スケルトン渡しと居抜き渡しの違い|退去時の原状回復とナイト店舗の撤退コスト・出口戦略を専門解説【2026年最新】

「退去するならスケルトンに戻せと言われた。数百万かかると聞いて青ざめている」。「居抜きで誰かに渡せれば、その解体費は浮くのではないか」。

ナイトレジャー店舗の撤退・売却で、こうした相談は後を絶ちません。

結論から申し上げます。原状回復は「受け取った時の状態に戻す」ことであり、スケルトン返しはその一形態にすぎません。

そして、居抜き渡しに切り替えられれば、原状回復費を回避するだけでなく、造作譲渡で利益化することすら可能です。

この記事では、民法621条・612条の一次情報を軸に、スケルトン返しと居抜き渡しの違い、費用、貸主承諾、風営法店舗の退去順序、そして撤退コストの最適化までを、ナイトM&A仲介nightmaの視点で解説します。

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目次

スケルトン渡しと居抜き渡しの違い(まず整理)

スケルトン渡しと居抜き渡しの違い スケルトン渡しは躯体だけに戻し内装設備を全撤去で解体費は大きな負担 居抜き渡しは内装設備を残して引き継ぎ解体費を回避し造作譲渡で利益化 貸主承諾が前提

スケルトン渡しと居抜き渡しは、退去時に「物件をどの状態で貸主へ返すか」の2つの方法です。

ここを取り違えると、不要な解体費を負担したり、逆に契約違反でトラブルになったりします。

スケルトン渡し(躯体だけに戻す)とは

スケルトン渡しは、内装・設備をすべて撤去し、柱・梁・コンクリート躯体がむき出しの状態に戻して返すことです。

床はコンクリート素地、天井はスラブ露出、壁は躯体現しが基準になります。スケルトン返しとも呼ばれます。

居抜き渡し(内装・設備を残して返す)とは

居抜き渡しは、内装・厨房・什器などを残したまま、次の借り手へ引き継ぐ形で返す方法です。

退去する側は高額な解体費を回避でき、次の借り手は初期費用を抑えられます。ただし成立には条件があり、後述する貸主承諾が前提になります。

退去時と出店時で意味が変わる

「スケルトン/居抜き」は、出店時は「どの物件を借りるか」の意味で使われます。

本記事は退去時の返し方に絞って解説します。出店時の物件選びは居抜き物件の選び方を参照してください。

「スケルトン渡し=原状回復」は誤解(民法621条)

スケルトン返しは必要かの判定フロー 入居時スケルトンならスケルトン返しが原状回復 入居時内装ありで特約があればスケルトン義務 特約がなければ入居時の内装状態に戻すだけでスケルトン化は原則不要

