譲渡と売却の違いは「有償か無償か」ではない|店舗で変わるのは債務・許認可・保証金

譲渡と売却の違いは有償か無償かではない。変わるのは債務と許認可。結果が変わるのは4点、店名を継ぐと債務は2年、株主総会が要るのは総資産の5分の1超(nightma)

店を手放すと決めたとき、足を止めるのは3つです。誰にも知られず売りたい。買い取り業者に買い叩かれないか。そもそも値段が付くのか。

そして業者ごとに「譲渡」「売却」「居抜き」と言葉が違う。同じ話をしているのか別の話なのかも分からない。

ですが2026年現在、ナイト・飲食の居抜きは買い手が途切れていません。言葉の正体さえ掴めば、静かに、高く売れます。

結論から申し上げます。譲渡と売却の違いは、辞書が言う「有償か無償か」ではありません。店舗の実務では、そこを知っても何ひとつ判断できないからです。

この記事では、ナイトビジネス専門のM&A仲介として契約書を扱ってきた立場から、株主総会・債務・許認可・保証金の4点で結果がどう変わるかを条文で整理します。店名を引き継ぐと前オーナーの債務を負う条文、バレずに高く売る手順まで解説します。

目次

【結論】違いは「有償か無償か」ではない|結果が変わるのは4点

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譲渡と売却で結果が変わる4点。株主総会の要否(会社法467条1項)、店名を継ぐと前オーナーの債務を負うこと(会社法22条・商法17条)、許認可の承継可否(食品衛生法56条)、保証金の帰属(民法622条の2第1項2号)(nightma)

辞書的な定義はこうです。譲渡は財産や権利を移す行為全般で有償・無償を問わず、売却は対価を受け取って譲り渡す有償取引。間違いではありません。

ただし、これを知っても自分の取引で何が起きるかは一切分かりません。店舗では次の4点で結果が変わります。

変わる点何が起きるか根拠nightmaの評価
株主総会法人の事業譲渡は決議が要る。物の売買なら不要会社法467条1項手続きの重さが段違い
債務店名を引き継ぐと前オーナーの債務を負う会社法22条/商法17条★最大の地雷。知らずに踏む
許認可事業譲渡なら承継、造作譲渡なら取り直し食品衛生法56条営業できない空白が出る
保証金賃借権を譲渡すれば売り手に戻る民法622条の2第1項2号手残りに直結

つまり問うべきは「譲渡と売却はどう違うか」ではない。「自分の取引は造作譲渡か、事業譲渡か、株式譲渡か」だ。ここが決まれば4点すべての答えが決まります。

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法律上、「売買」と「事業譲渡」は別の制度

言葉の印象ではなく、条文が別の場所にあります。ここを押さえると手続きの重さの違いが理解できます。

売買=財産権と代金の交換(民法555条)

民法第555条は売買をこう定めています。

「売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」

対象は財産権です。厨房機器、内装、什器。個々の物を売る取引であり、それ以上のものは動きません。

事業譲渡=株主総会の決議が要る(会社法467条1項)

一方、会社法第467条1項は、株式会社が次の行為をする場合、効力発生日の前日までに株主総会の決議によって契約の承認を受けなければならないと定めています。

  • 事業の全部の譲渡
  • 事業の重要な一部の譲渡(譲り渡す資産の帳簿価額が総資産額の5分の1を超えるもの。5分の1以下は除かれます)

厨房機器を売るだけなら決議は要りません。しかし「事業」を譲るなら、法人の意思決定そのものが必要になります。同じ店の同じ設備が動いても、何を譲るかで手続きの重さが変わる。

個人事業主には株主総会がないため、この条文は適用されません。ただし後述する債務の論点は、個人にも商法で同じ規律が及びます。

店舗の現場で「譲渡」は3つの別物を指す

店舗の譲渡は造作譲渡・事業譲渡・株式譲渡の3つで中身が違う。株主総会の要否、許認可が取り直しか承継か、簿外債務が及ぶか、保証金が売り手に戻るかが取引の形ごとに変わる(nightma)

