「あと何をすれば、この店は黒字に戻るのか」。赤字が続く店のオーナーが、いちばん知りたいのはここです。
ただ、その前に足が止まる理由が3つあります。① 立て直せるのかどうか、そもそも判断がつかない ② やめる決断をしたと知られたくない ③ いま畳んだら何が残るのか分からない——この3つです。
ですが飲食・ナイトの店舗は、営業していて内装と設備が生きている状態でこそ買い手が動きます。判断を先に済ませておけば、どちらに転んでも「静かに・高く」終われます。
結論から申し上げます。立て直せるかどうかは、赤字の大きさでは決まりません。赤字が「動かせる費目」で出ているのか、「動かせない費目」で出ているのかで決まります。
本記事では、飲食店のコスト構造を公的統計の実数で分解したうえで、戻せる赤字と戻せない赤字を判定する3つの問い、そして戻せないと分かったときに手元に残る額までを解説します。バレずに高く売る手順まで含めて示します。
結論|立て直せる赤字と、立て直せない赤字がある
先に判定の枠組みを置きます。赤字の原因がどの層にあるかで、打てる手も、かかる時間もまったく違います。
| 赤字の出どころ | 対売上高 | 動かせるか | nightmaの評価 |
|---|---|---|---|
| FLR(食材・人件費・家賃) | 74.0% | 構造的に動かしにくい | △ 立地と業態で決まる。短期では戻らない |
| その他の経費・広告・交際費など | 約15% | 動かせる | ◎ ここが膨らんでいるなら戻せる余地がある |
| 支払利息の負担 | 0.61% | 借入条件による | ◎ 営業利益0.34%を上回る=別の手当てが要る |
「売上を戻す」から考えると間違える
赤字と聞くと、まず売上を戻す方法を探します。しかし飲食店の利益率の薄さを踏まえると、売上を数%動かしても届かない場面が多くあります。
先に見るべきは費用の内訳です。どの層で出ている赤字なのかが分かって初めて、打つべき手と、必要な時間が決まる。
まず平均を知る|飲食店のコスト構造
自店の数字を評価するには、比べる相手が要ります。中小企業庁「中小企業実態基本調査」の統計表3 売上高及び営業費用 産業中分類別表(法人企業)から、日本標準産業分類の「飲食店」を抽出し、対売上高比率を算出しました。
産業中分類別としてデータベース形式で公表されている最新分にあたる2016年度の数値です。
| 費目 | 対売上高 | 層 |
|---|---|---|
| 商品仕入原価 | 22.38% | F(原材料)35.38% |
| 材料費 | 13.00% | |
| (うちその他の売上原価) | 1.20% | |
| 労務費(売上原価分) | 1.48% | L(人件費)31.71% |
| 販売費及び一般管理費のうち人件費 | 30.23% | |
| FL比率 | 67.09% | — |
| 地代家賃 | 6.93% | FLR 74.02% |
| 水道光熱費 | 4.19% | 動かせる層 合計 約25.6% |
| 減価償却費 | 2.67% | |
| 租税公課 | 1.36% | |
| 広告宣伝費 | 1.19% | |
| 販売手数料 | 0.81% | |
| 交際費 | 0.43% | |
| その他の経費 | 13.37% | |
| 営業利益 | 0.34% | — |

「FL60%以下」は目標であって平均ではない
飲食店経営でよく語られるのが「FL比率は60%以内」という目安です。65%を超えたら危険水域という言い方もされます。
ところが実数を見ると、飲食店(法人企業)の平均はすでに67.09%です。危険水域とされる水準が、平均そのものだった。
つまりFL比率が65%を超えていること自体は、立て直せない理由になりません。それは業界平均の位置にいるという意味でしかないからです。
動かせない74%と、動かせる15%
ここが判定の中心です。同じ赤字でも、出どころによって戻せるかどうかが分かれます。
FLR 74.0%は立地と業態で決まる
