造作譲渡契約書とは?必須条項13・雛形の落とし穴・貸主承諾・原状回復まで実務解説【バー・キャバクラ・飲食店対応/2026年最新】

「店を閉めるが、内装と設備は次の人に譲りたい。契約書は何を書けばいい?」

「ネットで拾った雛形(ひながた)をそのまま使って、後で揉めないだろうか」

このように、造作(ぞうさく)譲渡契約書の作り方に不安を抱える店舗オーナーは少なくありません。

結論から申し上げます。造作譲渡契約書は「条項の書き分け」でトラブルの大半を未然に防げる書類であり、雛形の丸写しが最大の地雷です。

この記事では、必須条項13項目と条項別の落とし穴、貸主承諾・原状回復・契約不適合責任の処理、税務、そしてバー・キャバクラ等ナイト業態特有の注意点までを、条文と国税庁の一次情報をもとに実務目線で解説します。

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目次

造作譲渡契約書とは?──「賃貸借契約」「造作買取請求権」との違い

造作譲渡と造作買取請求権の違い 造作譲渡は旧借主から新借主への内装設備の売買で私法上の契約 造作買取請求権は借地借家法第33条で借主が貸主に時価で買取請求できる法定権利だが特約で排除可能で飲食店の什器は対象外 まったくの別物

造作譲渡契約書とは、店舗の内装・設備・什器(じゅうき)といった造作物を、退去するオーナーから次に入る借主へ売買・引き継ぐための契約書です。ここで9割の人が混同する2つの別概念を、最初に切り分けます。

造作譲渡は「旧借主⇄新借主」の私法上の契約

造作譲渡は、退去する旧借主と新しく入る借主の間で、内装・設備の所有権を有償で移転する売買に近い契約です。

物件オーナー(貸主)との賃貸借契約とは当事者も目的も異なる、まったく別の契約だと理解してください。

そのため、後述する貸主の承諾を別途取らなければ、契約自体は当事者間で有効でも、実際の居抜き入居が成立しないという事態が起きます。

「造作買取請求権(借地借家法第33条)」とは別物──ここを9割が混同する

検索で頻出する「造作買取請求権」は、造作譲渡とはまったくの別物です。ここを混同すると交渉の前提を誤ります。

造作買取請求権とは、賃貸人(貸主)の同意を得て付加した造作について、賃貸借終了時に賃借人が貸主へ時価での買取りを請求できる、借地借家法第33条の法定権利です。

つまり相手は「貸主」であり、「次の借主」へ設備を売る造作譲渡とは、相手も法的根拠もまったく異なります。

さらに実務上の落とし穴が3つあります。第一に、造作買取請求権は特約で排除できる任意規定であり、第37条の強行規定にも含まれません。

第二に、事業用賃貸借では「賃借人は造作買取請求権を行使しない」と排除する特約が一般的に置かれています。

第三に、飲食店のテーブル・椅子・什器のように容易に移動でき、撤去しても建物の利用価値を著しく損なわないものは、そもそも「造作」に当たりにくいと整理されます。

【NightMA 専門家の視点】
「造作買取請求権があるから貸主に買い取ってもらえる」と期待して交渉に臨むオーナーは多い。だが事業用物件では排除特約が標準装備されており、ナイト店の什器類は造作該当性も低い。この権利を頼った出口設計は、ほぼ機能しないと考えるのが2026年の実務です。

なぜ造作譲渡契約書が必要か──口頭・テンプレ流用が招く地雷

造作譲渡契約書が必要な理由は単純です。「何を・誰の所有物として・どんな状態で渡したか」を書面で固定しないと、引渡し後に必ず争いの火種が残るからです。

口頭やテンプレの流用で済ませると、典型的に3つの地雷を踏みます。

撤去費の押し付け合い、引渡し後の設備故障の責任、そしてリース品を「もらえる」と誤解したままの承継トラブルです。

これらはいずれも、契約書の条項設計で事前に掃海できます。逆に言えば、雛形を条項の意味を理解せずに使うことが、最大の事故原因です。

造作譲渡契約書の必須条項13【条項別の落とし穴】

造作譲渡契約書の必須条項13 譲渡造作物リスト別紙目録 譲渡価格 支払条件 引渡し所有権移転時期 現状有姿 契約不適合責任 原状回復義務の引継ぎ 貸主承諾 リース第三者所有物 解除条件 表明保証 残置物処理 秘密保持管轄