最も多い誤解が、「原状回復=スケルトンに戻すこと」という思い込みです。これは正しくありません。

原状回復の基準は民法621条(e-Gov)が定めており、あくまで「受け取った時の状態」です。

原状回復は「受け取った時の状態に戻す」こと

民法621条は、賃借人が「通常の使用及び収益によって生じた損耗並びに経年変化を除き」、賃貸借終了時に原状へ復する義務を負うと定めています。

つまり原状回復は「新品に戻す」ことでも「必ずスケルトンにする」ことでもありません。基準は入居時の状態です。

入居時スケルトンなら「スケルトン返し=原状回復」

入居時にスケルトン状態で借りた場合は、そのスケルトン状態に戻すことが原状回復です。

このケースに限り、「スケルトン返し=原状回復」が成立します。

入居時に内装ありなら、スケルトン化は原則不要

入居時に内装・設備が整った状態(居抜き・内装付き)で借りた場合、原状回復はその状態に戻すことです。

スケルトンまで撤去する義務は、原則として生じません。これを誤解して解体すると、不要なコストを丸ごと背負うことになります。

事業用は「契約書がすべて」|スケルトン返し特約の有効性と限界

ここで重要なのが、事業用テナントには住宅向けのルールがそのまま当てはまらない、という点です。

事業用は契約自由の原則が強く働き、原状回復は契約書の特約で決まります。だからこそ、契約書の読み込みが撤退コストを左右します。

国交省ガイドラインは住宅向け=事業用は契約・特約が優先

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、賃貸住宅の退去を対象に策定された資料です。

事業用テナントに直接適用される強行ルールではありません。事業用では、原状回復条項や特約で借主負担が広く設定されやすいのが実情です。

通常損耗まで負わせる特約は「具体的明記+明確な合意」が要件

通常損耗・経年変化まで借主負担とする特約は、契約自由の原則から有効です。

ただし最高裁平成17年12月16日判決は、その特約が有効であるには、負担範囲を契約書に具体的に明記する等、賃借人が明確に認識し合意していることが必要だと示しました(不動産流通推進センター)。

この法理は住宅事案ですが、事業用のスケルトン返し特約の有効性を論じる基礎ロジックとして広く用いられています。

スケルトン返し特約は曖昧だと争える・入居時状態の立証が鍵

スケルトン返し特約があれば、入居時が居抜きでもスケルトン義務が課され得ます。

ただし、撤去範囲・設備の残置可否・単価の説明がなく文言が曖昧だと、解釈争いが起こりやすくなります。

実際、東京地裁平成30年8月8日の事案では、原状回復の範囲が機械的にスケルトンではなく、貸主承諾時の条件・入居時状態・契約経緯で決まると判断されました(RETIO判例)。

【NightMA 専門家の視点】
退去交渉で勝敗を分けるのは、「入居時にどの状態で借りたか」を立証できるかです。実務の現場では、入居時の写真・現況確認書・図面・設備表がないために、「元々あった造作」まで撤去させられるケースが頻繁に起きています。借りる時点で入居時の状態を記録しておくことが、退去時の数百万円を守る盾になります。

居抜き渡しには貸主承諾が必要(民法612条)と3つの類型

居抜き渡しは「設備を残すだけ」の話ではありません。法的には賃借権の譲渡・転貸の設計問題です。

民法612条(e-Gov)は、賃貸人の承諾なく賃借権を譲渡・転貸できず、無断なら契約解除の対象になると定めています。

無断譲渡・転貸は契約解除リスク

貸主の承諾を得ずに第三者へ使用させると、貸主は契約を解除できます。

背信行為と認めるに足りない特段の事情があれば解除が制限される判例法理はありますが、それを当てにするのは危険です。居抜き渡しは承諾を取るのが大前提です。

居抜き渡しの3類型と原状回復義務の帰属

居抜き渡しは、次の3つの類型に整理できます。どの形を取るかで、原状回復義務が誰に残るかが変わります。

類型法的性質原状回復義務の帰属NightMAの評価
賃借権譲渡型旧借主の賃借人の地位を新借主が承継原則 新借主へ移るが、旧借主免責は承諾書の文言で要確認出口として本命
転貸型旧借主が借主のまま新借主に使用させる主契約上の義務は旧借主に残りやすい旧借主のリスク大
旧契約解約+新規賃貸借型旧借主が退去し新借主が新規契約原則 旧借主に残る・三者合意で移転可免責条項が命

店舗(建物賃借)は「承諾に代わる裁判所の許可」が使えない

借地(建物所有目的の土地賃借権)なら、貸主が承諾しないとき借地借家法で裁判所の代諾許可を申し立てられます。

しかし店舗テナント=建物の賃借権には、この代諾許可の制度がありません。つまり貸主が首を縦に振らなければ、居抜き渡しは成立しません。貸主交渉が決定的に重要です。

旧借主が原状回復義務を免れる条件

旧借主が原状回復義務を確実に免れるには、三者の書面合意が必要です。

「旧借主は原状回復義務を負わない」「新借主は現況有姿で承認し、将来の原状回復義務を承継する」という文言を、貸主を含めた合意に明記します。承諾の取り方は貸主の承諾も参照してください。

スケルトン返し vs 居抜き渡しの費用

ホストクラブに絞った閉店費用の実額(防音・LED・VIP個室で坪12〜25万に跳ねる原状回復・風営法1号の廃止届・閉店時に回収不能化する売掛金・解雇予告手当を含む最終人件費)は、ホストクラブ閉店費用ガイドで解説しています。

