「店を売りたいが、誰に声をかければいいのか分からない」「買い取り業者に見せたら、二束三文の値段しか付かなかった」「営業許可は次の人に引き継げるのか」。
① 従業員や取引先に知られずに売りたい ② 買い叩かれたくない ③ そもそも自分の店に値段が付くのか——飲食店の売却を考え始めた方は、この3つで足が止まります。
ですが飲食店は、営業していて厨房と内装が生きている状態でこそ買い手が動きます。2023年12月からは、事業譲渡で営業許可を引き継げる届出制度も整いました。正しい順序で動けば「静かに・高く」売れます。
結論から申し上げます。飲食店の売却は、造作譲渡・居抜き売却・事業譲渡・株式譲渡の4択から選ぶことです。どれを選べるかは、営業許可・賃貸借契約・残り時間の3つで決まります。
本記事では、飲食店・ナイト店舗のM&A・居抜き・造作譲渡を扱う当社が実務で使っている判定基準を開示します。取引類型ごとの相場、営業許可を消さずに渡す手続き、大家・従業員・税金の論点、バレずに高く売る手順まで順に解説します。
結論|飲食店の売り方は4択。決めるのは許可・賃貸借・時間
「飲食店の売却」という言葉には、中身の違う4つの取引が混ざっています。何を渡すかが違えば、買い手も、価格の決まり方も、手続きも変わります。まず自店がどれを選べるかを確かめることが、売却の起点です。

| 売り方 | 何を渡すか | 主な買い手 | 営業許可 | 賃貸借契約 | 当社の成約率(中央値) | nightmaの評価 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 造作譲渡 | 内装・厨房設備・什器 | 新規出店者 | 消滅。買い手が取り直す | 買い手が新規に契約 | 62% | ○ 最も早く軽い。価格は低め |
| 居抜き売却 | 営業状態のままの物件と造作 | 新規出店者 | 原則取り直し。営業の全部を譲る形なら承継も可 | 新規契約か、承諾付きの譲渡 | 70% | ○ 飲食店で最も件数が多い |
| 事業譲渡 | 営業・顧客・スタッフ・許可 | 同業者・法人・個人 | 承継できる(食品衛生法56条) | 貸主の承諾が要る | 78% | ◎ 黒字なら第一候補 |
| 株式譲渡 | 法人ごと | 法人・投資家 | 名義そのまま | 契約そのまま(変更条項に注意) | 87% | ◎ 最も高い。法人限定 |
自店がどれを選べるか|3つの問い
売り方を決めるのは価格の希望ではなく、店の状態です。次の3つに答えると、選べるスキームが絞れます。
| 問い | はい | いいえ | nightmaの評価 |
|---|---|---|---|
| 営業許可ごと渡したいか(買い手が営業を止めたくないか) | 事業譲渡・株式譲渡 | 造作譲渡・居抜き売却 | ◎ ここが最初の分岐。価格に直結する |
| 賃貸借契約を引き継げるか(貸主が承諾しそうか) | 事業譲渡・居抜き売却 | 解約して造作だけ残す | ○ 打診の順番で結果が変わる |
| 退去までに時間があるか(解約予告を出していないか) | 全部の選択肢が残る | 造作譲渡に寄る | ◎ 時間は取り返せない |
3つとも「はい」なら、事業譲渡か株式譲渡で収益力ごと評価してもらえます。3つとも「いいえ」なら、造作譲渡で原状回復費を消しに行くのが現実的な線です。
飲食店の売却相場|「50万〜300万円」と「営業利益の何年分」は別の取引の数字
検索で出てくる相場は、造作譲渡の数字と事業譲渡の数字が混ざっています。さらに掲載価格・希望価格・査定価格・成約価格の区別も付いていません。ここでは取引類型ごとに分け、どの数字が何の価格かを明示します。
造作譲渡・居抜きの相場|当社の一次確認
内装と設備の価値が中心なので、業態と設備の重さで決まります。当社が一次確認した実勢では、飲食店の造作譲渡料は100〜350万円が中心帯です。
| 業態 | 造作譲渡料の目安 | nightmaの評価 |
|---|---|---|
| 軽飲食(カフェ・バー・スナック・テイクアウト) | 100〜200万円 | ○ 設備が軽く買い手の裾野が広い |