ここからが本記事の核心です。造作譲渡契約書に最低限備えるべき13条項を、条項ごとの「落とし穴」とあわせて整理します。条項名を並べるだけの雛形では防げない論点に踏み込みます。

まず全体像を表で押さえてください。重要なのは、各条項が「どのトラブルを防ぐためにあるか」を理解して書くことです。

必須条項主な落とし穴NightMAの評価
①譲渡造作物リスト(別紙目録)「設備一式」で済ませ範囲が曖昧最重要。型番・台数・状態まで明記
②譲渡価格内訳・消費税の扱いが不明確課税/非課税の区分を明記
③支払条件・方法支払時期と引渡しの前後関係が未定同時履行を原則に
④引渡し・所有権移転時期移転時期が曖昧で危険負担が宙に浮く引渡日=移転日で固定
⑤現状有姿(げんじょうゆうし)「一切免責」と誤解目録・告知とセットで限定
⑥契約不適合責任旧法の「瑕疵担保」のまま改正民法の用語・通知期間で限定
⑦原状回復義務の引継ぎ当事者間合意のみで貸主に対抗不可二層構造で記載(後述)
⑧貸主承諾口頭確認で書面化なし停止条件化が安全
⑨リース・第三者所有物売主所有でない物を譲渡対象に混入対象外と明示+表明保証
⑩解除条件・違約支払遅延時の対応が空白期限の利益喪失等を規定
⑪表明保証権利の所在を売主が保証せず第三者権利の不存在を保証
⑫残置物処理譲渡対象外物の撤去責任が不明撤去義務者と費用を明記
⑬秘密保持・管轄顧客情報の扱い・紛争解決地が空白業態の機微情報に配慮

譲渡対象リスト(別紙目録)の作り方

13条項のうち、最も事故を防ぐのが譲渡対象リストです。造作譲渡は個別物の売買に近く、紛争の起点は常に「何を渡したか」の曖昧さにあります。

別紙目録には、品名・メーカー/型番・台数・設置場所・動作確認日現在の稼働状況・所有権の帰属・リース/レンタル/割賦の有無・付属品・配線/接続の有無まで記載してください。

特にカラオケ通信機器、音響、照明制御、POS、決済端末は、本体・配線・リモコン・操作端末の有無まで書かないと、引渡し後に「本体だけ」「配線なし」と揉めます。

「現状有姿」と「契約不適合責任」の線引き

2020年施行の改正民法以降は、「瑕疵(かし)担保責任」ではなく「契約不適合責任」で書くのが鉄則です。

ここで「現状有姿で引き渡す」とだけ書いて一切免責にすると、そもそも契約内容が曖昧なまま残り、何が不適合かが後から争点化します。民法第562条以降(e-Gov)の建て付けを踏まえる必要があります。

実務では、譲渡対象・状態・既知の不具合を別紙と告知で先に特定し、そのうえで責任の範囲・通知期間・救済方法を限定して書く形が、紛争予防に最も効きます。

原状回復義務はどこまで承継されるか

原状回復義務は、造作譲渡契約だけで当然に新借主へ移るわけではありません。ここが一般的なテンプレ記事が説明しきれない論点です。

ポイントは、「売主・買主間の内部負担」と「貸主に対する外部的義務」を二層に分けて書くことです。

当事者間だけの合意では貸主に対抗できない場面があるため、貸主承諾書または三者合意と整合させて、誰が・どの範囲を・退去時に費用負担するかを明記します。詳細は賃貸借契約と店舗譲渡の実務で深掘りしています。

貸主承諾・管理会社対応

居抜きでの造作譲渡は、貸主の承諾が事実上の生命線です。承諾が下りなければ、当事者間の契約が整っていても入居自体が成立しません。

承諾は口頭ではなく、別紙同意書または三者間確認書で残してください。賃貸借の承継有無・原状回復義務の帰属・残置造作の容認範囲・引渡日を明記し、現地確認写真と設備一覧を添付すると強固になります。

