店を譲る3つのかたち|造作譲渡・事業譲渡・株式譲渡の違いを一覧で比較

店を手放すときの譲り方は3つ:内装だけ渡す「造作譲渡」、お店ごと渡す「事業譲渡」、会社ごと渡す「株式譲渡」。どれになるかは、次の3つの質問でほぼ決まります。

3つの質問で決める

1会社ごと手放してもいいですか?

はい → 株式譲渡いいえ・法人は残したい → 質問2へ個人事業/1店舗だけ → 法人に切り替えて売る手も

2渡したいのは内装だけですか? それともスタッフ・お客さん・屋号も?

内装だけ → 造作譲渡内装だけ・賃貸借は法人名義 → 法人ごと渡す手もお店ごと → 事業譲渡

3風営法の許可は、法人名義ですか、個人名義ですか?

法人名義 → 株式譲渡なら許可はそのまま使える個人名義 → どの譲り方でも買い手は取り直し。取り直せる立地かを先に確認

迷う案件は、造作譲渡と事業譲渡の両方で買い手に打診して条件の良い方で進めることもできます。

それぞれ何がどうなるか

造作譲渡 =内装だけ渡す(居抜き)

内装・厨房・什器の所有権だけを売る。賃貸借は買い手が貸主と結び直す。いちばん早く、いちばん件数が多いかたち。

向いている人:店を閉めたい・内装を活かして早く手放したい

風営法の許可
引き継げない。買い手が新規取得(審査は通常1〜2ヶ月)
賃貸借契約
買い手が新規契約(巻き直し)。貸主の承諾が前提
スタッフ・顧客
引き継がない
借入・債務
引き継がない(売り手が清算)
保証金
売り手に返還 → 買い手が新規に預ける
税金
個人は譲渡所得・法人は法人税。消費税は課税
期間の目安
1〜2ヶ月

賃貸借が法人名義なら 法人ごと渡す 方が条件が良くなることも。深掘り:トラブルの起き方/収入印紙の扱い

事業譲渡 =お店ごと渡す(法人は残す)

屋号・スタッフ・顧客・契約・設備を選んで渡す。法人は売り手に残るので、複数事業のうち1店舗だけ手放すときに使う。

向いている人:法人は残したい・スタッフや常連も一緒に渡したい

風営法の許可
引き継げない。買い手が新規取得(法人名義でも同じ)
賃貸借契約
原則巻き直し。承継するなら貸主の承諾(民法612条)
スタッフ・顧客
一人ずつ再契約(本人の同意が要る)。顧客・屋号は合意した範囲
借入・債務
原則引き継がない。屋号を続用すると売り手の債務を負い得る(会社法22条・登記で外せる)
保証金
巻き直しなら売り手に返還 → 買い手が新規
税金
資産ごとに消費税課税(のれん・造作は課税、土地は非課税)。法人なら法人税
期間の目安
2〜4ヶ月

深掘り:高く売るには/手数料

株式譲渡 =会社ごと渡す

株を渡して法人ごと引き継ぐ。許可・賃貸借・スタッフ・口座が全部そのまま。その代わり、債務も全部一緒に買い手へ行く。

向いている人:許可と契約とスタッフをそのまま渡したい・複数店舗・年数の長い許可を活かしたい

風営法の許可
法人名義ならそのまま続く。代表者の変更は届出(風営法9条3項)
賃貸借契約
そのまま続く。ただし「経営者の変更は承諾が要る」条項が多い
スタッフ・顧客
そのまま
借入・債務
全部引き継ぐ。帳簿に無い債務も来るので精査(DD)が前提
保証金
法人のまま残る(買い手の資金計画から外せる)
税金
個人株主は譲渡益の20.315%。消費税なし
期間の目安
3〜6ヶ月(財務・法務の精査)

深掘り:実データレポート/無料相談

スキーム別・売却までの流れ

どの譲り方でも入口は同じ「相談・査定」。そのあとの手順と、売り手が動く場面(濃い番号)が違います。

造作譲渡目安 1〜2ヶ月

  1. 相談・査定内装の価値(造作代の目安)と賃貸借契約の確認(譲渡禁止特約・解約予告の月数)
  2. 貸主へ事前相談後継テナントを入れてよいか・新契約の条件を先に聞く(無断で進めない)
  3. 募集・買い手探し店名を伏せて写真と条件を案内。会員ボードと個別提案
  4. 内見候補日を3つ出してもらい、営業時間外に案内
  5. 条件合意造作代・引渡し日・残す物と持ち出す物・リースの扱い
  6. 貸主の審査・新規契約買い手が貸主と賃貸借契約。保証金は買い手が新規に預ける
  7. 造作譲渡契約・決済契約書は当社が用意。代金と引渡しを同日に
  8. 引渡し・解約売り手は原契約を解約し保証金の返還を受ける(償却分を除く)

