「貸主に黙って造作譲渡を進めて大丈夫ですか?」 「解約予告を出した後で買い手を探そうと思っているのですが、危険ですか?」 「契約書に『造作譲渡禁止』と書かれているのですが、もう諦めるしかないですか?」
このように感じている方は、少なくありません。
結論から申し上げます。造作譲渡は売主・買主の2者だけで完結する取引ではなく、貸主を加えた『3者調整案件』です。貸主承諾なしで進めれば、賃貸借契約の解除や明渡し請求を招く高リスク行為になります。一方で、最高裁・東京地裁の判例実務を読み解くと、「無断=自動的に解除」ではなく、信頼関係破壊の有無で結論が分かれます。つまり、正しい順番と書面化を踏めば、承諾は通せます。
さらにナイトレジャー業界では、造作が引き継げても風営法許可は自動承継されません。これは、税理士・行政書士・不動産仲介の解説では拾われない、M&A仲介の現場でしか掴めない重要論点です。
ナイトレジャー業界に特化したM&A仲介として、年間多数の店舗売買・居抜き(居ぬき)・造作譲渡に関わってきたnightmaが、本記事では以下を解説します。
- 貸主承諾なしで進めるリスクの判例実務(信頼関係破壊の評価軸)
- 貸主が承諾しない5つの主な理由と、承諾を通す正しい5ステップ
- 業態別の造作譲渡相場(取引価格・査定額)と査定方法
- 貸主承諾書面の必須記載事項(実務テンプレ付き)
- ナイトレジャー業種で特に注意すべき許認可承継リスク
- DDで発覚しやすい所有権・撤去義務トラブルの実例
読み終えたとき、自店の造作譲渡を「いつ・誰に・どう切り出せば破談しないか」が明確に見えている状態になります。
1. 結論|造作譲渡は「3者調整案件」、貸主承諾なしには成立しない

造作譲渡を「売主と買主の2者の話」と思っている経営者が、現場で最も多い失敗パターンに陥ります。**造作譲渡は本質的に、売主・買主・貸主の3者を同時に動かさなければ完結しない「契約調整案件」**です。承諾を取らずに進めれば、契約解除・明渡し請求・損害賠償の地雷原に踏み込みます。逆に、正しい順番と書面化を踏めば、原状回復費を最大数百万円圧縮しながらクリーンに撤退できます。
売主・買主・貸主の3者調整が必須
通常の物品売買と違い、造作譲渡では「物(造作)の譲渡」と「場所(物件)の使用権」が一体となって動きます。そのため、貸主の同意がなければ、買主は譲り受けた造作を物理的に使えません。「造作を売る権利」と「物件を使い続ける権利」は別物——この認識が出発点です。
承諾なしで進めるとどうなるか
| 状態 | 売主のリスク | 買主のリスク | 貸主の反応 |
|---|---|---|---|
| 事前承諾あり | 原状回復免除・敷金返還 | 新契約締結・営業開始 | 業態・後継者を選別可能 |
| 事後報告 | 信頼関係破壊認定リスク | 入居拒否リスク | 心証悪化・条件厳格化 |
| 無断進行 | 契約解除・損害賠償 | 明渡し請求・退去 | 法的措置の検討対象 |
承諾を取れば、原状回復費を最大数百万円圧縮できる
公開事例では、渋谷区の飲食店で原状回復費が約700万円(スケルトン戻し380万円・厨房撤去120万円・ダクト撤去80万円・床下配管60万円・廃棄60万円)発生したケースが報告されています。造作譲渡で後継借主が入れば、この多くを免除できます。「貸主承諾」という1枚の書面が、数百万円の差を生む——これが現場の現実です。
2. 造作譲渡とは何か|居抜き(内装・設備承継)売却・原状回復との違い
造作譲渡という言葉は実務でよく使われますが、定義が曖昧なまま進めて揉めるケースが多発しています。まず「造作譲渡」「居抜き売却」「原状回復」の3つの違いを正確に押さえてください。
造作譲渡の定義(内装・什器・設備の所有権移転)