メンズエステに絞った閉店費用の実額(個室・シャワー・防音で坪15〜30万に跳ねる原状回復・店舗型性風俗特殊営業の廃止届・無届店が閉店後も3年問われる摘発リスク)は、メンエス閉店費用ガイドで解説しています。

ラウンジ業態に絞った閉店費用の実額(会員制・高級ラウンジで坪20〜30万に跳ねる原状回復・風営1号の許可証返納・会員資産を残す事業譲渡)は、ラウンジ閉店費用ガイドで解説しています。

コンカフェ業態に絞った閉店費用の実額(コンセプト内装で上振れする原状回復坪7〜13万円・接待許可の廃止・居抜きが素体次第で割れる構造)は、コンカフェ閉店費用ガイドで解説しています。

バー業態に絞った閉店費用の実額(原状回復坪5〜10万円・解約予告家賃・リース残債・深夜酒類の廃止届)は、バー閉店費用ガイドで坪数別に解説しています。

費用面では、スケルトン返しは大きなキャッシュアウト、居抜き渡しはその回避になります。

なお、事業用店舗の原状回復には公的な全国相場の統計がなく、以下は民間の実勢(出典付き・推測を含む)として扱います。

スケルトン返し(原状回復解体)の坪単価相場

民間相場では、店舗の原状回復は坪3〜10万円程度、業種・工事内容により3〜50万円と幅があり、飲食店は20〜50万円とする整理もあります(リショップナビ)。

幅が大きいのは、解体・産廃・ダクト・グリストラップ・空調・給排水・電気容量・防音の有無で変わるためです。

居抜き渡しで浮く費用

居抜き渡しにできれば、これらの解体・撤去費の大半を回避できます。

さらに内装相場の考え方は内装工事の相場で解説しています。回避できる金額は、店舗の造作の重さに比例します。

ナイト業態で原状回復が高額になる要因

ナイトレジャー店舗は、防音壁・二重天井・浮き床、大容量電気設備、VIP個室・造作壁、複数の水回りなど、一般飲食より造作が重くなりがちです。

特に躯体へのアンカー打ち・配管貫通・スラブ開口がある場合、単なる撤去では足りず、耐火区画や仕上げの復旧まで求められ、費用が膨らみます。

風営法店舗の退去順序(廃止届・許可証返納)

風営法の許可営業を撤退する場合は、工事の前にやるべき行政手続きがあります。

順序を誤ると、許可を残したまま設備を壊すことになりかねません。

営業終了→廃止届・許可証返納→明渡し・原状回復の順

風俗営業を廃止したときは、許可証を遅滞なく公安委員会へ返納し、廃止の届出も必要です(風営法(e-Gov))。

実務では、返納事由の発生から10日以内の届出案内が示されています。営業継続中にスケルトン解体へ入るのではなく、営業終了→廃止届・許可証返納→明渡し・原状回復、の順で進めるのが安全です。許可営業と届出営業の手続きの違いは廃業届・許可証返納で解説しています。

許可に紐づく構造設備と原状回復範囲

風営法許可では、個室区画・見通し・照明・防音などの構造設備が許可の前提になっています。

「許可上必要だった構造設備」を残して居抜き承継するのか、全部撤去してスケルトン返しするのかで、法務・工事・M&Aの設計が大きく変わります。

ナイトM&A視点:居抜き渡し+造作譲渡で「利益化」

退去方法で変わる撤退コスト スケルトン返しは原状回復解体費で数百万円のマイナス 居抜き渡しと造作譲渡は解体費を回避し造作譲渡代金でプラスのキャッシュイン 貸主承諾と三者合意で転換