| カラオケ・パブ・スナック(実績平均) | 168.6万円 | ○ ナイト系は当社の主戦場 |
| 重飲食(中華・焼肉・居酒屋) | 200〜400万円超 | ◎ ダクト・排気・グリストラップが効くほど高い |
| 設備が古い・郊外・不要什器が多い | 0円(無償譲渡)もある | △ それでも原状回復費は消える |
比較の基準は原状回復費です。スケルトンに戻して明け渡すと坪あたり5〜15万円かかり、10坪なら50〜150万円の持ち出しになります。造作譲渡はこの持ち出しが消えたうえで譲渡料が入るので、収支の符号が変わります。
事業譲渡・M&Aの相場|「目安」を成約価格と読まない
営業ごと渡す取引は、収益力で評価されます。M&Aプラットフォームの解説では、飲食店のM&Aは相場100万〜250万円、算定の基本は時価純資産に実質営業利益の3〜5倍を加える、と説明されています。
これらは掲載時の目安であって、成約価格ではありません。当社は「希望額に対して何パーセントで決まるか」で見ます。売主の状況で35〜45ポイント動くからです。
| 売主の状況 | 成約率 | なぜそうなるか | nightmaの評価 |
|---|---|---|---|
| 黒字安定・好立地・売主に余裕 | 85〜95% | 断れるので条件を選べる | ◎ この状態で動き出すのが理想 |
| 黒字だが平凡 | 70〜85% | 比較検討される | ○ 見せ方より許可と契約の整理が効く |
| 赤字・売り急ぎ | 50〜70% | 期限が相手に見える | △ 解約予告の前なら戻せる |
| 困窮売却(廃業を避けたい) | 40〜60% | 選択肢が無いことが伝わる | △ それでも廃業より手残りは上 |
あなたの額が上限と下限のどちらに振れるか|4つの判定点
同じ業態・同じ坪数でも、上のレンジの上端に付くか下端に付くかは、次の4点で決まります。価格を見た今この段階で確認しておくと、査定の精度が上がります。
① 許可のクリーンさ(営業許可の名義と施設が一致しているか、深夜酒類など届出の抜けが無いか)② 内装と業態の適合(重飲食の設備は重飲食の買い手にしか価値が無い)③ ビルの用途制限(深夜営業やナイト業態が可能か)④ 立地(駅距離と階数)。
この4点は、店名を出さなくても判定できます。営業中・赤字でも査定できるので、売ると決める前に概算レンジを知っておいてください。
売却ではなく閉店を検討している段階なら、飲食店の閉店 完全ガイドで畳む順番と費用、閉店より高く終わる出口を先に確認してください。
自店が4択のどれで、いくらになるか無料で確認
店名を出さずに概算レンジをお伝えします。
営業中・赤字でも査定できます。
飲食店・ナイト店舗のM&A・居抜き・造作譲渡。
※ しつこい営業はありません
営業許可は引き継げるか|食品衛生法56条・2023年12月13日からの届出制
売却相場の記事は多いのに、営業許可を先頭で扱う記事はほとんどありません。しかし買い手が最初に確認するのは価格ではなく「営業を止めずに引き継げるか」です。ここが決まると、買い手の時間とコストが決まり、価格に乗ります。
承継の条件|一次情報で確認した6項目
食品衛生法第56条は、許可営業者が営業を譲渡したとき、営業を譲り受けた者が許可営業者の地位を承継すると定めています。承継した者は、遅滞なく、その事実を証する書面を添えて都道府県知事に届け出ます。
| 項目 | 内容 | 実務上の意味 | nightmaの評価 |
|---|---|---|---|
| 施行 | 2023年12月13日から、新たな許可取得ではなく届出で地位を承継 | 買い手は許可の取り直しが不要 | ◎ 売り物の価値そのもの |
| 対象 | 営業の全部を譲渡する場合に限る。一部譲渡は対象外 | その許可に係る営業をまるごと渡す。複数厨房の一部だけ、営業の一部だけは不可(別許可の他店舗は別に判断) | ◎ 契約の組み方で承継の可否が決まる |
| 事前相談 | 譲渡人が、可能な限り管轄の保健所にあらかじめ相談する(法律上の成立要件ではなく、厚生労働省と東京都が求める運用) | 退去日が確定してからでは、相談から入る時間が無い | ◎ 売り手が先に動く工程 |