造作譲渡とは、店舗内の内装・設備・什器・備品の所有権を、退去する借主から後継の借主へ移転する取引です。譲渡対象は「動かせない造作(内装・電気・空調・給排水)」と「動かせる什器・備品」の両方を含みます。譲渡対価は数十万円〜数千万円まで、業態と設備規模で大きく開きます。
居抜き売却との違い
「居抜き売却」は、造作譲渡+営業権譲渡(顧客・スタッフ・屋号・運営ノウハウ)の総称として使われることが多い言葉です。造作のみの譲渡なら数十万〜数百万円、営業権を含む居抜き売却なら数百万〜数千万円が相場帯です。詳しくは居抜き売却完全ガイドで解説しています。
原状回復義務との関係
通常、賃借人は退去時に「原状回復義務」を負います。スケルトン戻し(内装解体)、設備撤去、廃棄処理を全て自己負担で行う義務です。造作譲渡が成立すれば、この原状回復義務を後継借主が引き継ぐ形で旧借主が免除されるのが基本構造です。これが造作譲渡最大の経済的メリットです。
事業譲渡・M&Aとの関係
造作譲渡は「物の譲渡」ですが、これに営業権・顧客リスト・スタッフ雇用関係を加えると「事業譲渡」になります。事業譲渡には税金面の論点(消費税・法人税)が別途発生するため、スキーム選択は税務影響も含めて判断する必要があります。
3. なぜ貸主承諾が必要なのか|法的根拠と判例実務

ここからが本記事の法的核心です。貸主承諾なしの造作譲渡が「即解除」になるわけではない——この判例実務を正確に理解することが、安全に取引を進める出発点です。
賃貸借契約に「造作譲渡」の明示規定がない理由
ほとんどの賃貸借契約書には「造作譲渡」を直接禁止する条項はありません。なぜなら、造作譲渡は「賃借権の譲渡」「無断転貸」「無断工事」「用途変更」といった複数の禁止条項に間接的に抵触するからです。「契約書に書いていない」≠「自由にやっていい」——この誤解が破談の出発点になります。
民法612条と「信頼関係破壊の理論」
民法612条は無断譲渡・無断転貸を解除原因として規定していますが、最高裁判例は「形式的な無断譲渡だけでは解除に至らず、賃貸人との信頼関係が破壊された場合に初めて解除が認められる」と整理しています(信頼関係破壊の理論)。
判例実例|信頼関係破壊の有無で結論が分かれる
| 事件 | 裁判所・年月日 | 概要 | 判旨 |
|---|---|---|---|
| 寿司店無断譲渡 | 東京地裁 平成4年7月29日 | 寿司店営業の賃借権が無断譲渡。譲受人が親族で営業内容・賃料支払に変化なし | 解除否定(信頼関係破壊なし) |
| 民泊無断転用 | 東京地裁 平成31年4月25日 | 住居目的の借家を承諾なく民泊利用 | 解除認容(用途違反が信頼関係破壊) |
| コインランドリー無断工事 | 東京地裁 令和4年3月31日 | 借主が無断で排気口設置工事+近隣被害放置 | 解除認容(無断工事+近隣対応不備) |
| 無断内装変更 | 東京地裁 平成22年5月13日 | 店舗借主が貸主に無断で外壁塗装・内装工事 | 解除認容 |
信頼関係破壊の判断要素
判例から抽出される評価軸は以下6つです。
- 譲受人や転借人の属性(信用・業態・経営能力)
- 賃料不払・滞納の有無
- 用途・業態の変化(バー→風俗・物販→飲食等)
- 近隣への悪影響(騒音・臭気・客層)
- 貸主にとっての不利益の大きさ
- 事前説明・誠実な交渉の有無
つまり、承諾の「有無」だけでなく、貸主にとって誰が・どんな業態で・どの程度のリスクを持ち込むかが評価軸です。
【NightMA 専門家の視点】 「無断で進めても、信頼関係破壊が認定されなければ大丈夫」と楽観するのは危険です。判例実務上、店舗・業務用賃貸借では、住居用より信頼関係破壊が認定されやすい傾向にあります。特にナイトレジャー業態は近隣クレーム・営業時間・客層といった摩擦要因が多く、貸主側に「リスクが上がった」と評価されると即解除に進みます。例外を期待せず、最初から正面突破(事前承諾)で進めるのが鉄則です。
