「造作譲渡のお金は、どの勘定科目で、何年で償却すればいいのか」。「売った側・買った側で、仕訳はどう違うのか」。
店舗を居抜きで売買すると、必ず出てくるのがこの会計処理の疑問です。
結論から申し上げます。造作譲渡の会計処理は、売り手は「固定資産の売却」、買い手は「資産の種類ごとに計上して減価償却」が基本です。
買い手は造作譲渡料を建物附属設備・器具備品・機械装置などに振り分け、中古資産として耐用年数を見積もります。
この記事では、売り手・買い手の仕訳、勘定科目の振り分け、減価償却と耐用年数、消費税の経理、個人事業主と法人の違いまで、国税庁の一次情報をもとに、ナイト・飲食店のM&A仲介の視点で解説します。
結論:売り手は「固定資産の売却」、買い手は「資産計上→減価償却」

造作譲渡の会計処理は、立場で大きく分かれます。
売り手は、譲渡する造作の帳簿価額(簿価)を落とし、受け取った対価との差額を固定資産売却損益として処理します。
買い手は、支払った造作譲渡料を資産の種類ごとに計上し、それぞれの耐用年数で減価償却していきます。
なお、造作譲渡は消費税の課税取引です。土地のような非課税資産とは異なり、内装・設備の譲渡には消費税がかかります。
会計処理は当事者の状況(個人か法人か、税込か税抜か)で変わります。実際の処理は税理士に確認してください。基礎は造作譲渡とはで解説しています。
【売り手】造作譲渡の仕訳と勘定科目
売り手側は、造作譲渡を「保有していた固定資産を売却した」ものとして処理します。
簿価を落とし、差額を売却損益にする
まず、譲渡する造作の帳簿価額(取得価額から減価償却累計額を引いた残額)を帳簿から落とします。
そのうえで、受け取った対価と簿価との差額を、固定資産売却益または固定資産売却損として計上します。
対価が簿価を上回れば売却益、下回れば売却損です。0円・無償譲渡や簿価より安い譲渡の税務上の注意は造作の無償譲渡(0円譲渡)を参照してください。
仕訳例(売却益・売却損)
たとえば簿価100万円の造作を、消費税込み220万円(本体200万円・消費税20万円)で売却した場合の仕訳は次のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 220万円 | 建物附属設備(簿価) | 100万円 |
| 固定資産売却益 | 100万円 | ||
| 仮受消費税 | 20万円 |
個人事業主は「譲渡所得」になる
個人事業主が事業用の造作を譲渡した場合、その利益は原則として総合課税の譲渡所得に区分されます。
事業所得とは別枠で計算される点に注意してください。事業全体の税金は事業譲渡の税金で解説しています。
【買い手】造作譲渡の仕訳と勘定科目

買い手側は、支払った造作譲渡料を「資産の取得」として処理します。一括で経費にはできません。
資産の種類ごとに計上する
造作譲渡料は、中身を資産の種類ごとに分けて計上するのが原則です。
内装工事部分は「建物附属設備」、厨房機器や什器は「器具備品」、製造設備などは「機械装置」といった勘定科目に振り分けます。
種類ごとに耐用年数が異なるため、この振り分けが減価償却の前提になります。
明細が不明なときは一括で建物附属設備
譲渡契約で内訳が分からない場合は、実務上、一括して「建物附属設備」として計上することがあります。
ただし、可能な限り契約書や見積書で内訳を明確にしておく方が、適正な減価償却につながります。契約書の作り方は造作譲渡契約書を参照してください。
仕訳例
造作譲渡料を消費税込み330万円(本体300万円・消費税30万円)で取得し、建物附属設備として計上する場合の仕訳は次のようになります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 建物附属設備 | 300万円 | 現金預金 | 330万円 |
| 仮払消費税 | 30万円 |
敷金・保証金・営業権が含まれるとき
居抜きでは、造作のほかに敷金・保証金や営業権(のれん)が対価に含まれることがあります。
敷金・保証金は「差入保証金」などの資産として計上し、消費税は非課税です。対価が引き継ぐ資産の価値の合計を上回る部分は、営業権(のれん)として計上することがあります(税務上は原則5年で均等償却)。実際の配分は税理士に確認してください。
造作の減価償却と耐用年数