| 書類 | 承継届のほか、譲渡契約書や覚書など譲渡を証する書類を添付 | 契約書が保健所の提出書類になる | ○ 口約束の譲渡は承継できない |
| 許可内容 | 原則、承継の前後で許可・届出の内容は変わらない | 業種区分や施設を変える場合は、変更届で足りるか新規許可が要るかを管轄保健所に確認 | ○ 業態を変える買い手は要確認 |
| 承継後 | 届出受理後、保健所が施設で衛生管理の状況を確認。届出はオンライン提出も可 | 買い手の衛生管理体制が問われる | ○ 引き継ぎ資料を渡すほど通りやすい |
廃業して取り直す場合との比較
承継を使わない場合、売り手が廃業届を出し、買い手が新たに許可を申請します。厚生労働省のリーフレットが示す改正前の流れは、廃業届、許可申請と手数料の支払い、申請審査、許可の順です。この差が買い手の時間とコストになります。
| 比較 | 承継(事業譲渡) | 廃業→新規許可 | nightmaの評価 |
|---|---|---|---|
| 買い手の手続き | 承継届+譲渡を証する書類 | 許可申請・手数料・施設の審査 | ◎ 承継は書類1組で済む |
| 営業の空白 | 原則なし(許可内容はそのまま) | 許可が下りるまで営業できない | ◎ 空白ゼロは価格に乗る |
| 施設基準 | 変更が無ければ再審査なし | 現行の基準で改めて審査 | ○ 古い店ほど承継の価値が大きい |
| 売り手側の負担 | 保健所への事前相談・契約書の整備 | 廃業届のみ | △ 手間は増えるが手残りで回収できる |
引き継げない許可・届出|バー・スナック・ナイト混在店の注意
営業許可が承継できても、酒類や接待に関わる届出・許可は別の法律です。ここを見落とすと、買い手が引き渡し後に営業できない事態になります。
| 許可・届出 | 根拠 | 事業譲渡での扱い | nightmaの評価 |
|---|---|---|---|
| 飲食店営業許可 | 食品衛生法56条 | 承継できる(全部譲渡・届出) | ◎ |
| 深夜酒類提供飲食店営業の届出 | 風営法33条 | 営業所ごと・営業者ごとの届出。譲受人が改めて届け出て、譲渡人は廃止の届出をする | ○ 承継はできないが、届出で済む |
| 風俗営業の許可(接待を伴う店) | 風営法7条〜7条の3 | 承継は相続・合併・分割の場合のみ。事業譲渡では承継できない | △ 許可ごと渡すなら株式譲渡で法人名義を残す |
【NightMA 専門家の視点】
許可承継の制度で最も効くのは「譲渡人が保健所に事前相談する」という運用です。法律上の成立要件ではありませんが、厚生労働省も東京都も譲渡人に事前相談を求めており、実務の入口は売り手の側にあります。解約予告を出し、退去日が決まってから相談に来られる方が多い。その時点で、承継の形で売る時間は残っていないことがほとんどだ。
【提言】
売ると決める前に、賃貸借契約書の解約条項と、営業許可証の名義・有効期限を手元に置いてください。この2枚で、承継が使えるかどうかの半分は分かります。
賃貸借契約|売れても大家が承諾しなければ営業できない
買い手が決まり、許可の承継も見えたのに、最後に止まるのが賃貸借契約です。民法第612条は、賃借人は賃貸人の承諾を得なければ賃借権を譲り渡すことも転貸することもできない、と定めています。承諾なしに第三者に使わせると、貸主は契約を解除できます。
契約を引き継ぐ3つのパターン
貸主との関係の作り方は3通りあります。どれを取るかで、保証金の扱いと原状回復の負担が変わります。
| パターン | 貸主の関与 | 保証金 | 原状回復 | nightmaの評価 |
|---|---|---|---|---|
| 賃借権の譲渡(承諾付き) | 承諾書をもらう。承諾料を求められることがある | 契約の定めに従い引き継ぎ、または精算 | 引き継ぐ買い手が負う形にできる | ◎ 事業譲渡と相性が良い |
| 解約+新規契約(造作は残置) | 貸主が買い手と新たに契約 | 売り手に返還(償却・未払分を控除) | 残置の合意で免除。合意が無ければ売り手負担 | ○ 居抜き売却で最も多い形 |