承諾が下りる条件と通し方は造作譲渡で貸主承諾は必要?で具体的に解説しています。

リース品・レンタル・割賦・第三者所有物

リース・レンタル・割賦中の物件は、売主の所有物ではありません。これを譲渡対象に混ぜると、承継したつもりが未承継のまま、という事故が起きます。

所有権が売主にないものは原則として譲渡対象から外し、承継には各契約相手方の承諾が別途必要と明記してください。

ナイト店で混入しやすいのは、通信カラオケ機器、決済端末、ウォーターサーバー、マット・おしぼりの役務契約付き備品です。

雛形を使うときのチェックポイント(紙 vs 電子契約)

雛形そのものが悪いわけではありません。問題は、自店の事情に合わせて条項を調整せずに使うことです。最低限、以下を自分の案件で確認してください。

  • 別紙目録に型番・台数・動作状況・所有権・配線有無まで書いたか
  • 現状有姿と契約不適合責任を、通知期間付きで限定したか
  • 原状回復義務を「内部負担」と「対貸主」の二層で書いたか
  • 貸主承諾を書面(別紙同意書・三者間)で取得する設計か
  • リース・第三者所有物を対象外と明示し、表明保証を入れたか
  • 支払遅延・貸主未承諾の場合の解除/停止条件を定めたか
電子契約で締結する場合は、電子署名・タイムスタンプ・締結ログを残せるサービスを選んでください。電子署名法の要件を満たす電子文書は真正成立が推定されると、デジタル庁(電子署名)が示しています。

別紙目録・現地写真・貸主承諾書を同一案件で保全できる運用にすると、証拠保全の面でも実務に強くなります。

【ナイト業態別】バー・スナック・キャバクラ・コンカフェの造作譲渡

ナイト業態の造作譲渡は、一般飲食店より難度が上がります。演出設備と通信機器の比重が高く、譲渡対象の特定精度がそのまま事故率を左右するからです。

問題になりやすいのは、音響、照明制御、モニター、カラオケ通信機器、ボトル棚、装飾ミラー、ソファ造作、DJ・映像設備、POS・予約端末です。

これらは「建物附加物なのか単なる什器か」「売主所有かリース・役務契約付きか」が混在しやすく、別紙での一覧化が欠かせません。

一方で、顧客情報・在庫酒類・屋号・SNSアカウント・従業員の引継ぎは、造作譲渡の範囲外になり得ます。これらを渡したいなら、居抜き売却や事業譲渡など、別のスキーム設計が必要です。

業態別の売却実務は、バー売却キャバクラ売却スナック売却コンカフェ売却の各記事で個別に解説しています。

造作譲渡契約と「風営法許可」の関係──ここが最大の誤解

ナイト店オーナーが最も誤解するのが、ここです。結論から言えば、造作譲渡契約で風営法の許可は引き継げません。

造作譲渡は、あくまで内装・設備という財産的対象を移転する私法上の契約です。風営法(ふうえいほう)の許可名義や営業主体の同一性を承継するものではありません。

つまり「内装は買ったが、自分名義の許可は別途取り直し」という構図になります。営業継続の可否は、風営法・用途地域・賃貸借条件・保健所等の確認が別途必要です。

許可をどう引き継ぐか、取り直しが要るのかは、風営法許可の承継・引き継ぎで詳しく整理しています。

【提言】
造作譲渡の交渉に入る前に、まず「この物件・この業態で、自分名義の風営法許可が下りるか」を確認してください。許可が下りない場所の造作を買っても、営業できなければ資産価値はゼロに近い。内装より先に許可、が鉄則です。

税務・会計処理(売り手/買い手)

造作譲渡は税務でも論点が分かれます。売り手と買い手で課税関係が異なるため、双方の視点で整理します。個別の税額は事情で変わるため、最終判断は税理士確認を前提にしてください。

売り手の課税

売り手は、個人か法人かで税目が変わります。個人は譲渡資産や事業との関係に応じて譲渡所得・事業所得を検討し、法人は法人税等の対象です。

加えて、課税事業者が事業として造作・什器・設備を譲渡する場合、消費税の課税対象になり得ます。個人が事業用建物等を譲渡した場合も課税対象になると、国税庁 No.3240が示しています。