4. 貸主が承諾しない5つの主な理由
承諾が下りない店舗には、典型パターンがあります。これらを事前に潰しておくことが、承諾交渉の勝率を大きく上げます。
理由①|家賃滞納・関係悪化
過去に家賃滞納歴があり、貸主との関係が冷え切っている店舗は、承諾交渉の入口で警戒されます。滞納履歴は貸主から見て「次の借主との関係悪化リスクを引き継ぎたくない」シグナルです。
理由②|次の入居者で業態を変えたい
貸主が「次は飲食ではなく物販で貸したい」「重飲食を入れたくない」と考えているケース。この場合、後継借主の業態が貸主の希望と合わなければ、造作譲渡自体を断られます(業態別の開業(起業・創業)要件はバー開業の完全ガイドも参考になります)。
理由③|給排水・ダクト・電気容量・防火設備の確認
貸主側で「次のテナント受入れ前に設備を確認したい・更新したい」という意向があるケース。特に長期入居後の物件では、貸主は次回更新時に設備リフレッシュを希望することが多いです。
理由④|建替え・再開発・自社利用の予定
ビル全体の建替え・大規模改修・自社利用が計画されているケース。この場合は造作譲渡以前に、新規賃貸借契約自体が成立しません。
理由⑤|後継借主の信用・業態に懸念
買い手候補の財務基盤、過去の運営履歴、業態、信用情報が不十分なケース。特に新設法人・個人事業主・ナイト業種は、貸主からの審査が厳格化されやすいです。
5. 承諾を通す正しい5ステップ

ここが本記事の最重要セクションです。順番を間違えると、どれだけ準備しても破談します。承諾を通すための5ステップを、実務に乗る順序で示します。
ステップ1|賃貸借契約書の確認(特約の有無・解約予告期間)
最初にやるべきは、自社の賃貸借契約書の精読です。
- 「造作譲渡禁止」「無断譲渡禁止」「無断転貸禁止」特約の有無
- 業態変更条項(飲食限定・夜営業禁止等)
- 解約予告期間(通常3〜6ヶ月)
- 原状回復条項の範囲
- 造作買取請求権の排除特約(借地借家法33条関連)
借地借家法33条の造作買取請求権は、現行法上、排除特約は有効です。さらに、無断設置や特殊目的設備は対象外で、最高裁判例(昭和29年7月22日)は造作代金不払を理由とした明渡し拒絶も否定しています。造作買取請求権を最後の切り札と考えるのは危険です。
ステップ2|貸主・管理会社へ事前相談(解約予告より先に)
ここが最大の鉄則です。解約予告より先に、貸主への相談を済ませること。順番を逆にした瞬間に、退路を断った状態で交渉に入る自殺行為になります。
管理会社経由の場合、注意点があります。
- 管理会社は「連絡窓口」なのか「代理権限を持つのか」を確認
- 管理会社の「OK」だけでは不十分。貸主本人の書面承諾が必須
- 元付業者・仲介業者の役割分担を整理
ステップ3|承諾条件の確認
貸主が示してくる典型条件は次の通りです。
- 後継借主の業態・営業時間の制限
- 家賃据置 or 値上げ
- 敷金・保証金の引継ぎ or 新規預託
- 保証会社・連帯保証人の変更
- 工事承諾の条件
- 原状回復義務の引継ぎ範囲
ステップ4|買い手候補の審査資料準備
貸主に提示すべき後継借主の資料は以下です。
- 法人登記簿謄本 or 個人の身分証
- 直近2〜3期の決算書
- 営業計画書(業態・営業時間・想定売上)
- 連帯保証人 or 保証会社の確認書
- 過去の店舗運営実績
- 風営法該当業種なら許認可の取得見通し
ステップ5|造作譲渡契約と賃貸借契約の同時調印
最終局面では、「造作譲渡契約」「新規賃貸借契約」「貸主承諾書」の3点を同時に成立させます。一つでも欠ければ、他の2つも白紙にする「停止条件付き契約」として組むのが安全策です。
貸主承諾書面の必須記載事項
実務で使える承諾書面のテンプレ要素は次の12項目です。
1. 件名:造作譲渡および残置使用に関する承諾書
2. 当事者表示(貸主・現借主・後継借主)
