「風俗営業の許可を取りたいが、誰を管理者にすればいいのか」
「オーナーである自分が管理者を兼ねてもいいのか。複数店舗を1人で管理できるのか」
このように、管理者を誰にするかで悩む方は少なくありません。
結論から申し上げます。風営法の管理者は、営業所ごとに1人選任しなければならない法定の責任者で、許可の前提そのものです。誰でもよいわけではなく、要件・欠格・講習・業務が法令で定められています。
そして2026年現在、「名義だけの管理者」や「実際には不在の管理者」は、立入検査やM&Aのデューデリジェンスで一気に問題化する地雷です。
この記事では、ナイト業界専門のM&A仲介として許可と運営の実態を見てきた立場から、管理者の選任義務・誰がなれるか・専任と兼任のルール・欠格・業務・管理者講習・不在リスク・そして退職や事業承継時の実務までを、第24条と施行規則をベースに一気通貫で解説します。
まず結論|風営法の管理者とは(第24条)
風営法の管理者とは、営業所における業務の実施を統括管理する責任者です。風営法第24条により、風俗営業者は営業所ごとに管理者を1人選任しなければなりません。
重要なのは、管理者が「店長」や「現場責任者」といった社内の呼び名とは別の、法令上の地位だということです。許可申請書にも管理者を記載し、公安委員会が要件を確認したうえで風俗営業管理者証が交付されます。
つまり、管理者を適切に選任・配置できていない状態は、許可の前提を欠いた状態です。名義だけ・不在では、平時は見逃されても、立入検査やトラブル時に致命傷になります。まず次のポイントを押さえてください。
- 営業所ごとに管理者を1人選任しているか
- 管理者は欠格事由(第24条第2項)に該当しないか
- 管理者は実際にその営業所で業務を統括しているか(名義だけでないか)
- 管理者講習の通知が来たら受講させているか
管理者は誰がなれるのか
管理者になれるのは、営業所の業務を実際に統括管理できる人です。社長でも、店長でも、要件を満たせば管理者になれますが、逆に「名前を貸すだけ」の人はなれません。
ここを誤ると、申請者本人は問題ないのに管理者で引っかかる、という事態に陥ります。
オーナー・代表者・店長は兼任できるか
オーナーや法人の代表者が、自ら管理者を兼ねることは可能です。実際、小規模店では経営者が管理者を兼ねるケースが一般的です。
ただし、後述する「専任」の要件があるため、その営業所で実際に業務を統括できることが前提です。複数の事業を掛け持ちして現場にほとんどいない、という状態では、管理者として実態を欠くと判断されかねません。
名義だけ・不在の人がダメな理由
管理者は、施行規則第38条で定められた業務を実際に担う立場です。したがって、現場に関与せず名前を貸すだけの人は、管理者の実態を満たしません。
「知人に名義を借りて管理者にする」「実際には別の人が回している」という状態は、形骸化した管理者として、立入検査や行政指導で問題視されます。名義の問題は、別記事「名義貸しのリスク」も併せて確認してください。
管理者の要件|営業所ごと・専任

管理者の要件の中心は「営業所ごとに専任で1人」です。これは施行規則第37条に明記されています。原則として、1人が複数の営業所の管理者を兼任することはできません。
なぜ専任が求められるのか、そして兼任の例外がどこにあるのかを正確に押さえてください。
営業所ごとに専任で置く(施行規則第37条)
風営法施行規則第37条は、「法第24条第1項の規定により選任される管理者は、営業所ごとに専任の管理者として置かれなければならない」と定めています。ここでいう専任とは、その営業所の管理者業務に専ら従事できる状態を指します。実務上は、その店に常勤的に関与し、業務を統括できる人物であることが求められます。
複数店舗の兼任はできるか
原則として、1人が2つ以上の営業所の管理者を兼任することはできません。これが専任原則の帰結です。
ただし、施行規則第37条ただし書に例外があります。
1人の風俗営業者の2以上の営業所が相互に接し、その間を客が自由に往来でき、かつ1人の管理者を置いても業務の適正な実施に支障がないものとして、公安委員会の承認を受けたときは、専任の管理者を置くことを要しません。隣接して一体的に運営される店舗などが対象です。
【NightMA 専門家の視点】
多店舗展開を考えるオーナーが最初につまずくのが、この兼任の壁です。「自分が全店の管理者になればいい」と考えがちですが、原則は店ごとに専任。離れた店を1人で兼任する前提で事業計画を組むと、許可の段階で崩れます。隣接店の兼任承認という例外はありますが、適用条件は限定的です。多店舗化するなら、店ごとに信頼できる管理者を育てる人材設計が前提になります。
管理者の欠格要件【第24条第2項】
管理者にも、欠格要件があります。風営法第24条第2項各号に該当する者は、管理者になれません。申請者本人や役員がクリアでも、管理者が欠格なら営業はできません。
ここで注意すべきは、管理者の欠格と、申請者・役員の欠格(第4条)は別の規定だということです。
管理者独自の欠格(第24条第2項)
