- エリア
- 港区・西麻布
- 広さ
- 約40坪
- 譲渡価額
- 約2,000万円
- 相談から成約まで
- 56日
港区西麻布の40坪・2区画。内装造作をそのまま残したまま、オーナーが入れ替わりました。相談をお受けしてから決済まで56日です。ここでは、この1件で実際に何をやったかを工程ごとに書いています。
- 営業許可は引き継げない。買主が新規に取り直す
- リース3件は売主側で解約。引渡し前日に127品目を現地で確認
- 造作が売れたことで、売主は原状回復の負担を免れた
譲渡代金の内訳
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 造作・設備等 | 約1,700万円 | 税込(税抜1,576.0万円+消費税157.6万円) |
| 保証金返還請求権の譲渡 | 約200万円 | 非課税。金銭債権として引き継ぐ |
| 合計 | 約2,000万円 |
造作の代金と、貸主に預けてある保証金を引き継ぐ分は、税務上の扱いが違うため分けています。なお買主さまは、これとは別に新しい賃貸借契約の契約金(この案件では約70万円)と、当社の仲介手数料が必要になります。
金額は当事者が特定されないよう丸めた概数です。合計は千万円単位、内訳は百万円単位で四捨五入しているため、内訳の和と合計は一致しません。
相談から引渡しまで 56日
- 2026年7月30日ご相談・資料のお預かり賃貸借契約書、内装工事の請求書、店舗写真をお預かりして精査
- 8月3日査定売主さま向けと買主さま向けで、別々の資料をお出しした
- 8月24日条件合意金額と引渡し時期が決まった。ここまで25日
- 8月25日契約書の作成1日で9回読み直して条文を組み直した
- 9月4日造作什器リストの作成現物を品目ごとに洗い出した
- 9月5日譲渡代金の内訳を確定買主さまの固定資産計上のため、1品ずつ金額を割り付けた
- 9月9日現地立会い127品目を1点ずつ確認。所有区分をここで確定させた
- 9月16日契約条項の最終調整買主さま側の弁護士レビューを反映
- 9月24日決済・引渡し相談から56日
この案件でやったこと
見出しの横のしるしは、買い手/売り手のどちらに関わる話かを示しています。
許認可は引き継げない。開業が止まらないよう契約を直した
買い手
造作譲渡は事業譲渡ではないため、売主さまの飲食店営業許可を買主さまが引き継ぐことはできません。買主さまが新しく申請します。ところが保健所は、同じ場所にある既存の許可が廃止されていることを前提に運用します。この契約書は「売主は引渡し完了後に廃業届を出す」となっていたため、そのままだと買主さまの許可申請=開業が契約自身に塞がれていました。これを「決済日の後すみやかに」へ直し、買主さまの申請に支障が出る場合は時期を調整する協力義務を加えています。
売主さまにとっては、原状回復の負担が消えた
売り手
この物件の賃貸借には、前の賃借人が残した内装の原状回復まで現在の賃借人が引き受ける、という特約が付いていました。もし造作を買う方が現れなければ、造作の代金がゼロになるだけでなく、40坪をスケルトンに戻す費用(このくらいの規模だと200万円台が目安)が売主さまに残ります。造作が売れるというのは、その負担が同時に消えるということでもあります。
造作と什器を1品ずつ値付けした
双方
買主さま側の弁護士から「品目・数量・所有者・使用年数・稼働状態・各品目の譲渡価額」が入った確定版のリストを求められました。そこで全品目の再調達価額を見積り、経過年数から残存率を掛けて時価を出し、その合計に対する譲渡代金の比率(89.24%)で1品ずつ按分しています。内装造作28品目は税務上1つの資産として扱うため分割せず、器具備品だけを品目ごとに計上しました。
「立地の価値」を別建てにしなかった
買い手
