風営法の従業者名簿とは?第36条の記載事項・保存期間3年・第36条の2との違いを完全解説【2026年最新】

「従業者名簿には、結局なにを書けばいいのか」

「身分証のコピーは要るのか。年齢確認の記録とは別に作るのか。退職した人の名簿はいつまで持っておくのか」

このように、名簿の中身と扱いが分からず不安を抱える方は少なくありません。

結論から申し上げます。風営法の従業者名簿は第36条が根拠で、接客従業者の確認記録(第36条の2)とは別の制度です。この2つを混同したまま運用している店が、立入検査で指摘を受けます。

そして2026年現在、名簿の不備は他の違反と重なると一気に行政処分のリスクに化けます。さらに、M&Aで店を売るときも、名簿の整備状況は買い手のデューデリジェンスで必ず見られます。

この記事では、ナイト業界専門のM&A仲介として許可と運営の実態を見てきた立場から、第36条の備付け義務・記載事項・保存期間・第36条の2との違い・身分証の扱い・罰則・採用フローまでを、条文と行政処分基準をベースに一気通貫で解説します。

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目次

まず結論|従業者名簿(第36条)と確認記録(第36条の2)は別物

風営法の従業者名簿は第36条で業務に従事する者全員が対象 罰則第53条第3号量定D 確認記録は第36条の2で接客従業者のみ対象 罰則第53条第4号第5号量定D 別制度で両方を整備

風営法の帳簿義務で最初に押さえるべきは、「従業者名簿」と「確認記録」が別の制度だという事実です。ここを混同すると、何を作ればいいのかが分からなくなります。

ざっくり言えば、第36条は「働く人の名簿そのもの」、第36条の2は「接客従業者の年齢を確認し、その記録を残すこと」です。根拠条文も、行政処分上の扱いも分かれています。

まずは2つの違いを一覧で押さえてください。

論点従業者名簿確認記録
根拠条文第36条第36条の2(第1項・第2項)
対象営業所ごとに、業務に従事する者全員の名簿接客従業者の生年月日等の確認とその記録
中身氏名・住所・生年月日・採用退職・従事業務など確認した事項・確認方法・確認年月日など
罰則条文第53条第3号第36条の2第1項=第53条第4号/第2項=第53条第5号
行政処分の量定DD
nightmaの評価全従業者対象。立入の基本確認項目接客従業者に限る。年齢確認と一体で運用
このように、名簿と確認記録は別建てです。次の章から、まず第36条の従業者名簿を詳しく見ていきます。接客従業者の年齢確認そのものは「風営法の年齢確認」で解説しています。

従業者名簿とは|第36条の備付け義務と対象営業

従業者名簿の根拠は、風営法第36条です。営業者は、営業所ごとに従業者名簿を備え、その営業の業務に従事する者の氏名・住所その他の事項を記載しなければなりません。

ここで重要なのは、名簿の対象になる営業が広いことです。風俗営業だけの話ではありません。

第36条の対象には、風俗営業に加えて、店舗型・無店舗型の性風俗特殊営業、店舗型・無店舗型の電話異性紹介営業、特定遊興飲食店営業、酒類提供飲食店営業、そして深夜において飲食店営業を営む者まで含まれる体系で整理されています。

つまり、許可を取っているキャバクラやクラブだけでなく、届出で営業する深夜バー・スナック・深夜酒類提供飲食店も、従業者名簿の備付け義務の対象です。「うちは届出だけだから関係ない」は通用しません。深夜酒類提供飲食店については「深夜酒類提供飲食店営業の届出」もあわせて確認してください。

名簿に書く事項

風営法の従業者名簿に書く事項 施行規則 氏名 住所 性別 生年月日 採用年月日 退職年月日 従事する業務の内容 本籍は2014年改正で除外 退職した日から3年保存 営業所ごとに備付け 自由様式

従業者名簿に何を書くかは、風営法施行規則で定められています。法第36条が「その他内閣府令で定める事項」と委ねており、その具体的な中身が施行規則に置かれている構造です。

実務で名簿に記載される基本項目を、まず押さえてください。

基本の記載事項

現行の実務で従業者名簿に記載される基本項目は、次のとおりです。これらは施行規則で定められた事項として、各行政書士の実務解説でも一致しています。

  • 氏名
  • 住所
  • 性別
  • 生年月日
  • 採用年月日
  • 退職年月日
  • 従事する業務の内容
これらを、働く人ごとに記載します。アルバイトや体験入店であっても、業務に従事する以上は名簿の対象に含めて管理するのが安全です。

本籍・国籍はどう扱うか

ここは誤解が多い点です。かつては本籍(日本国籍を有しない者は国籍)も名簿の記載事項とされていましたが、2014年の改正で、従業者名簿の記載事項からは外れたと実務上整理されています。

一方で、接客従業者については、生年月日・国籍・在留資格などを書類で確認する義務が第36条の2にあります。つまり、国籍や在留資格は「名簿に必ず書く事項」というより、「接客従業者について確認する事項」の側で扱われる、という整理です。

