飲食店の廃業手続き完全ガイド|保健所・税務署への届出と期限、廃業より高く終わる出口【2026年最新】

飲食店の廃業 届出の期限は1ヶ月以内ではない 保健所への廃業届は10日以内 税務署の廃業届は確定申告期限まで 事業譲渡なら営業許可を承継

店を畳むと決めたとき、最初に迷うのが「どこに、いつまでに、何を出すのか」です。届出先は保健所・税務署・場合によっては警察や消防にまたがり、期限もばらばらです。

そして、多くのオーナーが手続きを調べる段階で見落とすことがあります。廃業すると営業許可は消えますが、事業譲渡なら許可ごと引き継げるという点です。

この記事では、飲食店の廃業に必要な届出を条文と一次情報で整理したうえで、廃業と売却で手元に残る額がどう変わるかまでを解説します。

目次

結論:期限は届出先ごとに違う。そして廃業する前に「売る」選択肢がある

先に全体像を置きます。よく見かける「廃業届は1ヶ月以内」という説明は、届出の種類を取り違えています。

届出先書類期限根拠
保健所廃業届+営業許可証の返納自治体の定め(港区は営業終了から10日以内食品衛生法
税務署個人事業の開業・廃業等届出書その年分の確定申告期限まで所得税法229条
税務署給与支払事務所等の廃止届出書1か月以内所得税法230条
税務署青色申告の取りやめ届出書廃業なら提出不要(自動失効)所得税法151条2項
警察署深夜酒類提供飲食店営業の廃止届など営業形態により必要風営法
1か月以内と定められているのは給与支払事務所等の廃止届出書だけです。混同されやすいので、届出ごとに確認してください。
飲食店の廃業 届出先と期限 保健所は10日以内 税務署の廃業届は確定申告期限まで 給与支払事務所の廃止届のみ1か月以内 青色申告は廃業なら提出不要

もう一つ、手続きの前に考えてほしいことがあります。廃業は「お金が出ていく終わり方」だという点です。

原状回復にかかる費用は、当社の相場データで坪あたり5〜15万円が目安です。10坪の店なら50〜150万円の持ち出しになります。

これに対し、居抜きで造作を譲れば、飲食店の造作譲渡料は100〜300万円が目安です。同じ「店を終える」でも、収支が逆転します。詳しい算定根拠は造作譲渡の相場で解説しています。

「うちの店、いくらで終われる?」を匿名で。飲食店・ナイト店舗に強いnightmaが無料で査定します(秘密厳守・着手金なし)。LINEで無料査定

「飲食店は3年で7割潰れる」は本当か|一次統計で確かめる

廃業を調べ始めると、必ずこの手の数字に出会います。判断の前に、どこまでが一次統計で確認できるのかを整理します。

公的統計で確認できる廃業率

中小企業庁の2025年版中小企業白書は、厚生労働省「雇用保険事業年報」をもとに開業率と廃業率を示しています。

指標数値対象
2023年度の廃業率3.9%全業種(雇用保険事業年報ベース)
2023年度の開業率3.9%同上
2024年の倒産件数10,006件全業種
2025年版中小企業白書 第1-1-59図・第1-1-60図より。廃業率は2022年度から上昇しています。