食材費・人件費・家賃を合わせたFLRは74.02%です。この3つは日々の努力で動かないわけではありませんが、動く幅が構造的に決まっています。
家賃は契約で固定されています。人件費は営業時間と席数から必要人数が決まります。原価は業態が決めます。立地と業態を変えない限り、FLRは大きくは動かない。
だから赤字の主因がFLRにある店は、短期の改善では戻りにくいのが実務の感覚です。
その他の経費13.37%が、いちばん動く
いっぽうで見落とされやすいのが、その他の経費13.37%という数字です。広告宣伝費1.19%・交際費0.43%を足すと約15%になります。
FLRの次に大きい塊がここです。そして中身は店ごとにばらばらで、使途を洗い出すと止められるものが出てきます。
営業利益が0.34%しかない構造では、この15%のうち1%を削るだけで利益が3倍を超える計算になる。売上を伸ばすより先に手が届きます。
【NightMA 専門家の視点】
売却相談で試算表を拝見すると、その他の経費に何年も前に契約したサービスが残っている店が珍しくありません。金額は小さく見えますが、営業利益の薄さに対しては大きい。逆に、その他の経費を絞り切ってもなお赤字が消えないなら、原因はFLR側にある。そこまで来ていれば、判断すべきは改善ではなく出口だ。
営業利益0.34%より、支払利息0.61%のほうが大きい
本記事でいちばん重い数字です。同じ統計で、営業利益率は0.34%、支払利息・割引料は0.61%でした。
つまり平均的な飲食店は、本業の利益で利息を払えていません。
| 段 | 対売上高 | 読み方 |
|---|---|---|
| 営業利益 | 0.34% | 本業で稼いだ利益 |
| 支払利息・割引料 | 0.61% | 本業の利益を上回る |
| 営業外収益 | 2.33% | ここで浮いている |
| 経常利益 | 1.70% | 営業外収益がなければ成立しない |

この構造にいる店の判断軸
借入の負担が本業の利益を超えている場合、売上を数%戻しても届きません。利息の負担は売上が減っても変わらないからです。
この段階では、改善と並行して返済条件の変更や、売却による元本の圧縮まで含めて考える必要があります。借入が重い場合の畳み方は飲食店の借金と廃業で整理しています。
立て直せるかを判定する3つの問い
自店の試算表を、先ほどの層に並べ替えてから答えてください。順番に見ていきます。
問い1|赤字はどの層で出ているか
FLRが74%を大きく超えているなら構造の問題です。その他の経費側が膨らんでいるなら、削って戻せる可能性があります。
問い2|営業利益と支払利息はどちらが大きいか
利息が上回っているなら、改善だけでは追いつきません。金融機関との条件変更や、中小企業活性化協議会への相談を並行させる段階です。
問い3|改善に使える時間は何か月あるか
手元資金を月商で割ってください。それが残り時間です。改善策の効果が出るまでに資金が尽きるなら、判断は改善ではなく出口になります。
セルフチェック
以下に3つ以上該当する場合、立て直しと並行して出口の金額を把握しておく段階です。
- FLRが売上の80%を超えている
- その他の経費を見直したが、赤字が消えなかった
- 営業利益より支払利息のほうが大きい
- 現預金が月商の3か月分を下回っている
- 改善策を打って3か月以上たっても数字が動いていない
- 家賃が近隣の相場より明らかに高い
- 自店の造作・設備がいくらで売れるかを調べたことがない

戻せる場合、どこから手をつけるか
具体的な改善策は店ごとに違い、専門のコンサルタントの領域です。ここでは費目の優先順位だけを示します。
順番は「動かせる層」から
まず、その他の経費13.37%の中身を1件ずつ洗います。効果が出るまでの時間が最も短く、売上に影響しないためです。
次に水道光熱費4.19%と広告宣伝費1.19%。ここまでで効果が足りなければ、FLR側に踏み込むことになります。
家賃は「お願い」ではなく請求できる