この区別が、競合記事の多くで曖昧になっています。名簿(第36条)と確認(第36条の2)を分けて理解することが、正しい運用の出発点です。

様式は自由か

従業者名簿に、決まった法定様式があるとまでは確認できません。実務上は、必要な記載事項を満たしていれば、自由な様式やテンプレートで運用されています。

重要なのは、様式の体裁よりも、記載事項がもれなく埋まっていることです。立入検査で見られるのは、書式の美しさではなく、必要事項が記載され、最新の状態に保たれているかです。

保存期間と備付け場所|退職から3年・営業所ごと

従業者名簿は、作って終わりではありません。一定期間の保存義務があります。

保存期間は、実務上、従業者が退職した日から3年とされています。起算点は名簿を作った日ではなく、その従業者が退職した日です。解雇や死亡によって退職した場合も含めて、退職した日から3年間は保存します。

備付け場所は、営業所ごとです。複数店舗を運営している場合、本部でまとめて管理するだけでなく、各営業所に名簿が備わっている状態にする必要があります。

退職者の名簿を「もう辞めたから」とすぐ処分してしまうと、保存義務違反になりかねません。退職後3年は手元に残す、と覚えてください。

【NightMA 専門家の視点】
実務で最も多い不備が、退職者名簿の早すぎる処分と、各営業所への備付け漏れです。本部のクラウドに全店分をまとめているから大丈夫、と考える経営者は多いのですが、立入検査は営業所単位で入ります。その店に、その店の名簿が、退職者分まで含めて備わっているか。ここが問われます。多店舗化するほど、名簿の分散管理は崩れやすくなります。

第36条の2「確認記録」との違い

ここが、この記事の核心です。従業者名簿(第36条)と、接客従業者の確認記録(第36条の2)は、まったく別の義務です。

第36条の2第1項は、接客従業者について、生年月日等を内閣府令で定める書類によって確認する義務を定めています。第2項は、その確認の結果を記録として作成・保存する義務です。

つまり、第36条が「働く人全員の名簿」であるのに対し、第36条の2は「接客従業者の年齢を確認し、その確認の記録を残すこと」に絞られています。対象も、名簿は業務に従事する者全般、確認記録は接客従業者です。

行政処分基準でも、この2つは別建てで整理されています。第36条=従業者名簿備付け記載義務違反、第36条の2第1項=接客従業者の生年月日等の確認義務違反、第2項=確認記録の作成保存義務違反、と分かれています。

接客従業者の年齢確認そのものの実務は、「風営法の年齢確認」で詳しく解説しています。名簿と確認記録は、セットで運用しつつ、別物として管理してください。

本人確認書類・コピー保存・個人情報の扱い

「身分証のコピーは保存しなければならないのか」という疑問も多く寄せられます。ここは、確定している部分と、実務上の整理にとどまる部分を分けて理解する必要があります。

接客従業者の生年月日等は、書類で確認します。日本国籍の場合は、住民票記載事項証明書(本籍地都道府県名の記載があるもの)、旅券、官公庁発行の書類などが用いられます。外国籍の場合は、旅券・在留カード・特別永住者証明書などです。

ただし、本人確認書類の写し(コピー)の保存そのものが条文上の義務かどうかは、断定できません。実務では、確認した書類の写しや電磁的記録を確認記録として保存する運用が一般的ですが、これは実務上の整理にとどまります。

加えて、名簿や確認記録には個人情報が含まれます。取得目的の範囲内で必要な情報を扱い、漏えい防止の措置を講じることが求められます。これは個人情報保護法一般の考え方であり、風営法側に明示の連携条文があるわけではありませんが、実務として徹底すべきです。

名簿不備の罰則と行政処分【第53条・量定D】

「名簿くらい、なくても大したことにはならないだろう」という油断は危険です。名簿の不備は、罰則と行政処分の両面でリスクになります。

従業者名簿の備付け・記載義務違反は、第53条第3号に当たります。第53条の法定刑は100万円以下の罰金です。第36条の2の確認義務違反(第53条第4号)・確認記録義務違反(第53条第5号)も、同じく罰則の対象です。

行政処分の面では、警察庁の行政処分基準上、第36条違反・第36条の2第1項違反・第2項違反は、いずれも量定Dです。

量定Dの違反は、原則としてまず指示処分が行われる運用です。ただし、他の違反や悪質性、検挙、重大な結果がある場合には、直ちに営業停止命令などに進むこともあります。

つまり、名簿不備は単独なら指示処分でも、未成年就労や不法就労といった別の問題と重なった瞬間に、処分のインパクトが跳ね上がります。「名簿だけ」と侮れません。違反全般のリスクは「風営法違反のリスク」もあわせて確認してください。

【NightMA独自】採用〜退職の名簿運用フロー+立入検査対応

風営法の従業者名簿運用フロー 応募受付で仮情報 面接で本人確認書類 体入前に第36条の2確認 採用で名簿に正式登録 在職中は業務変更で更新 退職で退職年月日記載し3年保存