業種別の「飲食店の廃業率」は白書本文には無い

白書の本文が示しているのは全業種の率です。業種別の開廃業率は付属統計表(11表)に格納されていて、本文に「飲食店は何パーセント」という記述はありません。

つまり「飲食店の廃業率は◯%」として流通している数字の多くは、白書本文をそのまま引いたものではありません。

「1年で3割、3年で7割」の出所

この通説は民間調査に由来し、調査主体・対象・定義がまちまちです。一次統計で同じ数字を確認することはできませんでした。

数字そのものを否定はしませんが、意思決定の根拠にするには弱いというのが実務の感覚です。他店の平均より、自店の数字を見るほうが確実です。

倒産と廃業は別物

もう一つ、混同されやすい区別があります。倒産は法的整理で、資産と負債が裁判所の手続きに乗ります。

廃業は自主的な撤退で、その中には居抜きで造作を譲る・事業ごと売るという終わり方も含まれます。同じ「店をやめる」でも、手元に残る額はまったく違います。

廃業率の高さを理由に諦めるのではなく、自店がいくらで終われるかを先に把握してください。その差は次の章以降で具体的に示します。

保健所への廃業届|食品衛生法

飲食店を営むには、保健所の営業許可または届出が必要です。やめるときも、同じ窓口に終わりを伝えます。

何を・いつまでに・どこへ

提出先は営業所を所管する保健所です。東京都港区の案内では、提出物は営業許可証・営業届(廃業)・営業許可の3点、期限は営業を終了してから10日以内とされています。

ただし期限や様式は自治体ごとに違います。所轄の保健所のサイトで様式を確認するか、窓口に電話で聞くのが確実です。

許可営業と届出営業で提出物が違う

飲食店営業のように許可が要る業種は、廃業届に加えて営業許可証を返納します。許可証は保健所が交付した書面なので、手元に残しません。

一方、食品衛生法第57条にもとづく届出営業(許可が不要な業種)は、廃業届のみを提出します。港区の案内も「営業届出施設は、廃業届のみ提出してください」としています。

出さないとどうなるか

保健所の台帳には営業中として残り続けます。更新時期の案内が届いたり、実態調査の対象になったりします。

また、営業許可が残っている状態は、次のテナントや買い手にとって混乱のもとです。売却を検討するなら、なおさら整理しておく必要があります。

税務署への届出|「1ヶ月以内」は正確ではない

ここが最も誤解の多いところです。届出の種類ごとに、法律が定める期限が違います。

個人事業の開業・廃業等届出書は確定申告期限まで

所得税法第229条は、事業を廃止した場合の届出書について「その事実があつた日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに」提出すると定めています。

国税庁の手続案内も同じで、提出時期は「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」です。2026年9月時点の記載を確認しています。

「廃業から1ヶ月以内」と書かれた解説を見かけますが、これは次に説明する別の届出と混ざったものです。とはいえ早く出して困ることはないので、他の手続きとまとめて出すのが実務的です。

青色申告は廃業なら翌年分から自動で失効する

所得税法第151条第2項は、青色申告の承認を受けている人が業務の全部を譲渡または廃止した場合、その翌年分以後の所得税について承認は効力を失うと定めています。

つまり廃業すれば、届出を出さなくても自動的に失効します。取りやめ届出書は、事業は続けるが青色申告だけをやめるときの手続きです。

解説記事の中には「廃業したら取りやめ届出書も必要」と書くものがありますが、条文の建て付けは上記のとおりです。判断に迷う場合は所轄税務署か税理士に確認してください。

1か月以内なのは給与支払事務所の廃止届だけ

従業員やアルバイトに給与を払っていた店は、給与支払事務所等の廃止届出書を出します。

所得税法第230条は、給与等の支払事務を取り扱う事務所を廃止した者について「その事実があつた日から一月以内に」届け出ると定めています。ここだけが1か月以内です。

廃業した年の確定申告

廃業した年も確定申告は必要です。事業所得の計算に加えて、設備や造作を売った場合の損益が出ます。

個人事業主が造作を譲渡したときは総合課税の譲渡所得になります。会計処理は造作譲渡の仕訳・勘定科目で詳しく整理しています。

そのほかに必要な届出

店の形態によって、追加の手続きが発生します。

届出先必要になるケース内容
警察署深夜0時以降に酒類を提供していた深夜酒類提供飲食店営業の廃止届
警察署接待をしていた(1号営業など)許可証の返納
消防署防火管理者を選任していた防火管理者の解任届
年金事務所・労基署従業員を雇用していた社会保険・労働保険の廃止手続き
都道府県税事務所個人事業税の課税対象だった事業廃止の申告
風営法まわりの廃業手続きは、許可営業と届出営業で扱いが変わります。詳細は風営法の廃業手続きの記事で解説しています。