FLRのうち唯一、契約に手を入れて動かせるのが家賃です。借地借家法第32条は、建物の借賃が近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときなどに、契約の条件にかかわらず賃料の減額を請求できると定めています。
お願いではなく法律上の請求です。ただし通る条件があり、交渉すべきでない物件もあります。手順は店舗の家賃減額交渉で解説しています。
戻せないと分かったとき、いくら残るか
ここから当社の担当領域です。立て直さない判断をした場合、手元に残る額は売り方でほぼ決まります。
閉めるか、譲るかで符号が変わる
スケルトンに戻して明け渡す場合、当社の相場データでは原状回復に坪あたり5〜15万円かかります。10坪なら50〜150万円の持ち出しです。
内装・厨房設備・什器をそのまま次の借主に譲る造作譲渡なら、この工事費が不要になったうえで譲渡料が入ります。
| 出口 | 手元に残る額 | nightmaの評価 |
|---|---|---|
| 閉めて原状回復 | −50〜150万円(10坪) | △ 時間切れの結果になりやすい |
| 居抜き(造作譲渡) | +100〜350万円 | ◎ 小規模・スピード重視ならここ |
| 事業譲渡(M&A) | 営業利益の1〜数年分 | ◎ 食品衛生法第56条で営業許可を承継できる |
あなたの店が上限と下限のどちらに振れるかは、①設備の年式と稼働状態 ②業態と内装の汎用性 ③ビルの用途制限と貸主の承諾 ④立地の集客力、の4点で決まります。いずれも営業中でも確認できる項目です。
立て直すか決める前に、いくらで終われるかを確認
店名を出さずに概算レンジをお伝えします。
営業中でも、赤字でも査定できます。
飲食店・ナイト店舗のM&A・居抜き・造作譲渡。
※ しつこい営業はありません
買い取り業者に売る前に|仲介との違い
赤字の店を検索すると、店舗の買い取りを掲げる業者が数多く表示されます。仕組みの違いを理解してから相談先を選んでください。
買い取り業者は自社で買い、次の借主に転売します。手数料は無料でも、買値と転売値の差額が業者の利益になる。つまり売り手の手取りは、その差額分だけ削られます。
nightmaは仲介です。複数の買い手候補に水面下で当て、条件を競わせて価格を引き上げます。店名を伏せたノンネームで進めるため、従業員や取引先に知られないまま、営業を続けながら進行できます。
赤字の店ほど「買い叩かれるのでは」と警戒されますが、買い手が見ているのは損益だけではありません。設備の状態・立地・許可の有無で価格は動きます。だから複数に当てる意味があります。
先送りすると、何が失われるか
立て直しの努力そのものは正しい行為です。ただし時間を使う以上、失われるものがあることは押さえておいてください。
設備は毎月古くなる
造作譲渡料は設備の年式と稼働状態で決まります。判断を1年先送りすれば、その分だけ評価が下がります。
同時に赤字も積み上がるため、差は二重に開きます。
資金が尽きると、出口を選べなくなる
売却は相手のある話です。買い手を探す時間が残っていなければ、条件を選べません。退去日が決まってからでは、居抜きも事業譲渡も間に合わないことがあります。
判断の目安は飲食店の撤退基準に、届出の実務は飲食店の廃業手続きにまとめました。
【提言】
立て直しを進めながらでかまいません。並行して、いま売ったらいくらかを1回だけ調べておいてください。数字が分かっていれば、改善の期限を自分で決められます。分からないまま続けるのが、いちばん損の大きい状態だ。
参考|廃業率をどう読むか
「飲食店は3年で7割が潰れる」という数字を根拠に諦める方がいますが、これは一次統計では確認できません。
2025年版中小企業白書が示す2023年度の廃業率は全業種で3.9%、開業率も3.9%です。業種別の開廃業率は白書本文ではなく付属統計表にあり、本文に「飲食店は何パーセント」という記述はありません。
他店の平均より、自店の内訳を見てください。判断できるのはそちらだけです。
よくある質問
赤字の相談で実際に多い質問を5つに絞ってまとめます。
FL比率が65%を超えていたら、もう立て直せませんか?