3. 物件表示(所在地・面積・契約日)
4. 承諾内容(造作譲渡を承諾する旨の文言)
5. 条件(新規賃貸借契約成立を停止条件とする旨)
6. 対象物(別紙目録で明示)
7. 対象外(リース品・貸主所有物・撤去要設備)
8. 原状回復義務の承継範囲
9. 敷金・保証金の処理
10. 保証・保険(保証会社・連帯保証人・火災保険)
11. 引渡し(鍵引渡日・残代金支払日・立会日)
12. 不成立時の白紙解除条項
「貸主の口頭OK」では絶対に進めないことが、後の紛争を防ぐ最大の防壁です。
6. 解約予告のタイミング|先に出すと破談する理由
ここで実務上最も多い失敗パターンを警告します。解約予告を貸主交渉より先に出すのは、退路を断った状態で交渉に入る自殺行為です。
解約予告を先に出すリスク
解約予告を先に出してしまうと、以下が発生します。
- 貸主は「どうせ出ていく相手」と判断し、承諾交渉で譲歩しなくなる
- 解約予告期間(3〜6ヶ月)以内に買い手が決まらなければ、原状回復確定
- 「解約予告は撤回不可」と扱われると、後戻りできない
- 買い手候補の交渉でも足元を見られる
貸主交渉が先・解約予告が後の鉄則
正しい順番は次の通りです。
- 貸主への事前相談(承諾の見通し確認)
- 買い手候補の探索・絞り込み
- 貸主による後継借主の審査
- 承諾の正式取り付け(書面化前提で)
- 承諾の見通しが立ってから解約予告
解約予告期間との重ね方
通常、店舗賃貸借の解約予告期間は3〜6ヶ月。造作譲渡準備にも同程度の期間が必要です。承諾の見通しが立った時点で解約予告を出し、解約予告期間中に買い手選定・契約調印を完了させるスケジュールが理想です。
「解約予告を撤回できるか」の論点
解約予告を出した後に撤回したい場合、貸主の同意が必要です。貸主が「次の借主を探し始めている」状態だと撤回が認められないケースもあり、原則として「予告したら戻れない」と考えるべきです。
7. 造作譲渡で揉めやすいポイント|譲渡対象・リース品・契約不適合責任
承諾が取れた後も、譲渡対象の認識違いで揉めるケースが頻発します。「一式」表記は禁物——個別リスト化と所有権確認が必須です。
譲渡対象の明確化(造作・什器・備品・無形資産)
譲渡対象は次のように分類し、別紙目録で個別記載します。
- 造作系:内装・空調・電気・給排水・看板
- 什器・備品系:ソファ・テーブル・POS・厨房機器・音響
- 無形資産:屋号・電話番号・SNS・顧客リスト
譲渡対象外(リース品・残債・所有権の確認)
譲渡できない可能性が高いものは次の通りです。
- リース品(厨房機器・POS・音響機材等のリース契約)
- 割賦払い残債のある設備
- 貸主所有設備(業務用エアコン本体・給湯器・排気ダクト等)
- 法令上撤去を要する設備
「自社所有と思っていたら実はリース品だった」事故が現場で最も多い——購入時の領収書・契約書・リース契約書を必ず突合してください。
看板・ダクト・空調・給排水の扱い
これらは特に揉めやすい設備です。
| 設備 | 所有権の典型分布 | 注意点 |
|---|---|---|
| 内装・什器 | 借主所有が基本 | 写真台帳で個別記録 |
| 看板(面板) | 借主所有 | フレームは貸主側のことあり |
| 業務用エアコン室内機 | 借主所有が多い | 室外機置場は貸主管理 |
| 排気ダクト | 共用部接続なら貸主管理 | 無断改修不可 |
| 給湯器・グリストラップ | 貸主所有が多い | 故障時の負担区分要確認 |
| 給排水配管(床下) | 共用部分は貸主管理 | 改修は承諾必須 |
原状回復義務の引継ぎ
「貸主承諾を取れば、旧借主の原状回復義務は完全免除される」と思っている方が多いですが、承諾書面に明記しなければ免除されません。「全部免除」「一部免除(◯◯工事は旧借主負担)」を必ず書面で確定してください。