接待や深夜営業をしていた店の手続きは、風営法の廃業手続きで条文と様式まで整理しています。

廃業する前に|飲食店営業許可は事業譲渡なら承継できる

廃業すると飲食店営業許可は消滅し原状回復で坪5〜15万円の支出 事業譲渡なら食品衛生法56条1項で許可の地位を承継でき造作譲渡料100〜300万円が入る

ここが、この記事でいちばん伝えたい点です。

廃業は許可を消す。譲渡は許可を渡す

廃業届を出して許可証を返納すれば、その許可は消滅します。次にその場所で店をやる人は、新規で取り直すことになります。

一方、食品衛生法第56条第1項は、許可営業者が営業を譲渡したときは、譲り受けた者が許可営業者の地位を承継すると定めています。相続・合併・分割でも同じです。

つまり事業譲渡というかたちを取れば、営業許可は引き継げます。買い手にとっては「許可の取り直しが不要」という価値になり、その分が価格に乗ります。

承継したら遅滞なく届け出る

同条第2項は、地位を承継した者は遅滞なく、その事実を証する書面を添えて都道府県知事に届け出ると定めています。譲渡契約書などが証明書類になります。

手続きとしては「廃業届+新規許可」ではなく「承継の届出」です。空白期間が生まれないため、買い手は営業を止めずに引き継げます。

風営法とは扱いが逆

ナイト業態を扱っていると、この違いが際立ちます。風営法の許可は営業者に紐づくため、事業譲渡でも原則として承継できません。

飲食店営業許可は承継できる。風営法許可は承継できない。同じ店でも、どの許可で営業していたかで出口の設計が変わります。この線引きは居抜きの引き継ぎ・売却で詳しく整理しています。

そもそも畳むべきかを迷っている段階なら、先に飲食店の撤退基準を確認してください。飲食店(法人)のFL比率は平均67.1%・営業利益率は0.34%で、赤字の月数だけでは判断できません。

借入が残ったまま畳む場合は、届出の前に飲食店の借金と廃業を確認してください。法人が破産しても、経営者保証ガイドラインで個人の破産を回避できる可能性があります。

まずはお気軽に

店舗のお悩み、nightmaに無料相談

廃業する前に、いくらで終われるかを匿名で。
飲食店・ナイト店舗のM&A・居抜き・造作譲渡。
許認可の承継は提携の行政書士と連携します。

LINEで無料相談する →

※ しつこい営業はありません

廃業と売却、手元に残る額はどれだけ違うか

廃業にかかる費用

廃業は費用が出ていく終わり方です。主な内訳は次のとおりです。

項目目安備考
原状回復工事坪5〜15万円10坪なら50〜150万円。スケルトン戻しの範囲で変動
解約予告期間の賃料3〜6か月分事業用は予告期間が長い。契約書で要確認
リース残債契約による厨房・空調は中途解約不可が原則
廃棄・撤去費実費什器・在庫の処分
原状回復の坪単価は当社の相場データによる目安です。物件の構造・設備の量で上下します。

売却なら収支が逆転する

10坪の飲食店 廃業なら原状回復などで50〜150万円の支出 居抜きで造作を譲れば100〜300万円の収入 収支が逆転する比較図

居抜きで造作を譲れば、原状回復が不要になるうえに譲渡代金が入ります。飲食店の造作譲渡料は100〜300万円が目安です。

営業許可・顧客・スタッフごと渡す事業譲渡なら、さらに上のレンジになります。何を渡せるかで価格帯が変わるので、まず自店に何が付くかを把握するのが先です。

どちらを選ぶかの判定

自店の状況向いている出口理由
設備が新しく、立地に需要がある居抜き(造作譲渡)原状回復を回避でき、譲渡代金も入る
黒字で常連・スタッフが残っている事業譲渡(M&A)営業許可・顧客・屋号ごと渡せて価格が最も高い
解約予告まで時間があるまず買い手を探す先に解約通知を出すと選択肢が消える
設備が老朽化し、立地の需要も薄い廃業買い手が付かない場合は撤退コストの最小化を狙う
判断の分かれ目は「解約通知を出す前かどうか」です。通知後は時間がなくなり、買い手を探す余地が狭まります。

順序を誤ると選択肢が消えます。解約予告から逆算した進め方は退去タイミングの逆算で解説しています。

出口の全体像を比べたい場合は店舗売却の4択比較居抜き売却の完全ガイドもあわせてご覧ください。

よくある質問

飲食店の廃業届は、いつまでに出せばいいですか?