造作・什器・設備の譲渡は原則課税、土地は非課税という区分も押さえてください(国税庁 No.6145)。

買い手の中古資産・減価償却

買い手が取得した造作・設備が中古資産に当たる場合、使用可能期間の見積りが困難なら、簡便法で耐用年数を算定できます。

簡便法は、法定耐用年数を全部経過した資産なら20%、一部経過なら「法定耐用年数−経過年数+経過年数×20%」です(国税庁 No.5404)。

取得価額が少額の資産は一括償却や少額減価償却資産の特例も選択肢になります。事業譲渡スキーム全体の税務は事業譲渡の税金で解説しています。

造作譲渡・店舗売却・事業譲渡・単純撤退の4択比較

店舗の出口4択比較 造作譲渡は内装設備のみで風営法許可は取り直し税務は軽く小規模スピード重視向け 居抜き売却は内装と立地 事業譲渡M&Aは事業一式で高値法人向け 単純撤退は何も渡さず原状回復費が発生

造作譲渡は出口の一手段に過ぎません。自店にとって最適かは、他の3つと比較して初めて判断できます。何を渡せて、何が渡せないかで選ぶのが起点です。

出口の選択肢渡せる対象風営法許可税務の重さ向いているケース
造作譲渡内装・設備のみ引継ぎ不可(取り直し)比較的軽い小規模・スピード重視
居抜き売却内装・設備+立地別途手続き内装を活かし早期売却
事業譲渡・M&A事業一式(顧客・スタッフ等)スキーム次第で承継検討重い高値売却・法人
単純撤退何も渡さない消滅原状回復費が発生譲渡先が見つからない
NightMAでは、この4択を「規模・急ぎ度・法人か個人か」で振り分けて提案します。造作譲渡が最適な店もあれば、居抜きやM&Aで手取りが大きく変わる店もあります。判断軸は店舗売却の4択比較で詳述しています。

よくあるトラブル5類型と回避策

造作譲渡の紛争は、ほぼ5類型に集約されます。逆に言えば、この5つを条項で潰せば事故率は大きく下がります。

トラブル類型典型的な発生原因回避に効く条項
残置物撤去費の押し付け譲渡対象外物の撤去責任が空白撤去義務者・費用負担を明記
引渡し後の設備故障状態確認と責任範囲が曖昧現地確認記録+通知期間付き契約不適合責任
リース未承継第三者所有物を対象に混入対象外明示+相手方承諾を停止条件
貸主未承諾口頭確認のみで書面なし貸主承諾取得を停止条件/解除条件
支払遅延支払と引渡しの前後が未定同時履行・期限の利益喪失・手付解除

個人間契約のリスクと、専門家・M&A仲介が入る価値

ここまで読めば分かるとおり、造作譲渡契約は「雛形に名前を入れれば終わり」ではありません。当事者だけで進めると、貸主・リース会社・税務という三方向の論点が抜け落ちます。

特にナイト業態は、演出設備の特定、風営法許可との切り分け、顧客資産の扱いが複雑に絡みます。個人間の直接契約で進めると、引渡し後に「言った・言わない」が残りやすいのが現実です。

NightMAは、ナイトレジャー業界専門のM&A仲介・居抜き・造作譲渡の3つを一気通貫で扱っています。

「設備だけ早く譲りたい(造作譲渡)」「内装ごと立地を活かして売りたい(居抜き)」「顧客・スタッフごと高く売りたい(M&A)」のどれが最適かを、店舗の状況から逆算して設計します。

NightMAの経営提言:
造作譲渡契約書は、コストではなく「保険」だ。別紙目録・貸主承諾・契約不適合責任の3点を固めるだけで、引渡し後の紛争リスクの大半は掃海できる。雛形の丸写しで数十万円の撤去費や故障対応を背負うくらいなら、最初に正しい契約書へ投資する。それが2026年の店舗オーナーの鉄則です。

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まとめ

造作譲渡契約書は、内装・設備を次の借主へ引き継ぐための、私法上の売買契約書です。

ポイントは、①別紙目録での譲渡対象の特定、②現状有姿と契約不適合責任の線引き、③原状回復義務の二層管理、④貸主承諾の書面化、⑤リース・第三者所有物の除外、の5点に集約されます。

そして、造作買取請求権との混同を避け、風営法許可は別途という前提を外さないこと。これがナイト店の出口設計の土台です。

造作譲渡が最適か、居抜きやM&Aの方が手取りが増えるかは、店舗ごとに異なります。NightMAは造作譲渡・居抜き・M&Aの3手法を扱う立場から、匿名のまま無料でご相談に乗ります。出口に迷ったら、契約書を作る前にまずご相談ください。

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