管理者の欠格は第24条第2項各号で定められ、未成年者などが含まれます。施行規則第37条の2は、第24条第2項第3号の「心身の故障」について、業務を適正に実施するために必要な認知・判断・意思疎通を適切に行うことができない者と定めています。
実務では、警視庁の様式でも、許可申請時に管理者について、第24条第2項各号に該当しない旨の誓約書の提出が求められます。
申請者・役員の欠格(第4条)との違い
申請者本人や法人の役員については、別に第4条の欠格事由(前科・破産・暴力的不法行為のおそれ等)が問われます。管理者は第24条第2項、申請者・役員は第4条と、根拠が分かれている点を混同しないでください。
つまり、許可を取るには「申請者・役員(第4条)」と「管理者(第24条第2項)」の両方をクリアする必要があります。欠格の全体像は「風営法の欠格事由」で詳しく解説しています。
管理者の仕事と責務

管理者は、選任されたら終わりではありません。施行規則第38条が、管理者の具体的な業務を定めています。名ばかりではなく、これらを実際に担うのが管理者です。
立入検査では、これらの業務が実際に行われているかも確認されます。
施行規則第38条が定める業務
管理者が統括管理すべき主な業務は次のとおりです。これらは法第24条第3項に基づき、施行規則第38条で具体化されています。
| 業務 | 内容(施行規則第38条) |
|---|---|
| 従業者への指導 | 法令遵守のための指導計画の作成・実地指導・記録 |
| 従業員教育 | 年少者の立入りや健全な営業に関する従業員教育その他必要な措置 |
| 苦情処理 | 営業に関する苦情の処理、深夜営業時の苦情処理帳簿の管理 |
| 未成年者対応 | 未成年者を発見したときの立退き勧告その他必要な措置 |
| 従業者名簿の管理 | 法第36条の従業者名簿の備付け・記載の管理 |
| 確認記録の管理 | 接待飲食等営業における年齢等の確認記録(法第36条の2)の管理 |
| 構造設備の点検 | 営業所の構造設備の点検・管理 |
店長との違い・立入検査で見られる点
「店長」は社内の役職ですが、「管理者」は法令上の責任者です。両者が同一人物のことも多いものの、概念は別です。
立入検査では、管理者が実在し、従業者名簿・苦情処理・年少者対応といった業務を実際に担っているかが見られます。立入検査の詳細は「風営法の警察立ち入り(立入検査)」で解説しています。
管理者講習とは

管理者には、講習の受講義務があります。風営法第24条第6項・第7項に基づき、公安委員会が管理者講習を実施し、通知を受けた営業者は管理者に受講させなければなりません。
「許可を取ったら終わり」ではなく、継続的に知識をアップデートする義務がある、ということです。
講習の種別と頻度(施行規則第39条)
施行規則第39条は、管理者講習を定期講習・処分時講習・臨時講習に区分しています。種別ごとの内容を押さえてください。
| 種別 | 頻度・タイミング | 講習時間 |
|---|---|---|
| 定期講習 | 管理者として選任された日からおおむね3年ごとに1回 | 4時間以上6時間以下 |
| 処分時講習 | 行政処分等に関連して行われる | 4時間以上6時間以下 |
| 臨時講習 | 必要に応じて臨時に行われる | 2時間以上4時間以下 |
通知と欠席時の対応(施行規則第40条)
施行規則第40条により、公安委員会は実施予定期日の30日前までに管理者講習通知書で通知します。病気その他やむを得ない理由で受講できない場合は、実施予定期日の10日前までに書面を提出する必要があります。
正当な理由なく受講しなかった場合は、行政処分の対象になり得ます。通知が来たら、必ず受講させてください。
管理者が不在・形骸化した場合のリスク
管理者を選任しない、あるいは名義だけで実態がない――こうした状態は、平時は見逃されても、いざというときに大きなリスクになります。
管理者の不在や形骸化は、行政処分や事業価値の毀損に直結します。
講習未受講・業務不履行は行政処分につながる
管理者講習を正当な理由なく受講させない、あるいは管理者業務が履行されていない場合、行政処分の対象になり得ます。岐阜県警も、講習を受けさせる必要があり、怠ると罰則や行政処分が科される場合があると案内しています。
施行規則第24条は、優良店として手続が簡素化される特例風俗営業者の認定について、過去10年以内に管理者関連の勧告や違反がないことを要件としています。管理者まわりの不備は、こうした優遇からも外れる要因になります。
「名義だけの管理者」は最も危険
実務で最も多い落とし穴が、名義だけの管理者です。平時は問題が表面化しなくても、立入検査・トラブル・売却時のデューデリジェンスで一気に露呈します。
管理者が実在せず、業務も回っていない店は、コンプライアンスが崩れていると評価されます。これは行政リスクであると同時に、後述するように事業価値を直接損ないます。
管理者の変更・退職・事業承継時の実務
管理者は、退職や交代で変わることがあります。その際に必要なのが管理者変更の届出です。届出を怠ると、無管理者状態や違反のリスクが生じます。
