「自分は前科があるが、風俗営業の許可を取れるのか」
「うちは法人で、役員の1人に破産歴がある。それだけで申請が通らないのか」
このように、許可を取れるかどうかに不安を抱える方は少なくありません。
結論から申し上げます。風営法の許可には「欠格事由」という関門があり、これに1つでも該当すれば、どれだけ良い物件でも許可は下りません。そして見られるのは申請者本人だけではありません。
風営法第4条の欠格事由は、法人なら役員全員、営業所の管理者、さらに2025年の改正後は親会社や子会社といったグループ会社、実質的な支配者にまで及びます。この記事では、ナイト業界専門のM&A仲介として許可と事業価値の関係を見てきた立場から、第4条の欠格事由の全体像・前科や破産の扱い・法人と管理者の要件・2025年改正の拡大・取得後に該当したらどうなるか・そしてM&Aで詰まないための確認方法までを、一気通貫で解説します。
まず結論|風営法の欠格事由とは(第4条)
欠格事由とは、風俗営業の許可を受けられない人・法人の要件です。根拠は風営法第4条にあり、これに1つでも該当すれば許可は不許可になります。
重要なのは、チェックされる人物が1人ではないことです。欠格は次の3つのレイヤーで確認されます。
- 申請者本人(個人申請なら本人、法人申請なら法人)
- 法人の役員(第4条第2項。1人でも欠格者がいるとNG)
- 営業所の管理者(法第24条第2項の要件)
人的欠格事由【第4条第1項】

風営法第4条第1項は、許可を受けられない人の要件を列挙しています。警視庁の手続案内でも、これらに該当すれば許可されないと整理されています。
代表的な欠格事由は次のとおりです。自分や関係者が当てはまらないか、1つずつ確認してください。
| 欠格事由 | 内容 | 解消するか・期間 | nightmaの評価 |
|---|---|---|---|
| 破産 | 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者 | 復権で解消 | 復権後は申請可。免責確認が前提 |
| 前科(重い刑) | 1年以上の拘禁刑(懲役・禁錮)に処せられた者 | 執行終了等から5年で解消 | 起算点の確認が最重要 |
| 前科(一定の罪) | 一定の罪で1年未満の拘禁刑・罰金に処せられた者 | 執行終了等から5年で解消 | 罰金でも該当し得る |
| 暴力的不法行為のおそれ | 集団的・常習的に暴力的不法行為を行うおそれ | 状態が続く限り該当 | 反社排除の核心 |
| 中毒 | アルコール・麻薬・大麻・あへん・覚醒剤の中毒者 | 状態次第 | 医学的判断 |
| 心身の故障 | 業務を適正に実施できない者 | 状態次第 | 個別判断 |
| 許可取消し | 風俗営業の許可を取り消されて5年未経過 | 5年で解消 | 再取得・譲渡に直結 |
| 未成年 | 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年 | 成年等で解消 | — |
「期間で消える欠格」と「状態が続く限りの欠格」
欠格事由は、性質によって2つに分けて考えると整理しやすくなります。なお、これは実務上の整理であり、公的に「絶対的欠格」「相対的欠格」という用語で区分されているわけではありません。
自分の欠格が「待てば消えるのか」「状態を解消しなければ消えないのか」を見極めることが、申請の戦略になります。
5年で解消するもの
前科や許可取消しによる欠格は、一定期間の経過で解消します。たとえば許可取消しなら5年、前科なら執行終了等から5年です。
この場合、戦略はシンプルです。期間が経過するまで待つ、あるいは欠格でない別の人物を申請者・役員に立てる、という選択になります。
状態が続く限り該当するもの
一方、暴力的不法行為のおそれ・中毒・破産中などは、その状態が続く限り該当し続けます。時間の経過では解消しません。
これらは、状態そのものを解消しなければ許可は取れません。破産なら復権、といった根本的な対応が必要です。
法人の場合|役員・管理者の欠格

法人で申請する場合、欠格チェックは法人本体だけでは終わりません。役員と管理者まで見られます。ここを見落とすと、申請者は問題ないのに不許可という事態に陥ります。
法人申請では、定款・登記事項証明書に加え、役員全員分の誓約書などの提出が求められます。
役員に1人でも欠格者がいると不許可
法人の役員のうちに第4条第1項の欠格事由に該当する者がいる場合、その法人は許可を受けられません(第4条第2項)。役員ごとに該当性が審査されます。