| 株式譲渡(契約はそのまま) | 原則不要。ただし代表者や株主の変更を通知・承諾事項にする契約がある | 法人に残る | 法人に残る | ◎ 契約書の変更条項だけ確認 |
保証金の精算と原状回復|契約書の特約が先
民法第621条は、賃借人が原状に復する義務を負うのは受け取った後に生じた損傷で、通常の使用による損耗と経年変化は除く、と定めています。ただし店舗の契約はスケルトン戻しなどの特約を置くことが多く、実務では特約が先に効きます。
造作については借地借家法第33条に造作買取請求権がありますが、同法第37条の強行規定に含まれないため、特約で排除されているのが通常です。造作を「残して売る」には、貸主と買い手の三者で残置の合意を文書にすることが要る。
保証金は、契約書の償却条項と未払賃料の控除を確認してから、返還額を見込みます。明け渡しと引き渡しの違いは明け渡しと引き渡しの違いで整理しています。
貸主の承諾を取る交渉の進め方と、三者合意書に入れる項目は賃貸借契約と店舗譲渡に専用の解説があります。承諾が取れないと何が止まるかも、そちらで確認してください。
従業員・リース・借入はどうなるか
営業ごと渡す売却では、人と契約と負債の3つが付いてきます。事業譲渡と株式譲渡で扱いが逆になる項目があるため、スキームを決める前に確認します。
| 項目 | 事業譲渡 | 株式譲渡 | nightmaの評価 |
|---|---|---|---|
| 従業員 | 自動では移らない。民法第625条により労働者本人の承諾が要る | 雇用契約は法人に残るので、そのまま | ○ 承諾を取る順番が肝心 |
| リース設備 | 所有権はリース会社。契約承継の承諾か残債の精算が要る | 契約は法人に残る | △ 引き渡し当日に発覚する事故が多い |
| 借入 | 原則、売り手に残る。買い手が引き継ぐなら金融機関の同意が要る | 法人の債務として買い手に移る | ○ 引き継げる借入は評価に乗る |
| 簿外債務・未払金 | 契約で範囲を限定できる。ただし買い手が屋号・商号を続用すると、会社法第22条(個人は商法第17条)により売り手の債務を弁済する責任を負うことがある | 法人ごと引き継ぐ。買い手が調査する | △ 株式譲渡は決算の整備が前提 |
従業員の扱いは厚生労働省の事業譲渡等指針(平成28年厚生労働省告示第318号)が、事前の説明と協議、本人の承諾の手順を示しています。同指針は2026年5月25日から改正後のものが適用されます。
リースの残債と所有権の整理は居抜きのリース処理、造作の所有権が混在するトラブルは造作譲渡トラブルで扱っています。
飲食店売却の流れと期間|解約予告を出す前に動く
売却は「買い手を探す」より前に、時間の確保から始まります。解約予告を出した瞬間に退去日が固定され、承継の事前相談も、貸主との交渉も、期限に追われる側に回るからです。
買い取り業者に売る前に|仲介との違い
検索上位の広告に並ぶ「高額買取」「スピード査定」は、自社で買い取って次の借主に転売する事業者です。手数料が無料でも、買値と転売値の差額が業者の利益になるため、その分だけ売り手の手取りが削られます。
当社は仲介です。複数の買い手候補に店名を伏せたノンネームで当てて条件を競わせ、許認可の承継は提携の行政書士と連携して解きます。買い取りが向くのは時間が無いときだけだ。時間があるなら、競わせたほうが高く決まる。
7つのステップ|誰がいつ動くか
順番を間違えると、取れたはずのスキームが消えます。売り手が先に動く工程と、買い手が決まってから動く工程を分けて示します。

| 順 | やること | 誰が | nightmaの評価 |
|---|---|---|---|
| 1 | 賃貸借契約書の解約予告期間と残存期間、営業許可証の名義・期限を確認 | 売り手 | ◎ ここで使える時間が決まる |
| 2 | 4択のどれが使えるかを判定し、概算レンジを出す(査定) | 売り手+仲介 | ◎ 価格より先にスキーム |
| 3 | ノンネームで買い手候補に打診。関心があれば秘密保持契約を結んで開示 | 仲介 | ○ 従業員・取引先に知られない |
| 4 | 買い手が固まってから貸主に打診(承諾、または新規契約) | 売り手+仲介 | ○ 順番を逆にすると噂が先に回る |
