談する →

※ しつこい営業はありません

まとめ:0円譲渡で損しないために

造作の0円・無償譲渡は、使い方次第で売り手にも買い手にも合理的な選択になります。最後に要点を整理します。

第一に、0円の理由を見極めること。原状回復費の回避なら優良、別名目での回収やリース残債付替えなら要警戒です。

第二に、税務を甘く見ないこと。時価のある造作を0円で動かすと、みなし譲渡・みなし贈与・受贈益が生じ得ます。必ず税理士に相談してください。

第三に、0円でも契約書を必ず作ること。範囲・リース・原状回復・契約不適合責任を書面で固めます。

そして出口戦略として、「0円譲渡」だけでなく「M&Aで営業権ごと売る」選択肢も比較してください。設備や顧客に価値があるなら、0円より高い手取りになることがあります(居抜き売却店舗売却の4つの方法)。

NightMAの経営提言:
0円譲渡は「損切り」にも「お宝仕入れ」にもなります。分かれ目は、理由・税務・契約の3点を詰めたかどうかです。nightmaは、ナイトレジャー・飲食店のM&A、居抜き(造作譲渡)、Web支援までを一気通貫で支援しています。0円にすべきか、譲渡料を取るべきか、M&Aで売るべきか――迷ったら、判断する前に一度ご相談ください。

目次