ここがnightmaの本領です。退去方法の選択は、撤退コストと売却益のトータルを大きく左右します。

スケルトン返しは原状回復解体費というマイナスですが、居抜き渡し+造作譲渡へ転換できれば、それをプラスのキャッシュインに変えられます。

原状回復費(マイナス)を造作譲渡代金(プラス)に転換

スケルトン返しなら数百万円の解体費負担。居抜き渡し+造作譲渡なら、その負担を回避し、さらに造作譲渡代金を得られる可能性があります。

ナイト店舗は内装・防音・設備の投資が重いほど、この差が大きくなります。造作譲渡の全体像は造作譲渡とは、相場は造作譲渡の相場を参照してください。

スケルトン返しを避ける段取り

居抜き渡しは、買い手をただ見つければ成立するものではありません。時系列の設計が要です。

  • 解約予告の「前」に居抜きの買い手候補を探索する
  • 家賃・保証金・造作価格・引継ぎ日の条件を整理する
  • 貸主へ民法612条の承諾を前提に譲渡スキームを打診する
  • 三者合意書で旧借主の原状回復義務の免除・新借主への承継を明記する
  • 承諾が取れない場合に備え、スケルトン返し見積も並行で取得する
退去通知のタイミングと順序を誤ると原状回復で数百万を失います。順序の詳細は居抜き退去のタイミングで解説しています。

【提言】
居抜き渡しは「貸主が承諾しなければ成立しない」のが法的な現実です。だからこそ、解約を通知してから買い手を探すのでは遅い。先に買い手と条件を固め、貸主に「無断譲渡ではなく承諾済みの正規スキーム」として提示することが、スケルトン返し回避の分かれ目になります。

ケース別シミュレーション

実際の判断は、入居時の状態と特約の有無で決まります。代表的な3パターンを整理します。

入居時スケルトン・特約あり → スケルトン返し一択

入居時がスケルトンで、スケルトン返し特約もある場合、原状回復はスケルトン返しになります。

この場合は、解体費を見積もったうえで、居抜き譲渡で一部でも回収できないかを検討します。

入居時居抜き・特約なし → 居抜き渡し+造作譲渡を狙う

入居時に内装があり、スケルトン返し特約もない場合は、居抜き渡し+造作譲渡が最有力です。

貸主承諾と三者合意を固めれば、原状回復費を回避しつつ造作譲渡益を狙えます。

ビル建替え・用途変更で居抜き不可 → スケルトン返し+交渉

ビル建替えや用途変更で貸主が居抜きを認めない場合は、スケルトン返しになります。

この場合は、立ち退き料・原状回復費の負担割合などの補償交渉が論点になります。

よくある誤解Q&A

検索で多い疑問に、端的に答えます。

スケルトン返しにしないと原状回復にならない?

いいえ。原状回復は「受け取った時の状態に戻す」ことです。入居時に内装があれば、特約がない限りスケルトン化は原則不要です。

居抜き渡しにすれば原状回復はゼロになる?

条件付きでイエスです。貸主承諾と三者合意で原状回復義務を新借主へ移転できれば回避できますが、承諾がなければ旧借主に義務が残ります。

開業時にどの契約条件を押さえると出口で有利か?

原状回復条項(スケルトン返し特約の有無・範囲)と、入居時の状態の記録です。借りる時点で出口が決まります。

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まとめ:退去方法の選択が撤退コストを左右する

スケルトン渡しと居抜き渡しの要点を、最後に整理します。

第一に、原状回復は「受け取った時の状態に戻す」こと(民法621条)。スケルトン返しはその一形態で、入居時に内装があれば特約がない限りスケルトン化は原則不要です。

第二に、事業用は契約書がすべてです。スケルトン返し特約は有効ですが、通常損耗まで負わせるには具体的明記と明確な合意が要ります(最判平成17年12月16日)。

第三に、居抜き渡しは民法612条の貸主承諾が前提。貸主承諾と三者合意で義務を移転できれば、スケルトン費用を回避し造作譲渡益へ転換できます。退去方法の設計こそが、撤退コストと売却益を分けます。

NightMAの経営提言:
退去は「壊して返す」だけが選択肢ではありません。設計次第で、数百万円の解体費を、造作譲渡という収入に変えられます。nightmaは、ナイトレジャー・飲食店のM&A、居抜き(造作譲渡)、Web支援までを一気通貫で支援しています。スケルトン返しを迫られている、居抜きで高く渡したい――そんな方は、解約を通知する前に、一度ご相談ください。

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