事業譲渡目安 2〜4ヶ月

  1. 相談・査定営業利益・スタッフ・許可の名義・賃貸借の条件を確認して値付け
  2. 資料の整理売上・経費の資料、契約一覧、従業員名簿、リース。秘密保持のうえで
  3. ノンネームで打診店名を伏せた概要で買い手候補に当てる
  4. 秘密保持→詳細開示・面談買い手と直接会い、譲渡する範囲を詰める
  5. 基本合意価格・譲渡範囲・スタッフの扱い・引渡し時期を書面に
  6. 精査(DD)契約・労務・許認可・リースを買い手側が確認
  7. 貸主承諾・再契約・許可申請賃貸借の巻き直し、スタッフ一人ずつの同意、買い手の風営許可申請(1〜2ヶ月)
  8. 事業譲渡契約・決済許可が下りてから引渡し。屋号・SNS・顧客の引継ぎ

株式譲渡目安 3〜6ヶ月

  1. 相談・査定決算書2〜3期・役員と株主の構成・借入と保証を確認して値付け
  2. 論点出し簿外債務・未払税・訴訟・リース・賃貸借の承諾条項を先に洗う
  3. ノンネーム→秘密保持→概要書店名を伏せて打診し、秘密保持のあと企業概要書を開示
  4. トップ面談・意向表明買い手と面談。価格と条件の意向を書面で受ける
  5. 基本合意価格・スキーム・スケジュール・独占交渉の期間
  6. 精査(DD)財務・法務・労務・許認可を買い手側が精査。指摘は価格か表明保証で調整
  7. 株式譲渡契約・決済表明保証・価格調整条項を入れて締結。代金と株券・株主名簿の書換えを同日に
  8. 引継ぎの届出役員変更の登記、風営法の変更届(代表者)、貸主への通知・承諾、金融機関の保証人差替え

濃い番号=売り手が動く場面。薄い番号=当社と買い手側で進める場面。

法人ごと渡した方がよいパターン(事業譲渡・造作譲渡になりそうでも)

質問1で「法人は残したい」「個人事業」、質問2で「内装だけ」となった方でも、店を法人に乗せたまま株式・持分で渡す方が、高く・広く売れることがあります。買い手が「賃貸借・保証金・許可がそのまま付いてくる」形を強く好むからです。

A. 個人事業で営業している(許可が個人名義)

個人名義の許可はどの譲り方でも引き継げません。売る前に法人を作り、法人名義で許可を取り直してからその法人の株を売ると、買い手は許可付きで買えます。

法人設立→法人名義で風営許可を取得(個人の許可は取得後に返納)→賃貸借・雇用を法人へ→株式譲渡

時間は許可の審査を含めて3〜4ヶ月。急がない売却で、許可の取り直しに耐えられる立地なら検討する価値があります。

B. 法人に複数の店や事業があり、1店舗だけ売りたい

事業譲渡だと許可は買い手が取り直しですが、会社分割で新会社に店を切り出すと、公安委員会の承認を受けたうえで許可を新会社に引き継げます(風営法7条の3)。そのうえで新会社の株を売れば、買い手は許可・契約付きで買えます。

分割の承認申請(公安委員会)→新設分割で店を新会社へ→賃貸借の名義を新会社へ(貸主承諾)→株式譲渡

債務も店に紐づく分だけ切り分けられるので、買い手の精査が軽くなり価格交渉が通りやすくなります。

C. 買い手が「会社ごと」を条件にしている

複数店舗の買い手や、融資で買う買い手は、営業を止めずに引き継げる株式譲渡を条件にすることがあります。AかBで法人の形を整えてから打診すると、買い手の幅が広がります。

D. 内装だけの「箱」でも、法人ごと渡す(賃借権付き)

スタッフも屋号も渡さない造作型の案件でも、店の賃貸借を法人が結んでいるなら、その法人ごと(株式・持分)渡す手があります。バー・ポーカー・カラオケ店で実際に多い形です。買い手にとっての中身は「造作+賃借権+保証金(+許可)」で、造作譲渡より条件が良くなります。