ここが混乱の正体です。2026年現在、「店舗を譲渡する」という一言がまったく違う3つの取引を指しています。

M&Aの大手メディアは事業譲渡と株式譲渡の2択で書き、居抜き業者は造作譲渡だけを書く。3つを並べた記事がほとんど存在しないのが、混乱が続く理由だ。

項目造作譲渡(居抜き)事業譲渡株式譲渡nightmaの評価
譲る対象内装・設備・什器営業に必要な資産と契約会社の株式対象の広さが価格を決める
法人格移らない移らない同じ会社が存続株式譲渡は中身が丸ごと残る
株主総会不要必要(法人・一定規模)株主間の手続き日程に効く
許認可取り直し承継できるものがある名義人が変わらず有効★空白期間の有無
簿外債務原則及ばない契約で範囲を定める会社ごと引き継ぐ買い手の調査負担が違う
保証金売り手に返還売り手に返還会社が借主なら継続手残りに直結

自分がどれに当たるかは、契約書の表題ではなく何を引き渡す約束をしたかで決まります。造作譲渡の定義と含まれるものを確認したうえで、残り2つとの距離を測ってください。

【NightMA 専門家の視点】

相談の現場で最も多いのが、造作譲渡のつもりで事業譲渡の話が進んでいるケースです。顧客リスト、従業員、店名、SNSアカウント。設備以外のものを渡す約束をした時点で、取引の性格が変わります。

変わるのは言葉だけではない。株主総会、債務、許認可、保証金。4つすべてに波及する。契約書の表題を「造作譲渡契約書」にしておけば造作譲渡になる、というものではありません。

店名をそのまま使うと、前オーナーの債務を負う

店名を引き継ぐと前オーナーの債務を負う。会社法22条1項と商法17条1項により譲受人も弁済責任を負うが、遅滞なく責任を負わない旨を登記するか第三者へ通知すれば回避でき、売り手の責任は譲渡日後2年で消滅する(nightma)

買い手にとって最大の地雷がここだ。「同じ店名で続けたい」という最も自然な希望が、前オーナーの借金を引き受ける結果を招きます。

会社法第22条1項の条文です。

「事業を譲り受けた会社…が譲渡会社の商号を引き続き使用する場合には、その譲受会社も、譲渡会社の事業によって生じた債務を弁済する責任を負う」

個人事業主でも同じです。商法第17条1項が、営業を譲り受けた商人について同一の規律を置いています。

回避するには登記か通知が要る

責任を負わない方法は条文に書かれています。黙っていれば負う、という構造だ。

会社法第22条2項は、事業を譲り受けた後遅滞なく、譲受会社がその本店の所在地において債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合には適用しないと定めています。

登記をしない場合でも、譲受会社と譲渡会社から第三者へその旨を通知すれば、通知を受けた第三者については適用されません。

  • 前の店名(屋号・商号)を引き継ぐかを決めている
  • 引き継ぐなら、責任を負わない旨の登記または通知を手配した
  • 「遅滞なく」である以上、決済後に放置していない
  • 取引先・リース会社など通知すべき相手を洗い出した

売り手の責任は2年で消える

売り手側にも期限の定めがあります。会社法第22条3項は、譲受会社が債務を弁済する責任を負う場合、譲渡会社の責任は事業を譲渡した日後2年以内に請求または請求の予告をしない債権者に対しては、その期間を経過した時に消滅すると定めています。