名簿不備を防ぐには、名簿の作成を採用フローに組み込むのが最も確実です。個人の記憶や善意に頼ると、必ずどこかで抜けます。

実務の現場では、名簿が「採用時に何となく書いた」きりで更新されていない店が頻繁にあります。これを、各段階で名簿が動く設計に変えてください。

  • 応募受付時:氏名・連絡先など仮情報を控える
  • 面接時:本人確認書類で氏名・生年月日・住所を確認する
  • 体入前:接客従業者は第36条の2の確認を行う
  • 採用時:従業者名簿に正式登録する(氏名・住所・性別・生年月日・採用年月日・従事業務)
  • 在職中:従事する業務が変わったら名簿を更新する
  • 退職時:退職年月日を記載し、退職日から3年間保存する
このフローを店のルールとして文書化し、各営業所に名簿が備わっている状態を保つことが、立入検査で「管理できている店」と評価される近道です。立入検査で見られる項目は「風営法の警察立ち入り(立入検査)」で解説しています。名簿管理の責任者は「風営法の管理者」とも連動します。

【NightMA独自】名簿整備とM&Aデューデリ

ここからが、一般的な許認可記事が踏み込まない領域です。従業者名簿は、警察対応のための帳簿であると同時に、店の内部統制が効いているかを示す資料です。

M&Aの現場では、買い手は買収前のデューデリジェンスで、名簿と確認記録を必ず見ます。名簿が整っている店は、年齢確認や本人確認が機能している証拠になり、立入リスクの説明もしやすく、「管理できている店」として評価されます。

逆に、名簿不備が常態化している店は、未成年就労・不法就労・偽名勤務の疑義を招きます。これらは買い手にとって、譲渡後に背負う見えないリスクであり、譲渡価格のディスカウント要因になります。

名簿の整備は、日々の適法運営であると同時に、将来の出口を有利にする投資です。

NightMAの経営提言:
従業者名簿は、最も地味で、最も「管理力」が表れる帳簿です。名簿が雑な店は、ほぼ例外なく他の管理もどこか雑で、立入でもM&Aでもそこを突かれます。逆に、採用から退職まで名簿が一本の線で繋がっている店は、それだけで買い手に安心感を与えます。2026年、名簿を「やらされる帳簿」ではなく「店の信用を可視化する資料」として整えた店が、立入に強く、最後に高く売れます。

よくある質問(FAQ)

Q. アルバイトや体験入店の人も、従業者名簿に載せる必要がありますか?

業務に従事する以上、アルバイトや体験入店の人も名簿の対象に含めて管理するのが安全です。第36条の従業者名簿は、その営業の業務に従事する者を対象とします。短期間の勤務でも、実際に働いた人は記載しておくことで、立入検査での説明がしやすくなります。

Q. 従業者名簿は、いつまで保存すればよいですか?

実務上、従業者が退職した日から3年間保存します。起算点は名簿を作った日ではなく、その人が退職した日です。解雇や死亡による退職も含みます。退職したからとすぐ処分すると保存義務違反になりかねないため、退職後3年は手元に残してください。

Q. 従業者名簿と、第36条の2の確認記録は同じものですか?

別物です。第36条の従業者名簿は、営業所ごとに備える働く人の名簿です。第36条の2は、接客従業者の生年月日等を書類で確認し、その確認記録を作成・保存する義務です。対象も中身も罰則条文も分かれているため、両方を別々に整備する必要があります。

Q. 本籍は名簿に書かなければいけませんか?

本籍は、2014年の改正で従業者名簿の記載事項から外れたと実務上整理されています。一方、接客従業者については、生年月日や国籍・在留資格などを書類で確認する義務が第36条の2にあります。本籍そのものを名簿に必ず書くというより、確認の場面で本籍地都道府県名を確認できる書類を用いる、という整理です。

Q. 写真のない身分証でも、本人確認に使えますか?

実務上は、本人と書類の同一性まで確認できる、写真付きの公的書類で確認する運用が安全です。住民票だけでは写真がないため本人同一性の確認には向きません。接客従業者の年齢確認の実務は「風営法の年齢確認」の記事で詳しく解説しています。

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まとめ

風営法の従業者名簿は第36条が根拠で、営業所ごとに備え付け、業務に従事する者の氏名・住所・生年月日・採用退職年月日・従事業務などを記載します。記載事項は施行規則で定められ、本籍は2014年改正で名簿の記載事項から外れたと整理されています。保存期間は退職した日から3年です。

接客従業者の生年月日確認・確認記録(第36条の2)は、これとは別の制度です。名簿と確認記録を混同せず、両方を整備してください。

名簿不備は第53条第3号(100万円以下の罰金)に当たり、行政処分基準では量定Dです。原則まず指示処分ですが、他の違反と重なれば営業停止に直結します。立入検査でもM&Aのデューデリでも、名簿は必ず見られます。

名簿を採用フローに組み込み、各営業所で最新の状態に保つことが、立入に強く、将来高く売れる店をつくる近道です。nightmaは、名簿を含むコンプライアンス体制の整備から、許可を持つ店の居抜き・M&A・造作譲渡まで支援します。

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