賃貸借契約の承諾条項と連帯保証を確認→法人の債務・税金を精査→貸主へ事前説明・保証人の差替え→株式/持分譲渡

買い手側の利点:賃貸借を結び直さない(礼金・仲介手数料・賃料の見直しなし)/保証金は法人の資産として残るので新規の差入れが要らない/法人名義の風営許可・深夜酒類の届出が続く/公庫などの借入を承継できることがある。当社で進行中の案件でも、保証金500万円を法人に残したまま持分を渡す条件(買い手の新規差入れなし・公庫借入の承継は貸し手の承諾が条件)で買い手に案内しています。

気をつける点:「代表者や登記の変更は貸主の承諾」と書かれた契約が多く、連帯保証人の差替えと保証会社の再審査で貸主との接触は避けられない/法人に残る債務・未払税・ポイント残高などの負債は価格から引く/合同会社の持分譲渡は社員全員の同意が要る/定期借家なら残存期間がそのまま価値になる。

向かないとき:急いで手放したい(法人化・分割・許可で3〜6ヶ月)/法人に他の債務や係争があり切り分けが難しい/売却額が小さく手間に見合わない。売却益の税金も、個人の譲渡所得・法人税・株式の20.315%で変わるので、始める前に提携税理士と試算します。

違いが出るところだけ早見表

造作譲渡事業譲渡株式譲渡
風営法の許可✕ 取り直し✕ 取り直し◯ そのまま(法人名義)
賃貸借契約新規契約原則 新規契約◯ そのまま
スタッフ引き継がない△ 再契約◯ そのまま
借入・債務◯ 来ない△ 選んで✕ 全部来る
売り手の税金消費税 課税消費税 課税譲渡益 20.315%・消費税なし
期間早い 1〜2ヶ月2〜4ヶ月3〜6ヶ月
当社の手数料3つとも同じ:売り手 成約額の5%(税別)・最低50万円/買い手 案件ごとの定額(最低50万円・税別) 詳細

◯=買い手側の手間なし/△=条件付き/✕=別途手続きか負担。買い手にとっての◯が多いほど価格は上がりやすく、時間は長くなります。

いくらで売れるか・いくら残るか(価格と税金)

売り手が本当に知りたいのは「どれが一番高いか」と「結局いくら残るか」。価格の順と、手取りの順は同じとは限りません。税金と、お金が「誰の手に入るか」で変わります。

1. 価格はふつう、付いてくるものが多いほど高い

造作譲渡安い・早い・確実
内装の価値だけ。当社の実績では造作代金の中央値は700万円(実データ)。1〜2ヶ月で現金化しやすい
事業譲渡中
スタッフ・顧客・屋号の分が乗る。ただし買い手は許可の取り直しと再契約の手間を値引きで回収しようとする
株式譲渡高いが、時間と精査で削られる
許可・賃貸借・保証金がそのまま付く分が最も高い。反面、精査(DD)で見つかった債務や税務リスクは価格から引かれ、3〜6ヶ月かかる

「高い」は買い手が付いて成約した価格で考えます。当社の受託でも、成約はすべて造作譲渡で、株式・事業譲渡は進行中が多い=高い形ほど時間がかかっています。

2. 税金は「売り方」と「売り手が個人か法人か」で決まる

売り方 × 売り手税金のかかり方お金はどこに入るか
造作譲渡・個人譲渡所得(他の所得と合算)。譲渡益=代金−簿価−費用、50万円の特別控除、取得から5年超なら課税されるのは半分(所得税法33条・22条)。消費税は課税事業者なら預かり個人の口座に直接
造作譲渡・法人法人税等(利益に対して概ね3割前後)。消費税は課税法人に入る。個人に出すとき(役員報酬・配当・退職金)にもう一度税金
事業譲渡・法人資産ごとに益金(のれん・造作は消費税課税、土地は非課税)。法人税等法人に入る。同上。廃業して清算するなら清算時の課税も
事業譲渡・個人事業主資産ごと:在庫は事業所得、造作・のれんは譲渡所得(上と同じ50万控除・長期1/2)個人の口座に直接
株式譲渡・個人株主譲渡益×20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税)で他の所得と分けて計算。消費税なし個人の口座に直接(法人を経由しない)
株式譲渡・法人株主法人税等(譲渡益が益金)持株会社に入る

見落としやすいのは「法人で売るとお金は法人に入る」こと。法人税を払った残りを個人に出すときにもう一度課税されるので、法人のオーナーが個人で手取りを最大にしたいなら株式譲渡が有利になりやすい。逆に、法人にお金を残して次の事業に使うなら事業譲渡でも困りません。