買い手が計上した造作は、資産の種類ごとの耐用年数で減価償却します。ここが造作譲渡の会計で最も間違えやすい部分です。
他人の建物に対する造作の耐用年数
賃借した建物に施した造作は、自分の建物への資本的支出とは異なり、独立した資産として扱います。
造作の種類・用途・材質などを総合的に考慮し、合理的に見積もった耐用年数で償却します(国税庁 No.5406)。
なお、賃借期間の定めがあり、更新ができず、かつ買取請求もできない場合は、その賃借期間を耐用年数として償却できます。
中古資産を取得したときの簡便法
造作譲渡で引き継ぐ設備は中古資産にあたるため、法定耐用年数ではなく、見積もった耐用年数で償却できます。
簡便法では、法定耐用年数の全部を経過した資産は「法定耐用年数×20%」、一部を経過した資産は「(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×20%」で計算します(国税庁 No.5404)。
1年未満の端数は切り捨て、2年未満になる場合は2年とします。減価償却の基本は減価償却のあらまし(国税庁 No.2100)を参照してください。
少額資産の特例(10万・20万・30万円)
取得価額が小さい資産は、減価償却せずに早期に費用化できる特例があります。
10万円未満は全額をその年の費用に、20万円未満は一括償却資産として3年均等償却にできます。
さらに、青色申告の中小企業者等は、30万円未満の資産を取得時に全額損金算入できます(年間合計300万円まで・国税庁 No.5408)。
消費税の経理処理
造作譲渡は消費税の課税取引です。経理方式によって金額の扱いが変わります。
造作譲渡は課税取引
内装・厨房機器などの事業用資産を売買する行為は「資産の譲渡」にあたり、消費税が課税されます(国税庁 No.6145)。
売り手は受け取った消費税を仮受消費税、買い手は支払った消費税を仮払消費税として処理します。
税込経理と税抜経理で判定が変わる
資産の取得価額に消費税を含めるかどうかは、採用している経理方式で決まります。
税込経理なら消費税を含んだ金額で、税抜経理なら含まない金額で、少額資産の判定(10万・30万円など)を行います。この差で特例の使えるラインが変わる点に注意してください。
個人事業主と法人で違う点
造作譲渡の会計処理は、個人事業主と法人で枠組みが異なります。
個人事業主
個人事業主が造作を譲渡した利益は、原則として総合課税の譲渡所得です。事業所得とは別に計算します。
買い手側として取得した造作は、事業所得の計算上、減価償却費として必要経費に算入します。
法人
法人は、売却益・売却損を益金・損金として法人所得に算入します。
取得した造作は資産計上し、減価償却費を損金として処理します。少額資産の特例(No.5408)は、青色申告の中小企業者等の法人が使えます。
ナイト業態の造作の会計処理
ナイト・飲食業態では、造作に音響・照明・カラオケ・防音・カウンターなど特有の設備が含まれます。
これらも資産の種類ごとに振り分けます。音響・照明・カラオケ機器は「器具備品」、内装や防音工事は「建物附属設備」が一般的です。
これらは中古資産として簡便法で耐用年数を見積もれます。設備の価値評価は造作譲渡の相場、買い手側の物件チェックは居抜き物件の選び方も参考になります。
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まとめ:仕訳は「売却」と「資産計上」、迷ったら税理士へ
造作譲渡の会計処理の要点を、最後に整理します。
第一に、売り手は固定資産の売却として簿価を落とし、差額を売却損益にします。個人事業主は総合課税の譲渡所得です。
第二に、買い手は造作譲渡料を資産の種類別に計上し、中古資産の簡便法で耐用年数を見積もって減価償却します。少額資産の特例も活用できます。
第三に、造作譲渡は消費税の課税取引で、税込・税抜の経理方式で判定が変わります。
会計処理は当事者の状況で結論が変わるため、実際の仕訳は必ず税理士に確認してください。
さらに、出口の選び方は居抜き売却・店舗売却の4つの方法、退去のタイミングは居抜き退去のタイミングで解説しています。NightMAの経営提言:
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