契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)
造作譲渡後、買主が「設備が動かない」「想定と違う」とクレームするケース。契約書に契約不適合責任の範囲・期間を明記しないと、譲渡後のトラブル対応で揉めます。通常は引渡し後3ヶ月程度を限定的に設定するのが実務です。
【NightMA 専門家の視点】 公開事例では、譲渡金200万円の案件でリース品混入や所有権不明により価値が実質ゼロ化したケースが報告されています。譲渡対象表を「一式」で済ませず、写真・型番・年式・所有権区分まで個別リスト化する——この手間を惜しんだ瞬間に、数百万円の損失が確定します。
8. 貸主承諾が下りやすい店舗の3つの特徴
承諾交渉で有利に立てる店舗には、共通点があります。これは出口戦略を意識した日常運営の重要性を示しています。
滞納なし・クレームなし・修繕履歴明確
家賃滞納ゼロ、近隣クレームなし、設備修繕履歴が記録されている店舗は、貸主から「優良テナント」として認識されます。「優良テナントが推薦する後継者」は、貸主から見て無視できない説得力を持ちます。
業態制限に適合する後継借主が確保できている
「具体的な後継借主の候補があり、業態が貸主の希望と合っている」状態を作れていると、承諾はほぼ確定的に進みます。逆に「候補がいない状態で承諾だけ先に取りたい」というアプローチは、貸主から見て不安要素になります。
承諾書面に「後継借主の信用情報・営業計画」を添付
書面提出時に、後継借主の決算書・営業計画書・連帯保証情報を添付することで、貸主の審査負担を下げます。「貸主に判断材料を揃えて差し出す」姿勢が、承諾速度を大幅に上げる実務テクニックです。
造作が引き継げても、風営法許可は事業譲渡で承継できません。許可の判定・申請・承継の全体像は、こちらで詳しく解説しています。

9. 【NightMA独自】ナイトレジャー業界における造作譲渡の特有論点
ここからがM&A仲介の現場でしか書けない、ナイトレジャー業界の差別化セクションです。「造作が引き継げても、風営法許可は自動承継されない」——これが最大の論点です。
「造作が引き継げても、風営法許可は自動承継されない」が大前提
風営法上、許可承継が認められるのは相続・合併・分割の3つのみ。通常の造作譲渡では風営法許可は引き継げず、買い手は新規申請が必要になります。標準処理期間は55日。この期間は営業できません。詳しくは風営法許可とは|判定基準と居抜きM&Aの実務で解説しています。
キャバクラ・ホストクラブ・ガールズバー・コンカフェの許可種別差
業態によって必要な許可・届出が大きく異なります。
| 業態 | 必要な許可・届出 | 造作譲渡時の論点 |
|---|---|---|
| キャバクラ・ホストクラブ | 風俗営業1号許可 | 買い手側で新規申請(55日待ち) |
| スナック・ラウンジ | 接待実態次第で1号許可 | 同上 |
| ガールズバー・コンカフェ | 実態次第で1号許可or深酒届 | 接待実態の整理が必須(ガールズバー開業マニュアル / コンカフェ開業の裏側) |
| バー(接待なし) | 深夜酒類提供飲食店届出 | 届出も新規必要 |
| ライブハウス・DJバー | 特定遊興飲食店営業許可 | 同上 |
深夜酒類提供届出だけで足りるケースと足りないケース
「届出だけで運営している店舗が、実は接待実態あり」というケースが、2025年改正後の摘発対象になっています。造作譲渡時に買い手が同じ運営を続けると、買い手側が摘発対象になるリスクがあります。
接待実態と届出のミスマッチ問題(2025年改正後の摘発リスク)
2025年6月の改正風営法施行後、警視庁は歌舞伎町ガールズバーで改正法を全国初適用、7月には都内4法人を初の書類送検しました。「届出だけで接待していた」店舗は、買い手にとって地雷です。DDで運営実態を必ず確認してください。詳しくは風営法に基づく許可の承継とM&Aも参照ください。