その数字だけでは判断できません。中小企業実態基本調査(2016年度)で飲食店(法人企業)のFL比率は平均67.1%です。
よく言われる「FL60%以下」は目標値であって平均ではなく、65%超は業界平均の位置にいるという意味にすぎません。見るべきは水準そのものではなく、赤字の原因がFLRのような動かしにくい費目にあるのか、その他の経費のような動かせる費目にあるのかという内訳です。
赤字が何か月続いたら撤退すべきですか?
月数では決まりません。同調査での営業利益率は平均0.34%で、月商300万円の店なら月1万円の利益です。
平均の店がすでにほぼ利益ゼロなので、赤字であること自体は異常ではありません。判断材料になるのは、手元資金が何か月分あるか、営業キャッシュフローが連続でマイナスか、そして売却でいくら回収できるかの3点です。
営業利益より支払利息のほうが大きいと、どうなりますか?
本業の利益で利息を払えていない状態です。同調査では営業利益率0.34%に対して支払利息・割引料が0.61%で、平均でこの関係になっています。
経常利益が1.70%に浮くのは営業外収益が2.33%あるためです。この構造の店は、売上を数%戻す程度では借入の負担を吸収できません。
返済条件の変更や、売却による元本圧縮まで含めて検討する段階にあります。
家賃が高すぎる場合、下げてもらうことはできますか?
借地借家法第32条は、建物の借賃が近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときなどに、契約の条件にかかわらず賃料の減額を請求できると定めています。お願いではなく法律上の請求です。
ただし通る条件があり、交渉すべきでない物件もあります。手順は当社の別記事で解説しています。
立て直しをあきらめる場合、店はいくらで売れますか?
内装と設備をそのまま譲る造作譲渡なら、当社が一次確認した実勢で飲食店は100〜350万円が中心帯です。原状回復でスケルトンに戻す場合は坪あたり5〜15万円の持ち出しになるため、同じ店でも収支の符号が変わります。
営業許可・顧客・スタッフごと渡す事業譲渡なら、営業利益の1〜数年分が中心です。まず匿名で概算を把握してから判断してください。
まとめ|見るのは赤字の大きさではなく、内訳
本記事の要点を整理します。
第一に、飲食店(法人企業)の平均はFL比率67.09%・営業利益率0.34%です。「FL60%以下」は目標であって平均ではありません。
第二に、FLR74.02%は動かしにくく、その他の経費など約15%が動かせる層です。赤字がどちらで出ているかで、戻せるかどうかが分かれます。
第三に、営業利益0.34%より支払利息0.61%のほうが大きいのが平均の姿です。借入が重い店は、改善だけでは追いつきません。
第四に、戻せないと判断した場合、閉めれば10坪で50〜150万円の持ち出し、居抜きで譲れば100〜350万円の収入です。同じ店で符号が逆転します。
第五に、設備は毎月古くなり、資金が尽きれば出口を選べなくなります。時間そのものが資産だ。
NightMAの経営提言:
立て直せるかどうかを、感覚で決めないでください。試算表を層に並べ替えれば、答えは数字の側にあります。そして立て直しに挑むなら、期限を決めてください。期限を決めるには、いま売ったらいくらかを知っている必要があります。
nightmaは飲食店・ナイト店舗のM&A、居抜き(造作譲渡)、Web支援までを一気通貫で扱い、許認可の承継は提携の行政書士と連携します。経営改善そのものは専門のコンサルタントの領域ですが、その判断に要る「出口の金額」は当社が出せます。
店舗のお悩み、nightmaに無料相談
営業中・赤字でも相談できます。
飲食店・ナイト店舗のM&A・居抜き・造作譲渡・Web集客支援。
許認可の承継は提携の行政書士と連携します。
※ しつこい営業はありません