3. 同じ店を3通りで売ったときの手取り(前提を置いた概算)

前提:法人オーナーの店。造作の簿価0円・取得5年超・株式の取得費100万円・当社手数料は成約額の5.5%(税込)・法人税等は30%で計算。消費税は別。実際の税額は所得や経費で変わるので、提携税理士と試算します。

造作譲渡 700万円で売る(法人が売る)

売却額700万円
当社手数料▲38.5万円
法人税等(30%)▲約198万円
法人に残る約463万円
個人に出すと役員報酬・配当なら再課税。退職金として出せば退職所得控除で軽くなることが多い

事業譲渡 1,200万円で売る(法人が売る)

売却額1,200万円
当社手数料▲66万円
法人税等(30%)▲約340万円
法人に残る約794万円
個人に出すと同上。法人を畳むなら清算の課税も加わる

株式譲渡 1,500万円で売る(個人株主が売る)

売却額1,500万円
当社手数料▲82.5万円
譲渡益 1,317.5万円×20.315%▲約268万円
個人の手取り約1,150万円
注意保証金は法人に残るので返ってこない(その分を価格に乗せる)。精査で債務が見つかると価格が下がる

この例では、価格の差(700→1,500万)以上に手取りの差が開きます。理由は税率(30%+再課税 vs 20.315%)と、お金が個人に直接入るかどうか。ただし株式譲渡は時間がかかり、途中で流れる確率も高いので、「早く確実に現金化したい」なら造作譲渡の方が結果的に多く残ることもあります。

4. 売り手が価格の外で確認する3つ

保証金の戻り造作・事業譲渡は解約時に償却分を引いて返還(賃料2〜3ヶ月分が消えることが多い)。株式譲渡は法人に残るので価格に乗せる
原状回復の免除造作譲渡で買い手が引き継ぐと、スケルトン戻しの費用(数百万円)が浮く。これも実質の手取り
リース・借入の行方造作は売り手が清算。株式は法人に残るので、その分だけ価格から引かれる。連帯保証の差替えは金融機関の承諾が要る

当社の受託案件ではどう分かれているか

86件受託(2026年9月22日時点)
56%造作譲渡 48件
29%株式譲渡 25件
14%事業譲渡 12件

成約8件はすべて造作譲渡。株式・事業譲渡は精査と交渉に時間がかかり進行中が多い=「早く手放す」なら造作譲渡、「高く・全部渡す」なら株式譲渡という傾向がそのまま出ています。業態別・規模別の内訳は 実データレポート に。

よくある質問

許可が個人名義です。株式譲渡にすれば許可ごと渡せますか?

渡せません。株式譲渡で続くのは「法人名義」の許可だけです。個人名義の許可は、どの譲り方でも買い手が新規に取得します。風営法で許可が引き継がれるのは相続・合併・分割(7条・7条の2・7条の3)に限られ、譲渡の規定はありません。

造作譲渡と事業譲渡、どちらが高く売れますか?

一般には事業譲渡(スタッフ・顧客・屋号込み)の方が高くなりますが、買い手の許可取得と再契約の手間が増えるぶん、成約までの時間は長くなります。急ぐなら造作譲渡、金額を優先するなら事業譲渡か株式譲渡です。手取りは税金で順番が変わることがあるので、価格と税金の例を見てください。

株式譲渡だと借金も買い手に行くのですか?

法人の借入は法人に残るので、株主が変わっても法人の債務として続きます。買い手はその分を価格から引くか、売り手が譲渡前に返済するのが一般的です。連帯保証人(代表者個人)の差し替えは金融機関の承諾が要ります。

賃貸借契約はどうなりますか?

造作譲渡・事業譲渡では買い手が貸主と新しく契約するのが基本(賃料が見直されることがあります)。株式譲渡は契約主体が同じなので続きますが、経営者の変更に貸主の承諾を求める条項がある契約が多いので、先に確認します。

ご相談

「うちはどれになるのか」は、許可の名義・賃貸借契約の条項・法人の状態を見れば10分で答えが出ます。相談・査定は無料、費用がかかるのは成約したときだけです(手数料)。

法令の根拠:風営法7条・7条の2・7条の3・9条3項、民法612条、会社法22条、所得税法22条・33条、租税特別措置法37条の10、消費税法6条(いずれも2026年9月22日時点の施行中の条文をe-Gov法令検索で確認)。税務の個別判断は提携税理士と確認します。