| 5 | 保健所へ事前相談(承継の形で売る場合) | 売り手 | ◎ 退去日確定の前に |
| 6 | 譲渡契約書・覚書を作成。承継届の添付書類になる | 双方 | ○ 口約束は承継できない |
| 7 | 引き渡し。買い手は食品衛生法の承継届を遅滞なく提出(売り手の廃業届は不要)。深夜酒類提供の届出がある店は、買い手が営業を開始しようとする日の10日前までに届け出て(施行規則103条3項)、売り手はその廃止の届出を出す | 双方 | ○ 当日の設備リストで所有権を確定 |
バレずに売る順番
売却が漏れると、スタッフの離職と客離れが先に起きて、売り物の価値が下がります。知らせる相手と順番を固定しておくことが、価格を守る手段です。
順番は、買い手候補(ノンネーム)→貸主(買い手が固まってから)→従業員(契約の目途が立ってから)→取引先(引き渡し日が決まってから)です。仲介が間に立てば、店名を出す相手は秘密保持契約を結んだ買い手だけになります。
着手前チェックリスト
相談に来る前に、次の項目を確認しておくと初回の面談で概算まで出せます。全部そろっていなくても構いません。
- ☐ 賃貸借契約書(解約予告期間・残存期間・原状回復と造作の特約・譲渡や代表者変更の条項)
- ☐ 営業許可証(名義・有効期限・業種区分)と深夜酒類など届出の控え
- ☐ 直近2〜3期の決算書または確定申告書、直近12か月の月次の売上と利益
- ☐ 厨房設備・什器のリスト(所有かリースか、残債)
- ☐ 従業員の人数・雇用形態・引き継ぎ希望の有無
- ☐ 借入の残高と、引き継ぎを検討したい金融機関の有無
【NightMA 専門家の視点】
売却の期間を決めるのは市場ではなく、売り手が動き出した時期です。同じ店でも、解約予告の前に動けば事業譲渡で承継を使えるのに、予告の後だと造作譲渡しか残らないことがあります。差は数百万円になる。しかも、その差は交渉では取り返せない。
売却でかかる税金|消費税は課税資産だけ
売却代金には税金がかかります。ただし「売却益に税金」という一言では足りず、個人か法人か、何を譲渡したかで計算が変わります。ここでは判断を分ける原則だけを示し、詳細は専用記事に譲ります。
消費税について、国税庁の質疑応答事例は、営業の譲渡は資産と負債の一切を含めて譲渡する契約であり、課税資産と非課税資産の対価の額を合理的に区分して課税する、と回答しています。営業権や設備は課税対象、土地は非課税です。
売り手が個人事業か法人か、事業譲渡か株式譲渡かで、所得の区分と税率が変わります。3つの規模別のシミュレーションは飲食店の事業譲渡と税金にまとめています。契約前に税理士へ確認してください。
赤字でも売れるか|撤退・廃業と比べる
「赤字だから売り物にならない」と考えて廃業を選ぶ方が多いのですが、飲食店は平均がすでに利益ゼロに近い業種です。赤字の店の出口は、売れるかどうかではなく、どの形で終わるかの選択です。
中小企業庁の中小企業実態基本調査では、飲食店(法人)の売上高に対する食材費と人件費の比率(FL比率)は67.1%、営業利益率は0.34%です。黒字か赤字かは、買い手にとって「収益力で買うか、設備で買うか」の違いにすぎません。
| 出口 | 営業許可 | 原状回復 | 手残り | nightmaの評価 |
|---|---|---|---|---|
| 廃業 | 消滅 | 売り手負担(坪5〜15万円) | マイナス | △ 最も確実に損をする出口 |
| 造作譲渡・居抜き売却 | 買い手が取り直し | 残置で免除 | 0〜数百万円のプラス | ○ 赤字でも成立する |
| 事業譲渡 | 承継 | 買い手に引き継ぐ形が可能 | 収益力で上乗せ | ◎ 黒字化の見込みを示せるなら |
売る前に立て直せるかを判定したい場合は飲食店の経営は立て直せるかを先に読んでください。赤字の内訳で、戻せる赤字と戻せない赤字を分けています。
撤退ラインの引き方は飲食店の撤退基準、廃業を選ぶ場合の届出は飲食店の廃業手続きで解説しています。どちらも「売却額を知ってから決める」のが順番です。
よくある質問
飲食店を売却する方法には何がありますか?