この金額には、相場より有利な賃貸借をそのまま引き継げる価値も含まれています。ただ、造作・設備の時価を積み上げたら1,765.98万円となり、譲渡代金(税抜)1,576万円を上回りました。配分されずに残る金額が出ないため、借家権や権利金といった繰延資産の行は立てていません。
リース品を切り分けた
双方
当初は「リースはカラオケ1台だけ、あとは全部購入品」という話でした。それが同じ日のうちに「カラオケ・ウォーターサーバー・防犯カメラの3件がリース」に変わりました。この3件は買主さまが引き継がず、売主さま側で解約・撤去する形にして、契約書に号を分けて書き込んでいます。
引渡しの前に127品目を現地で確認した
双方
A4横18ページのチェックリストを作って、現地で1点ずつ指差し確認しました。写真や口頭のやりとりでは、どれが売主さまの持ち物でどれがリースなのかは確定しません。実際この案件では、現場で見て初めて分かったものがありました。
つまずいたところ
「内装は付いてこない」が直前に出てきた
内装工事の請求書を確認したところ、売主さまが同じ建物の他のフロアも同時期に契約していて、工事費が全フロア一括で請求されていました。この店舗の分だけを切り出せません。実額に置き換えることは諦めて、坪単価から見積った再調達価額を採用しています。こういうものは、書類を全ページ見るまで出てきません。
所有区分が同じ日に2回変わった
上のリース3件の話です。口頭の一往復では確定しないということで、以後は立会いで現物を見るまで、目録も金額も暫定として扱うようにしました。
支払いの方法が何度か変わった
買主さま側に弁護士が入り、2回にわたって条項の指摘をいただきました。仲介が代金を預かる形にするか、売主さまへ直接お渡しするか、手付と残金に分けるか。最終的には、契約締結後に全額を一度でお支払いいただく形に落ち着いています。貸主の承諾が揃う前にお金が動く設計なので、そのリスクは買主さまへ文書でお伝えしたうえでの判断です。
この事例から分かること
- 造作が売れるかどうかは、代金が入るかどうかだけの話ではない。売れなければ原状回復の費用が自分に残る。とくに前の賃借人の分まで引き受ける特約が付いている契約では、その額が大きくなる。賃貸借契約の原状回復の範囲を、売りに出す前に読んでおく。
- 内装工事の請求書は、店舗ごとに内訳を分けてもらっておく。この案件では同じ建物の他フロアと一括で発行されていたため、実際にいくらかけたのかを造作の値付けの根拠に使えなかった。
- リース契約は、書類を先に揃える。「リースはこれだけ」という記憶は当てにならない。
- 営業許可は引き継げない。造作譲渡は事業譲渡ではないので、買主が新しく申請することになる。そして保健所は同じ場所の既存の許可が廃止されていることを前提に動くため、売主がいつ廃業届を出すかで自分の開業日が決まってしまう。契約書でその時期を縛っておく。
- 「内装込み」と思っていたものが含まれないことがある。引渡し前に品目リストを作り、現物で1点ずつ確認する。
- 買い取った造作を固定資産に計上するには、品目ごとの価額が必要になる。譲渡代金が一式いくらのままだと、減価償却の計算ができない。売買契約の段階で内訳書をもらっておく。
- 保証金を引き継ぐ場合、その分は造作の代金とは税務上の扱いが違う。合算のままにせず分けてもらう。
この案件は、造作譲渡としては標準的な進み方をしたほうだと思います。それでも、書類を全ページ見ないと出てこないもの、現地で見ないと確定しないものが、これだけありました。
この案件は、売却を進めていることがスタッフ・お客様・取引先に知られないまま引渡しまで完了しています。
この事例は、当社が実際に仲介し、手数料をいただいた取引です。当事者が特定されないよう、社名・お名前・店舗名・建物名・番地は掲載しておらず、広さと金額は丸めた数値にしています。記載している経緯・日付・確認した項目は、当社の案件記録に残っている事実です。
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