特にM&Aや居抜き買収では、管理者の引継ぎを設計に組み込まないと、買った後に運営が止まる事態が起きます。
変更届のタイミングと手続き
管理者に変更があった場合は、変更の届出が必要です。期限・必要書類・費用などの具体的な手続きは、別記事「風営法の管理者変更届出」で詳しく解説しています。
退職が決まったら、後任の管理者を早めに用意し、無管理者の空白期間を作らないことが鉄則です。
居抜き・M&Aでの引継ぎ注意点
居抜き買収や事業承継では、許可の地位承継・変更届・実際の管理者配置を一体で設計する必要があります。許可は買主側で取り直すのが原則のケースも多く、その際に管理者を据えられる人員がいるかが、買収の可否を左右します。
許可の承継については「風営法の許可承継・引き継ぎ」も参照してください。
【NightMA独自】管理者体制と売却価値
ここからが、一般的な許認可記事が踏み込まない領域です。管理者体制は、許可要件であると同時に、その店のコンプライアンス成熟度と運営継続可能性を示す指標です。
M&Aの現場では、管理者まわりが弱い店は、引継ぎリスクとして価格や条件に反映されます。
デューデリジェンスで評価される管理体制
買い手は、買収前のデューデリジェンスで、管理者まわりを必ず確認します。次の点が弱いと、譲渡価格や条件に影響します。
- 現管理者が実際にその営業所で業務を統括しているか(名義だけでないか)
- 管理者講習の受講履歴があるか
- 管理者が退職・交代しても、すぐに後任を立てられる体制か
- 従業者名簿・苦情処理など第38条の業務が実際に回っているか
- 過去に管理者関連の勧告・指導歴がないか
売れる店は管理者設計がきれい
名義だけの管理者で回している店は、平時は問題なく見えても、売ろうとした瞬間に買い手のデューデリジェンスで弾かれます。
逆に、管理者が実在し、業務と講習がきちんと回っている店は、それだけで「引き継ぎやすいクリーンな店」として評価されます。管理者体制の整備は、日々の適法運営であると同時に、将来の出口を有利にする投資です。
NightMAの経営提言:
管理者は、許可の入口であり、運営の要であり、そして売却時の通行証です。名義だけの管理者は、平時のコストを浮かせているように見えて、立入検査・トラブル・売却のすべてで爆弾になります。2026年、取締りが厳しさを増す中で生き残り、最後に高く売れるのは、管理者を「実体のある責任者」として設計した店です。管理者体制は、最も地味で、最も効く出口戦略です。
よくある質問(FAQ)
Q. 風営法の管理者は、オーナーが兼任できますか?
できます。オーナーや法人の代表者が自ら管理者を兼ねることは可能です。ただし、管理者は営業所ごとに専任で置く必要があるため(施行規則第37条)、その営業所で実際に業務を統括できることが前提です。現場にほとんど関与しない名義だけの状態は認められません。
Q. 1人で複数店舗の管理者を兼任できますか?
原則としてできません。施行規則第37条は営業所ごとに専任の管理者を置くことを求めています。ただし例外として、複数の営業所が相互に接して客が自由に往来でき、1人の管理者で業務の適正な実施に支障がないものとして公安委員会の承認を受けた場合は、専任を要しません。
Q. 管理者講習はいつ受けますか?
定期講習は、管理者として選任された日からおおむね3年ごとに1回受講します(施行規則第39条)。講習時間は定期講習で4時間以上6時間以下です。公安委員会から実施予定期日の30日前までに通知書が届きます。正当な理由なく受講しないと行政処分の対象になり得ます。
Q. 管理者が辞めたら、すぐに営業できなくなりますか?
管理者は営業所ごとに置く必要があるため、退職で不在になれば無管理者状態となり、運営上のリスクが生じます。退職が決まったら早めに後任を選任し、管理者変更の届出を行って空白期間を作らないことが重要です。
Q. 店長と管理者は同じですか?
概念は別です。「店長」は社内の役職、「管理者」は風営法上の法定の責任者です。同一人物が兼ねることは多いものの、管理者には施行規則第38条の業務や講習義務があり、要件を満たす必要があります。
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まとめ
風営法の管理者は、営業所ごとに1人選任する法定の責任者で、許可の前提そのものです。施行規則第37条により専任が原則で、複数店舗の兼任は、隣接して客が自由に往来できるなど公安委員会の承認がある場合を除き、原則できません。
管理者には、第24条第2項の欠格要件、施行規則第38条の業務、そして選任日からおおむね3年ごと・4〜6時間の管理者講習があります。名義だけ・不在の管理者は、立入検査やM&Aのデューデリジェンスで一気に問題化します。
管理者体制を実体あるものに整えることが、許可を維持し、立入検査に強く、将来高く売れる店をつくる近道です。nightmaは、管理者を含むコンプライアンス体制の整備から、最適な許可を持つ店の居抜き・M&A・造作譲渡まで支援します。