商法第17条3項も同じ2年です。店を譲ってからの2年間は、過去の債務が追いかけてくる可能性が残る。この期間を見込んで資金を残しておくのが実務の作法です。

【提言】

店名は、売り手にとって資産であり、買い手にとって負債になり得ます。「せっかく常連がついているから店名は残したい」という交渉は毎回出ます。

そのときに登記または通知をセットで設計すれば、店名の価値を残したまま債務だけ切り離せます。知らずに店名だけ引き継ぐのが最悪の形だ。

許認可は引き継げるか|3つの取引で答えが違う

許認可は取引の形で扱いが変わります。ここを外すと、買った店で営業できない期間が生まれます。

飲食店営業許可については、食品衛生法第56条1項が、営業を譲渡したとき譲り受けた者は許可営業者の地位を承継すると定めています。届出は遅滞なく行います。

一方で造作譲渡では承継できません。条文が求める添付書類は「営業の譲渡が行われたことを証する書類」であり、設備の売買契約書では満たせないからです。

さらにナイト店舗では答えが反転します。風営法が承継を認めているのは相続(7条)・合併(7条の2)・分割(7条の3)の3つだけで、譲渡の規定が存在しません。

詳しい手続きと必要書類は飲食店営業許可は事業譲渡なら引き継げるで整理しています。接待や深夜酒類に該当する店舗は、必ず2つの法律を並べて確認してください。

設備以外は自動で移らない|従業員・賃貸借・顧客情報

「事業ごと譲る」と言っても、契約や人が勝手についてくるわけではありません。ここを前提にしないと、引き渡し直前に取引が止まります。

株式譲渡だけは例外です。法人格が変わらないため、会社が当事者になっている契約は原則としてそのまま続きます。

移すもの造作譲渡・事業譲渡での扱い詰まる場面nightmaの評価
従業員自動承継ではない。個別に雇用契約を結び直す主要スタッフが残らず価値が消える★先に意思確認。ただし開示の順序を誤らない
賃貸借契約賃借権の譲渡に賃貸人の承諾が要る貸主がナイト業態を認めない★最初に押さえる。ここが通らなければ全部止まる
顧客情報取得時の利用目的の範囲を超える提供は問題になり得る名簿をそのまま渡せない扱いを契約で明記する
リース物件所有権はリース会社。勝手に譲渡できない残債の一括請求事前にリース会社へ確認

順序が決まっています。賃貸人の承諾が取れるかを最初に確認し、そのあとでスキームを設計する。逆にすると、合意したあとで物件が使えないと分かります。

リース残債の扱いは居抜き・造作譲渡でリース品はどうするかで整理しています。

従業員への開示は、早すぎても遅すぎても壊れます。早く言えば動揺して辞め、遅く言えば不信を招く。

買い手が確定してから、引き継ぎ条件を提示できる状態で伝えるのが原則だ。だからこそノンネームでの打診が要ります。

店名を出さずに買い手を探せれば、従業員にも取引先にも知られないまま候補を集められます。

保証金は誰に戻るか

保証金は買い手に引き継がれません。売り手に返還され、買い手は自分の名義で新たに差し入れます。

民法第622条の2第1項2号が、賃貸人の返還義務が生じる場面として「賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき」を挙げているためです。

店舗の保証金は小さくありません。当社が2026年8月に集計した市場相場データベース372件では、賃料に対する月数の中央値は6か月でした。賃料50万円なら300万円が動きます。

償却で戻らない部分もあります。詳細は敷金と保証金に法律上の違いはないで解説しています。

「譲渡金」とは何を指すか|同じ言葉で2つの別物

現場で飛び交う「譲渡金」も、指すものが2つあります。混ぜて計算すると手残りを読み違えます。

呼ばれ方中身nightmaの評価
造作譲渡代金内装・設備・什器の対価居抜きで使われる。0円のこともある
事業譲渡の対価営業権を含む事業全体の対価利益が出ている店はこちらが伸びる

造作譲渡代金は0円になることがあります。それでも売り手が損とは限りません。原状回復費を免れるからだ。この構造は造作の無償譲渡(0円譲渡)で詳しく扱っています。

会計処理も別です。造作譲渡代金の仕訳の立て方と、事業譲渡の税金をあわせて確認してください。

手残りを比べる段階まで来たら、居抜き売却とM&Aの3択で実際の金額の組み方を確認できます。

どれを選ぶか|決めるのは言葉ではなく手残り

最後に選び方です。基準は1つしかありません。売り手の手に最終的にいくら残るかだ。

買い取り業者に売る前に|仲介との違い

ここを飛ばすと、手残りが削られたことにも気づけません。

買い取り業者は安く買って高く転売するのが事業です。提示額が早く出るのは、自分が買い手だからにすぎません。相見積もりは構造上生まれない。

nightmaは仲介です。複数の買い手候補を水面下で競わせて価格を引き上げます。店名を伏せたノンネームで打診するため、従業員や取引先に知られずに進行できます。

そして許認可・賃貸借・債務の切り分けは、提携する行政書士と連携して設計します。買い叩かれない状態を作ってから価格の話に入るのが仲介の仕事だ。

手残りを決める4項目

スキームごとに、手元に残る金額の内訳が変わります。合算して比べてください。

  • 譲渡代金(造作のみか、営業権を含むか)
  • 原状回復費(居抜きで渡せば消える)
  • 保証金の返還額(償却と控除を引いた後)
  • 残る責任(店名を引き継がせるなら2年の債務リスク)