つまり、代表者がクリーンでも、ほかの取締役の1人に前科や破産歴があれば、それだけで法人全体が不許可になります。役員全員の属性を、申請前に必ず確認してください。
管理者は別途、第24条第2項の要件
見落とされがちなのが管理者です。営業所ごとに置く管理者にも、欠格要件があります。
神奈川県警の様式では、管理者について法第24条第2項各号に掲げる者のいずれにも該当しないことを誓約させ、加えて誠実に業務を行う旨の誓約書も求めています。申請者・役員がクリアでも、管理者がNGなら営業はできません。管理者の選任・変更の実務は「風営法の管理者変更届出」で解説しています。
【NightMA 専門家の視点】
実務で最も多い「詰み」が、申請者・役員・管理者の三重チェックの取りこぼしです。とくに法人買収では、買った会社の役員や、新たに据える管理者の属性確認を後回しにしがちです。「物件も許可もある」と思って買ったのに、役員に欠格者がいて許可を引き継げない――こうした事故は、最初の人選で防げます。
【2025年改正】欠格事由はこう拡大した

2025年(令和7年)11月28日に施行された改正風営法は、欠格事由を大きく拡大しました。狙いは、欠格者を別法人やグループ会社に隠して許可を回す、という従来のスキームを封じることです。
神奈川県警や京都府警の改正案内で、追加された欠格事由が公表されています。密接関係法人(グループ会社)への波及
新たに、親会社等が許可を取り消された法人が欠格に加えられました。警察庁の通達でも、第4条第1項第7号・第13号が許可後に新たに該当し得る不許可事由として示されています。
ここでいう「密接な関係を有する法人」には、親会社等・兄弟会社等・子会社等が含まれます。グループのどこかの会社が許可取消しを受ければ、その影響が他社にまで及ぶ構造になりました。
立入調査後に許可証を返納した者
もう1つの重要な追加が、警察の立入調査を受けた後、聴聞決定予定日までの間に許可証を返納した者です。返納から5年は欠格となります。
これは、立入りで雲行きが怪しくなったら自主返納して別法人で再出発する、という処分逃れを封じる規定です。立入検査で何を見られるかは「風営法の警察立ち入り(立入検査)」で解説しています。
支配的影響力を持つ反社
さらに、暴力的不法行為等を行うおそれがある者が、その事業活動に支配的な影響力を有する場合も欠格に加わりました。
表に出ている役員がクリーンでも、裏で実質的に支配している人物が反社であれば、許可は通りません。名義を分けて実質オーナーを隠す手口が、正面から封じられたのです。詳しくは「名義貸しのリスク」も参照してください。
許可取得後に欠格事由に該当したら
欠格事由は、申請のときだけ問題になるのではありません。許可を取得した後に該当した場合も、許可取消しのリスクがあります。
「取ってしまえば安心」ではない、ということです。
取得後に判明したら第8条で取消し検討
警察庁の通達は、許可を受けた後に第4条各号の不許可事由に該当している事実が新たに判明した場合、法第8条に基づく許可の取消処分を検討すると明記しています。
つまり、役員が新たに罪を犯した、実質的支配者が反社だと判明した、といった事態が起きれば、いったん取れた許可も取り消され得ます。取得はゴールではなく、維持し続ける義務の始まりです。
聴聞の手続きと、立入り後返納の封じ込み
取消しに至る過程では、聴聞などの手続きがあります。前述のとおり、改正法は立入調査から聴聞決定予定日までの間の許可証返納を欠格事由化し、聴聞前に逃げる道を塞ぎました。
許可後に欠格に該当しそうな場合は、放置せず、速やかに役員構成や支配関係の見直しを検討すべきです。風営法違反全体の処分の流れは「風営法違反の罰則と行政処分」で整理しています。
【NightMA独自】欠格事由がM&A・買収に与える影響
ここからが、一般的な許認可記事が踏み込まない領域です。欠格事由は、許可取得の壁であると同時に、事業価値の壁でもあります。
欠格がある状態では、売れない・引き継げない・再許可が下りません。売上を改善する以前に、バリュエーションが崩れるのです。
買収先の「人」をグループまで確認する
居抜き買収や株式譲渡では、新オーナー・新役員・実質的支配者、そして改正後はグループ会社まで含めて欠格をチェックしなければなりません。
とくに事業譲渡では、許可そのものを引き継げず、買主側で新規取得し直すのが原則です。許可承継の実務は「風営法の許可承継・引き継ぎ」で解説していますが、結局は買主側に許可を取れる人員構成があるかが、その店を買えるかどうかを左右します。
買収前デューデリジェンス・チェックリスト
欠格リスクを見抜くために、買収前に最低限確認すべき項目を整理しました。表に出た役員だけを見て買うと、実質オーナーの欠格という地雷を踏みます。