【NightMA 専門家の視点】 ナイトレジャー業界の造作譲渡で本当に難しいのは、貸主承諾ではなく**「貸主承諾+風営法許可再取得+接待実態の整理」の3点同時クリア**です。どれか1つでも欠ければ、買い手は営業できません。M&A仲介として現場で最も多いのは、「貸主承諾は取れたが、買い手の風営法許可が下りず、譲渡契約が宙に浮く」パターンです。これを防ぐには、買い手選定段階で許認可取得の見通しを必ず確認してください。
10. 【NightMA独自】居抜き買収・造作譲渡が新規開業より有利な4つの理由
造作譲渡の貸主承諾は手間に見えますが、買い手にとっての経済的メリットは新規開業を圧倒します。売り手として「買い手が見つかる理由」を理解しておくと、価格交渉でも優位に立てます。
開業期間の短縮
新規開業:物件選定〜開業まで4〜12ヶ月。居抜き買収(取得・事業譲受):1〜3ヶ月+許可待ち55日。バーの試算では、回収期間がスケルトン開業約29ヶ月に対し、居抜きなら約14ヶ月——15ヶ月の差は、買い手にとって決定的な数字です。
内装コスト圧縮
業態別の造作譲渡相場:
| 業態 | 中央総額帯 | 中央坪単価 |
|---|---|---|
| バー・ショットバー | 180万円 | 12万円 |
| スナック・ラウンジ | 220万円 | 11万円 |
| キャバクラ・クラブ | 800万円 | 16万円 |
| ホストクラブ | 1,000万円 | 16万円 |
| ガールズバー・コンカフェ | 250万円 | 13万円 |
| 一般飲食店(居酒屋) | 300万円 | 15万円 |
新規開業で同等店を作る費用と比較し、500〜1,500万円のコスト圧縮が見込めます。
スタッフ・オペレーションの引継ぎ余地
採用難の2026年において、スタッフ・キャストの引継ぎは時間的にも経済的にも極めて大きな価値です。
立地実績の可視化
既存売上データから、買い手の事業計画が立てやすい——これも新規開業にはない優位性です。
詳しい売却プロセスは店舗売却完全ガイドも参考にしてください。
11. 【NightMA独自】DDで発覚しやすい法的・経営的リスク

買い手・売り手双方が知っておくべき、造作譲渡DDの頻出リスクです。「何があるか」ではなく「誰のものか・譲渡できるか・残すと誰が責任を負うか」の3軸で全設備を洗う——これが現場の鉄則です。
無許可営業・用途違反(風営法・建築基準法・消防法)
接待実態と届出のミスマッチ、用途地域違反、保全対象施設違反は、買収後の摘発・是正命令リスクとして残存します。
ダクト・看板・電気容量・消防設備の規制違反
公開事例では渋谷の飲食店退去時に原状回復700万円(スケルトン戻し380万・厨房撤去120万・ダクト撤去80万・床下配管60万・廃棄60万)が発生したケースが報告されています。「残せると思っていた設備が実は撤去義務あり」が最大の損失源です。
リース物件・残債・所有権の混同
頻出パターン:
| パターン | 内容 | 影響 |
|---|---|---|
| 厨房機器リース | 冷蔵庫・製氷機が「自社所有」と誤認 | リース会社引揚げ・残債請求 |
| POS・防犯カメラ | サブスク・リース契約継続中 | 使用停止・再契約費 |
| 音響・照明・DJブース | 分割払い残債あり | 持出し・故障対応劣化 |
| カラオケ機材 | 通信契約+機器レンタル一体 | 名義変更不能・営業停止 |
名義貸し・反社条項違反・賃貸借契約違反
許可名義人と実質経営者がズレている、賃貸借契約の業態制限違反、反社条項違反は、買い手にとって致命的な簿外リスクです(風営法の名義変更が事業譲渡で進まない実務も参照)。詳しくは名義貸しの全リスクを解説、賃貸借契約と店舗譲渡の完全ガイドを参照ください。