【NightMA 専門家の視点】

同じ店でも、造作譲渡と事業譲渡で手残りが数百万円単位で変わります。設備だけ売れば早いが安い。事業ごと譲れば高いが、株主総会・債務・許認可の整理が要る。

そして時間を失うほど選べるスキームが減ります。解約予告を出した後では、事業譲渡を組む時間がもう残っていません。残るのは一番安い出口だけだ。

nightmaはM&A(事業譲渡・株式譲渡)・居抜き・造作譲渡の3つを扱っています。売ると決める前の「どの形ならいくらになるか」から比較できます。

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よくある質問

相談の現場で繰り返し聞かれる疑問を、条文にもとづいて整理します。

譲渡と売却はどちらを使えばよいですか

対外的な呼び方としてはどちらでも通じます。ただし契約の設計では、造作譲渡・事業譲渡・株式譲渡のどれかを特定してください。株主総会の要否、債務の承継、許認可の扱い、保証金の帰属がすべてここで決まります。

店を売った後に、過去の未払金を請求されることはありますか

あります。買い手が店名(商号)を引き続き使用する場合、会社法第22条1項・商法第17条1項により買い手も債務を弁済する責任を負います。

ただし売り手の責任が消えるわけではありません。同条3項により、売り手の責任は譲渡日後2年以内に請求または請求の予告がなければ消滅します。

店名を引き継がせたくない場合はどうすればよいですか

商号を引き継がなければ、会社法第22条1項の責任は生じません。引き継がせる場合は、買い手が遅滞なく責任を負わない旨を登記するか、売り手と買い手から第三者へ通知する方法があります(同条2項)。

造作譲渡でも株主総会の決議は必要ですか

設備という財産の売買であれば、会社法第467条1項が定める「事業の全部の譲渡」「事業の重要な一部の譲渡」には当たらないのが通常です。

ただし譲る範囲が広がって事業の譲渡と評価される場合は決議が必要になります。範囲の線引きは契約内容によるため、個別に確認してください。

譲渡金はいくらが相場ですか

造作譲渡代金と事業譲渡の対価は性質が違うため、ひとつの相場では示せません。造作は設備の年式と需給で決まり、0円になることもあります。

事業譲渡は利益水準が価格の土台になります。手残りで比べるには、原状回復費と保証金の返還額を同時に計算する必要があります。

従業員や賃貸借契約は自動的に引き継がれますか

自動では引き継がれません。事業譲渡では、雇用契約も賃貸借契約も個別の手続きが必要です。賃借権の譲渡には賃貸人の承諾が要ります。株式譲渡であれば法人格が変わらないため、会社が当事者の契約は原則として継続します。

まとめ|問うべきは「譲渡か売却か」ではない

2026年現在、店舗の出口を考えるときに確認すべき順序はこうです。

  • 自分の取引が造作譲渡・事業譲渡・株式譲渡のどれかを特定する
  • 法人で事業を譲るなら、株主総会の決議が要るかを確認する
  • 店名を引き継がせるなら、登記または通知を設計に入れる
  • 許認可が承継できる形か、取り直しかを所轄に確認する
  • 保証金の返還額と原状回復費を手残りに算入する
  • 解約予告を出す前に、取れるスキームを比較する

辞書の定義は「譲渡は無償も含む、売却は有償」で終わります。しかし店舗では、その一行で決まることは何もない。決まるのは、何を譲るかを特定したあとだ。

NightMAの経営提言:

言葉を揃えることは、交渉の第一手だ。買い手も業者も、それぞれの都合で「譲渡」「売却」を使い分けてきます。こちらが4点の違いを把握していれば、議論は条文の上で進みます。

そして順番を間違えないでください。価格から考え始めると、時間を使い切ってから一番安い出口に着地します。時間 → スキーム → 価格。この順です。

nightmaは飲食店・ナイト店舗のM&A(事業譲渡・株式譲渡)、居抜き、造作譲渡を扱い、許認可の承継は提携の行政書士と連携します。売ると決める前の段階からご相談ください。

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