- 株主名簿・定款・登記事項証明書で資本構成を確認する
- 役員全員(取締役・執行役等)の前科・破産・取消歴を確認する
- 実質的支配者・資金提供者・主要取引先に反社が関与していないか確認する
- 親会社・子会社・兄弟会社に許可取消歴がないか確認する
- 過去の立入検査・行政処分・許可証返納の履歴を確認する
- 管理者が第24条第2項の要件を満たすか確認する
【提言】
2025年改正で、名義貸しや実質オーナー隠しは「延命策」から「自爆装置」に変わりました。実質的支配者の欠格がグループ全体に波及するため、隠したまま買えば、買主まで巻き込まれます。買収を検討するなら、人と資本の関係を株主名簿レベルまで開示させることが、最低限の防衛線です。
欠格を整備して「許可を取れる・売れる」体制をつくる
最後に、欠格リスクを管理し、許可を取れる・将来売れる体制をつくる方法を整理します。やるべきことは、申請前と運営中の両方にあります。
欠格は「直前に発覚して詰む」のが最悪のパターンです。前もって潰しておけば、怖くありません。
申請前・運営中にやるべきこと
許可を確実に取り、取った後も維持するために、次を実行してください。
- 申請者・役員・管理者の全員について欠格事由をセルフチェックする
- 欠格者がいる場合は、役員再編・支配関係の解消を検討する
- グループ会社の許可状況・処分歴を棚卸しする
- 実質的支配者を明確にし、名義と実態を一致させる
- 判断が難しい前科・破産・心身の故障は、風営法に強い行政書士・弁護士に相談する
NightMAの経営提言:
欠格事由は、許可の入口であると同時に、出口(売却)の通行証です。欠格を抱えた会社は、許可が取れないだけでなく、いざ売ろうとしても買い手のデューデリジェンスで弾かれます。2025年改正で関門はグループ会社の奥まで広がりました。だからこそ、人と資本をクリーンに整えた会社だけが、安心して営業を続け、最後に納得のいく価格で出口を選べます。コンプライアンスは、最強の出口戦略です。
よくある質問(FAQ)
Q. 前科があると、何年で風営法の許可を取れますか?
1年以上の懲役・禁錮、または一定の罪で1年未満の懲役・罰金に処せられた場合、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過すれば、その事由による欠格は解消します。起算点は判決日ではなく執行終了等の日である点に注意してください。
Q. 罰金刑でも欠格になりますか?
一定の罪を犯して罰金刑に処せられた場合は、欠格事由に該当し得ます。どの罪が対象かは個別判断になるため、罰金歴がある場合は事前に専門家へ確認してください。
Q. 法人の役員1人が欠格でも、許可は取れませんか?
取れません。法人の役員のうちに1人でも第4条第1項の欠格事由に該当する者がいると、その法人は許可を受けられません(第4条第2項)。役員全員の属性確認が必須です。
Q. 許可を取った後に欠格事由に該当したらどうなりますか?
許可取得後に第4条各号の不許可事由に該当している事実が判明した場合、法第8条に基づく許可の取消しが検討されます。許可は取って終わりではなく、維持する義務が続きます。役員や支配関係に変化があれば、速やかに見直してください。
Q. 名義を分けて実質オーナーを隠せば、欠格を回避できますか?
できません。2025年11月28日施行の改正で、暴力的不法行為等のおそれがある者が事業活動に支配的な影響力を有する場合や、親会社等・子会社等の密接関係法人の許可取消しまで欠格事由に加わりました。名義貸しや実質オーナー隠しは、改正後はかえって危険なスキームです。
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まとめ
風営法の欠格事由は、許可を受けられない人・法人の要件で、根拠は第4条です。前科(執行終了等から5年)・破産・暴力的不法行為のおそれ・中毒・心身の故障・許可取消しから5年・未成年などがあり、1つでも該当すれば許可は下りません。
見られるのは申請者本人だけではなく、法人の役員全員と営業所の管理者まで。さらに2025年11月28日施行の改正で、密接関係法人・立入調査後の返納者・支配的影響力を持つ反社まで欠格が拡大しました。
欠格は、許可の入口であると同時に、M&Aで売れるかどうかを決める出口の関門です。人と資本をクリーンに整えることが、許可を取り、将来高く売れる会社をつくる唯一の道です。nightmaは、欠格リスクの確認から、最適な許可を持つ店の居抜き・M&A・造作譲渡まで支援します。