造作譲渡・居抜き売却・事業譲渡・株式譲渡の4つです。内装と設備だけを渡すのが造作譲渡、営業状態のまま物件ごと引き継ぐのが居抜き売却、営業・顧客・スタッフ・許可まで渡すのが事業譲渡、法人ごと渡すのが株式譲渡です。
どれを選べるかは、営業許可を渡したいか、賃貸借契約を引き継げるか、退去までに時間があるかの3つで決まります。
飲食店の営業許可は買い手に引き継げますか?
事業譲渡なら引き継げます。食品衛生法第56条により、営業を譲り受けた者は許可営業者の地位を承継し、2023年12月13日からは新たな許可取得ではなく届出で済みます。
ただし営業の全部を譲渡する場合に限られ、譲渡人には保健所への事前相談が求められます。届出には譲渡契約書など譲渡を証する書類を添付します。廃業して明け渡すと許可は消滅し、次の人が取り直すことになります。
飲食店の売却相場はいくらですか?
取引の種類で桁が変わります。当社が一次確認した実勢では、造作譲渡料は飲食店で100〜350万円が中心帯で、軽飲食は100〜200万円、重飲食は200〜400万円超です。
事業譲渡やM&Aは収益力で評価され、希望額に対して事業譲渡で70〜85%、株式譲渡で80〜95%が当社の成約率の基準です。「50万〜300万円」と「営業利益の何年分」は別の取引の数字なので、混ぜて比べないでください。
大家に知られずに売却できますか?
買い手が決まるまでは知られずに進められますが、最終的には貸主の承諾が要ります。民法第612条により、賃借人は賃貸人の承諾を得なければ賃借権を譲り渡すことも転貸することもできません。
当社は店名を伏せたノンネームで買い手候補を当て、買い手が固まってから貸主に打診する順番で進めます。従業員への説明も、契約の目途が立ってからで間に合います。
赤字の飲食店でも売却できますか?
売却できます。中小企業実態基本調査では飲食店(法人)の営業利益率は0.34%で、平均がすでに利益ゼロに近い業種です。
赤字だと評価の軸が収益力から内装・設備に移り、造作譲渡や居抜き売却のレンジに寄りますが、原状回復費が消えたうえで譲渡料が入るため、廃業と比べて収支の符号が変わります。解約予告を出す前に動くほど選択肢が残ります。
まとめ|飲食店の売却は、許可・賃貸借・時間の順に決める
本記事の要点を5つに絞ります。
第一に、飲食店の売却は造作譲渡・居抜き売却・事業譲渡・株式譲渡の4択で、混ぜて相場を比べない。
第二に、事業譲渡なら食品衛生法第56条で営業許可を承継でき、2023年12月13日からは届出で済む。ただし全部譲渡に限られ、譲渡人には保健所への事前相談が求められる。
第三に、貸主の承諾なしに賃借権は譲れない。買い手が固まってから打診する。第四に、深夜酒類の届出と風俗営業の許可は別の法律で、承継の可否が違う。第五に、解約予告を出す前にしか、この選択肢は全部そろわない。
NightMAの経営提言:
価格から考え始めないでください。順番は、時間 → 許可と契約 → スキーム → 価格です。まず賃貸借契約書の解約条項を開いて、使える時間を確かめる。次に営業許可証を見て、承継の形で渡せるかを判定する。そこで取れるスキームが決まり、最後に価格が出ます。逆から考えると、時間を使い切ってから一番安いスキームで売ることになります。
nightmaは飲食店・ナイト店舗のM&A、居抜き(造作譲渡)、Web支援までを一気通貫で扱い、許認可の承継は提携の行政書士と連携します。売ると決める前の「いくらで、どう売れるか」から相談してください。
店舗のお悩み、nightmaに無料相談
売ると決める前でも相談できます。
飲食店・ナイト店舗のM&A・居抜き・造作譲渡・Web集客支援。
許認可の承継は提携の行政書士と連携します。
※ しつこい営業はありません