届出先ごとに期限が違います。保健所への廃業届は自治体の定めによりますが、東京都港区では営業を終了してから10日以内とされています。

税務署に出す「個人事業の開業・廃業等届出書」は、国税庁の手続案内では事業の廃止があった日の属する年分の確定申告期限までです。

給与を支払う事務所を廃止したときの「給与支払事務所等の廃止届出書」だけは、所得税法第230条により事実があった日から1か月以内と定められています。

「廃業届は1ヶ月以内」と書かれた記事を見ましたが、正しいですか?

2026年9月時点の国税庁の手続案内では、個人事業の開業・廃業等届出書の提出時期は「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」です。1か月以内と定められているのは給与支払事務所等の廃止届出書のほうです。ただし早く出して不利になることはないため、他の手続きとまとめて速やかに提出するのが実務的です。

廃業したら、青色申告の取りやめ届出書も必要ですか?

所得税法第151条第2項は、青色申告の承認を受けている人が業務の全部を譲渡または廃止した場合、その翌年分以後の所得税について承認は効力を失うと定めています。つまり廃業すれば自動的に失効します。取りやめ届出書は「事業は続けるが青色申告をやめる」場合の手続きです。判断に迷う場合は所轄税務署か税理士に確認してください。

廃業すると、飲食店営業許可はどうなりますか?

廃業すれば許可は消滅します。次に使う人は新規で取り直すことになります。一方、食品衛生法第56条第1項は、許可営業者が営業を譲渡したときは譲り受けた者が許可営業者の地位を承継すると定めています。つまり事業譲渡なら許可を引き継げます。承継した側は同条第2項により、遅滞なくその事実を証する書面を添えて届け出ます。

廃業と売却では、手元に残る金額はどれくらい違いますか?

廃業では原状回復費が出ていきます。当社の相場データでは坪あたり5〜15万円が目安で、10坪なら50〜150万円の持ち出しです。居抜きで造作譲渡できれば、飲食店の造作譲渡料は100〜300万円が目安なので、収支が逆転します。営業許可・顧客・スタッフごと渡す事業譲渡なら、さらに上のレンジになります。まず自店にいくら付くかを把握してから決めるのが順序です。

まとめ:手続きの前に、いくらで終われるかを確かめる

飲食店の廃業手続きの要点を整理します。

第一に、期限は届出先ごとに違います。保健所は自治体の定め、税務署の廃業届は確定申告期限まで、1か月以内なのは給与支払事務所の廃止届だけです。

第二に、青色申告は廃業すれば翌年分から自動的に失効します。取りやめ届出書は別の場面の手続きです。

第三に、飲食店営業許可は事業譲渡なら承継できます。廃業して許可を消すか、譲渡して許可ごと渡すかで、買い手にとっての価値が変わります。

第四に、廃業は原状回復で持ち出しになり、居抜き・事業譲渡なら代金が入ります。同じ「終わり」でも手元に残る額が逆になります。

NightMAの経営提言:
廃業の手続きを調べ始めた時点では、まだ間に合います。解約通知を出す前なら、居抜きでも事業譲渡でも選べるからです。

逆に、通知を出して退去日が確定してからでは、買い手を探す時間がありません。

nightmaは飲食店・ナイト店舗のM&A、居抜き(造作譲渡)、Web支援までを一気通貫で扱い、許認可は提携の行政書士と連携します。まず「いくらで終われるか」を知ってから、手続きに進んでください。

M&A・売却
店を高く・静かに売却する

無料で査定

居抜き・造作
造作を活かしてスピード譲渡する

無料で相談

Web支援
集客できるHP・SNSで店の価値を高める

無料で相談

本記事は2026年9月時点の法令・公表情報にもとづく一般的な整理です。保健所への届出期限や様式は自治体で異なります。税務の取扱いは個別事情で変わるため、実際の手続きは所轄の保健所・税務署、または税理士・行政書士にご確認ください。

目次