【提言】 DDの3軸チェックを契約締結前に必ず実施してください。
- 誰のものか:購入品・貸主設備・リース品・私物の4区分で一覧化
- 譲渡できるか:リース契約・名義変更・貸主承諾の確認
- 残すと誰が責任を負うか:撤去義務・原状回復・将来修繕の分担
M&A・居抜き買収・造作譲渡のいずれを選ぶ場合も、このDDだけは省略してはいけません。
12. よくある質問
Q. 貸主承諾は口頭でも有効ですか?
A. 法的には口頭承諾も意思表示の合致があれば一定の効力を持つ可能性がありますが、実務では極めて危険です。何を承諾したのかを後で立証できず、管理会社担当者の発言が貸主本人の最終意思か不明なケースも多いため、必ず貸主本人または正式代理権限者の署名押印済み書面で取得してください。
Q. 「造作譲渡不可」特約があっても交渉できますか?
A. 交渉は可能です。貸主は事後承諾や個別同意を出す余地があります。ただし「特約があるが承諾された」ことを後で立証するためにも、書面化は絶対必須です。
Q. 解約予告と貸主相談はどちらが先ですか?
A. 必ず貸主相談が先です。解約予告を先に出すと、貸主に「どうせ出ていく相手」と判断され、承諾交渉で譲歩されなくなります。退路を断った状態で交渉に入る自殺行為になります。
Q. 造作代は誰に払いますか?
A. 後継借主から退去する旧借主に支払うのが原則です。貸主は造作代の授受には介在しません。ただし敷金・保証金の精算(旧借主への返還・新借主の新規預託)は貸主が関わります。
Q. キャバクラやバーは居抜きでそのまま営業できますか?
A. 造作は引き継げますが、風営法許可・深夜酒類提供届出は新規申請が必要です。買い手側で標準55日の許可待ち期間が発生し、その間は営業できません。
Q. リース品や看板も譲渡対象にできますか?
A. リース品はリース会社の承諾なく譲渡できません。残債一括精算・買取・名義変更・返却のいずれかで処理する必要があります。看板は所有権の分布(フレーム・面板・電源)を確認した上で個別に決めます。
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六本木では造作譲渡の実勢価格が0〜300万円台と幅広く、貸主承諾の取得難易度も高い領域です。六本木バー開業の完全ガイドでは造作譲渡・居抜き・M&A・新規開業の4択比較とv3.0査定計算例まで解説しています。

13. まとめ|造作譲渡は「貸主承諾→譲渡契約→許認可承継」の3段階で考える
ここまでお読みいただいた方には、造作譲渡が単なる「設備の売買」ではなく、貸主・許認可・契約の3つを同時に動かす契約調整案件であることが伝わったはずです。
失敗しないための3段階チェックリスト
段階1:貸主承諾
- 賃貸借契約書の精読(特約・期間・条項確認)
- 貸主・管理会社への事前相談(解約予告より先に)
- 承諾条件の合意・書面化
段階2:譲渡契約
- 譲渡対象の個別リスト化(写真・型番・年式)
- リース品・貸主設備の除外確認
- 原状回復義務の引継ぎ範囲明記
- 契約不適合責任の範囲・期間限定
段階3:許認可承継(ナイト業種)
- 風営法許可の新規申請見通し確認
- 接待実態と届出種別のミスマッチ解消
- 営業空白期間(55日)の資金繰り設計
M&A・居抜き買収・造作譲渡の3つの選択肢
nightmaは、ナイトレジャー業界に特化してM&A(事業譲渡・株式譲渡)・居抜き売買・造作譲渡の3サービスを提供しています。読者の状況に応じて最適な手法は異なります。
- 法人ごと売却したい・許可も承継したい → 株式譲渡M&A
- 物件・内装込みで早期売却・取得したい → 居抜き売買
- スピード重視で内装・什器のみを譲渡・取得したい → 造作譲渡
NightMAに相談するメリット
業界10年以上の知見、提携税理士・行政書士ネットワーク、2025年改正後の許認可動向の把握、DD専門チーム——どの局面でも、「自己流で動いて爆弾を抱える」前にプロの目を入れることが、最終的な手取りを最大化する道です。
NightMAの経営提言: 「貸主に話す前に、買い手を探す」「解約予告を出してから、承諾を取る」——この順番を逆にした瞬間に、造作譲渡は破談します。**正しい順番は『契約書確認→貸主相談→買い手選定→承諾書面化→解約予告→譲渡契約調印』**です。M&A仲介として現場で多数の取引を見てきたnightmaは、この順番を一気通貫で設計します。レッドゾーンに足を踏み入れる前に、まずは現状を聞かせてください。
